#470 コーチングキューの種類:internal cue vs. external cue

 

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トレーニングで色々な動きを教える際に使う合図や声がけのことを英語で「cue」とか「coaching cue」と言います。私は日本語では「(コーチング)キュー」と呼んでいます。

本ブログでも、さまざまなコーチングキューについて記事を書いてきました。興味のある方は、サイト内検索で「キュー」と入力して検索してみてください。

 

 

internal cue vs. external cue

ここ5年くらいで、コーチングキューというトピックに関連して、英語圏のS&C業界で話題になっているのは、「internal cueとexternal cueのどちらのほうが良いのか?」という議論です。

  • internal cue:アスリートの意識を自身の身体の動きに向けるようなキューのこと。たとえば、「膝をしっかり伸ばせ!」「ケツに力を入れろ!」等。
  • external cue:アスリートの意識を外部の物体や動きの結果に向けるようなキューのこと。たとえば、「(立ち幅跳びで)できるだけ遠くに跳べ!」「(垂直跳びで)天井にタッチするくらいの気持ちでジャンプしろ!」等。

この議論がネット上で話題になり始めた頃は、「internal cueよりもexternal cueのほうが優れているから、そちらを使うべき」といった論調が多数派でした。

というのも、internal cueとexternal cueを与えた場合のパフォーマンス結果(パワー発揮、ジャンプ高、立ち幅跳び距離、etc)を比較すると、external cueのほうが効果的だったと報告する研究が多く発表されていたからです [1-5]。

そうした研究結果を受けて、一時期は「internal cueを使うなんてナンセンスだぜ」「今、時代はexternal cueだぜ」みたいな風潮があったように感じます(私が勝手に感じていただけですけど)。

 

しかし、ここ1-2年においては、少し議論が一段落して、「internal cueだってそれなりの役割があるんだから、目的に応じて上手に使い分ければイイんじゃない?」というバランスの取れた論調が増えてきたように思います。

実際に、internal cueを使うと、特定の筋群の筋活動レベル(EMG)が高くなる効果があると報告している研究もあります [6]。これは、たとえばウエイトトレーニングで単純により重い重量を持ち挙げることを狙うのではなくて、特定の筋群に刺激を入れて肥大させたい場合には、internal cueのほうが有効である可能性を示しています。

 

私もそのようなバランスの取れた意見に賛成で、どちらが絶対的に良い・悪いという極端な考えは捨てるべきだと思います。

そうではなくて、

  • コーチングキューにはinternal cueとexternal cueという異なるタイプがあることを認識する
  • それぞれの特徴を理解する(例:パフォーマンス向上にはexternal cue、特定の筋群に刺激を入れるにはinternal cue)
  • 目的・状況・アスリートに応じて使い分ける

というのが重要になってきます。

 

 

まとめ

一般的には、その場でのパフォーマンスを向上させたい場合(より高くジャンプしたい、より大きなパワーを発揮したい、より重い重量を持ち挙げたい)にはexternal cueが有効で、ボディビルダーのように特定の筋群に刺激を入れたい場合にはinternal cueが有効だと考えられます。したがって、目的によってコーチングキューの種類を使い分けるのがよろしいかと思います。

しかし、external cueを与えてもなかなかパフォーマンスが向上しない場合は、internal cueを与えたってOKです。そのほうがパフォーマンスがUPすることだってあるでしょう。internal cueとexternal cueでは、それぞれ得意なことはありますが、それは絶対的なルールではないので、うまくいかない場合は、色々と試行錯誤したって問題ありません。

とりあえず、今、自分がアスリートに与えているのがinternal cueなのかexternal cueなのかを把握しておいて、それがうまくいかない場合は、もう一方のタイプのコーチングキューを使ってみる、くらいの気持ちで取り組んでみるのが丁度よいのではないでしょうか。

 

 

参考文献

[1] Porter JM, Nolan RP, Ostrowski EJ, and Wulf G. Directing attention externally enhances agility performance: A qualitative and quantitative analysis of the efficacy of using verbal instructions to focus attention. Front Psychol 1: 1–7, 2010. 

[2] Wulf G, Zachry T, Granados C, and Dufek J. Increases in jump-and-reach height through an external focus of attention. Int J Sports Sci Coaching 2: 275–284, 2007.

[3] Wulf G and Dufek JS. Increased jump height with an external focus due to enhanced lower extremity joint kinetics. J Mot Behav 41: 401–409, 2009.

[4] Wu WF, Porter JM, and Brown LE. Effect of attentional focus strategies on peak force and performance in the standing long jump. J Strength Cond Res 26: 1226–1231, 2012.

[5] Porter JM, Ostrowski EJ, Nolan RP, and Wu WF. Standing long-jump performance is enhanced when using an external focus of attention. J Strength Cond Res 24: 1746–1750, 2010.

[6] Snyder BJ, Leech JR. Voluntary increase in latissimus dorsi muscle activity during the lat pull-down following expert instruction. J Strength Cond Res 23: 2204-2209, 2009.

 

参考記事

Coaching Cues by Science for Sport

 

 

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【編集後記】

母親の携帯を新調したのですが、ガラケーなのに電源入れると「Androidを起動しています」と表示されます。最近はガラケーもAndroidで動いているのか・・・。