#413 シーズン予定を考慮に入れたトレーニングの進め方 vs. アスリートのトレーニング歴を考慮に入れたトレーニングの進め方

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Eric rothermel FoKO4DpXamQ unsplash

 

長期(1シーズン)のトレーニング計画を立てる上で、教科書にはあまり載っていないけど、現場ではよくブチ当たる問題点について書いてみます。

 

 

シーズン予定を考慮に入れたトレーニングの進め方

われわれS&Cコーチがアスリートのトレーニング計画を立てる場合、まずは1シーズンの試合予定を調べます。

そして、試合のないオフシーズンは何ヶ月あって、試合期またはインシーズンは何ヶ月続くのか等を確認したうえで、それぞれの時期にどのようなトレーニングをしていくのかを決定していくのです。

そのような作業を「期分け」とか「ペリオダイゼーション」と呼ぶこともありますが、もっと単純に言うと「長期トレーニング計画」ということになるでしょう。

この作業の具体例としては、下記のブログ記事が参考になります。

» 参考:S&C指導者のシーズンを通した構え方、及びS&Cトレーニング導入のススメ |GS Performance

 

一般的には、オフシーズン初期に強度が低く量の多いトレーニングを実施して身体的な強さを作りつつ、この時期に健康的なエクササイズテクニックを徹底的に身に付けてもらいます。

その後、シーズンインが近づくにつれて、強度は徐々に高くなり、量は減らしていくのが一般的です。

そして、シーズンが始まったら、できるだけ疲労を残さないようにしつつも、オフシーズンに培った体力をできるだけ維持するために、一般的には高強度で量や頻度を減らしたプログラムに移行していきます。

もちろん、具体的なトレーニング内容は、シーズンの長さや試合の頻度等によって変わってきます。

 

 

アスリートのトレーニング歴を考慮に入れたトレーニングの進め方

実際にスポーツ現場でアスリートのトレーニング指導をしていると、上記のようなシーズン予定を考慮に入れたトレーニングの進め方をそのまま当てはめることができないケースに出くわします。

たとえば、すでにシーズンが始まっていて試合期の途中でご依頼を受けてトレーニング指導を開始するようなケース。

サッカーやバスケ等のチームと契約する場合はあまりないでしょうが、パーソナル指導の場合はそのようなケースは結構あるはずです。

そういう場合、すでにシーズンが始まっているので、上記で説明したようなシーズン予定を考慮に入れたトレーニングの進め方をそのまま当てはめて、高強度で量や頻度を減らしたプログラムを実施してもらい、できるだけ疲労を残さないようにしつつ、体力を維持するのがベストの選択なのでしょうか?

多くの場合、答えは「ノー」です。

 

たとえば、トレーニング初心者のアスリートだとしたら、試合期だからといって、いきなり高強度でトレーニングなんてさせられません。

ケガするリスクが高いし、そもそも真の意味での高強度なんて扱えないはずです。

そういうケースにおいては、たとえ試合期であっても、まずは正しいエクササイズテクニックを覚えてもらうことを優先し、軽い重量でトレーニングを開始してもらいます。

そして、新しい動きを覚えてもらうためには回数を繰り返すことが必要なので、試合期であっても、最初のうちは総レップ数(※)が多めのプログラムをやってもらうことになります。

※あくまでも「総」レップ数を多くするだけであって、セット数あたりのレップ数を増やすとは限りません。

 

すでに試合期に入っているので、できるだけ試合に向けて疲労を残したくない願望はありますが、そもそもフォーム習得段階で扱える重量なんてたかが知れているので、身体にかかるストレスはそれほど大きくなく、総レップ数を多くしたからといって疲労が極端に溜まるリスクは低いはずです。

また、これまで身体が慣れていないことをするので、筋肉痛が起こるリスクは高くなりますが、その可能性を認識したうえで、まともなS&Cコーチがしっかり配慮してトレーニング内容や挙上重量等を漸進させていけば、リスクは最小限に抑えることができます。 

 

場合によっては、アスリートやコーチとの話し合いの中で「試合期に入ってはいるけど、目の前の試合よりも将来を見据えてトレーニングをやることを重視したい」と言ってもらうこともあります。

そのようなケースにおいては、ある程度の疲労や筋肉痛の蓄積を覚悟したうえで、試合期であっても、そこはあまり意識せずに体力を積極的に向上させていくようなプログラムをやってもらうことになります。

 

 

まとめ

シーズン予定を考慮に入れたトレーニングの進め方は非常に大切です。

しかし、それを絶対視して、いついかなる時もそれを当てはめないといけないなんてことはありません。

たとえば、今回紹介したように、シーズン途中の段階で依頼を受けてトレーニング指導を開始するケースにおいては、アスリートのトレーニング歴を考慮に入れたトレーニングの進め方を優先したほうがベターなこともあります。

両方のトレーニングの進め方を自分の中で持っておいたうえで、どちらを優先すべきかを目の前のアスリートに合わせて適切に選択するのが重要です。

 

そして、たとえば、まずはアスリートのトレーニング歴を考慮に入れた進め方を優先してトレーニングを開始したとしても、どこかの段階でシーズン予定を考慮に入れたトレーニングの進め方に移行できるのであれば、そちらに移行したほうがいいでしょう。

そちらに移行できるようになった後も、シーズン予定を無視してトレーニングを進めるのはベストだとは思えません。

どの段階で移行するのか、そのタイミングを見極めるのが、S&Cコーチとしての腕の見せどころだと言えるでしょう。

 

 

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【編集後記】

だいぶ蒸し暑い季節になってきましたね。

リュックタイプのバッグを背負っていると、背中とショルダーベルト(?)の部分だけがキレイに汗で濡れます・・・。

リュックタイプは夏向きではありませんね・・・。