#502 「エビデンスに基づくトレーニング指導」っていうのは難しいことではなく、当たり前のことです

 

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「エビデンスに基づくトレーニング指導」とは?

S&C業界では、ここ10年ほどの間に、「エビデンスに基づくトレーニング指導」という言葉を耳にするようになりました。

「エビデンス(evidence)」の意味を英和辞典で調べてみると、証拠とか物証とか証言とかが出てくるのですが、ここで言うところの「エビデンス」の日本語訳としては「根拠」という言葉がしっくり来る気がします。

つまり、「エビデンスにもとづくトレーニング指導」というのは、トレーニング指導者の感覚だけに頼らず、「根拠」を持ってトレーニング指導をしましょうというコンセプトのことです。

 

「エビデンス」と聞くと「科学的知見(研究結果、またはそれが書かれている学術論文)」のことかと思われる方も多いかもしれませんが、両者はイコールではありません。

一般論として、「エビデンスに基づくトレーニング指導」におけるエビデンスには三本柱があると言われています:

  • 科学的知見
  • S&Cコーチの経験・知識・スキル
  • アスリートのニーズや好み

つまり、「科学的知見」は「エビデンス」の1つの要因にすぎないのです。

 

 

「エビデンスに基づくトレーニング指導」は必要?

よく「エビデンスに基づくトレーニング指導」というコンセプトを巡って議論になる時に、「研究よりも現場のほうが何年も進んでいる、研究は現場ですでに実践されていることの後追いにすぎない」「研究結果なんて実際のアスリートのトレーニングに当てはまらない」というアンチ・エビデンス派と、「経験や感覚だけに頼っているのは無責任だ、科学的知見を根拠にしないどダメだ」という親・エビデンス派に分かれる傾向があります。

しかし、そんな議論はナンセンスです。なぜなら、そのような議論は「エビデンス=科学的知見」という誤解に基づいているからです。

そもそも、「エビデンス」と言った場合には、経験も科学的知見もどっちも含まれているんだから、どちらのほうが重要かという議論自体、無意味なのです。両方とも重要なのですから。

 

なにも難しく考える必要は全然ないのです。

目の前のアスリートに対してベストのサービスを提供し、そのアスリートのポテンシャルを最大限に高める手伝いをしたいと真剣に考え、責任感を持っているS&Cコーチであれば、トレーニング指導をするうえで役に立つすべての情報を集めた上で、ベストの選択をしたいと考えるはずです。

その「情報」こそが「エビデンス」です。

だから、経験も重要ですし、科学的知見も重要ですし、アスリートのニーズや好みを考慮することも重要です。全部、重要なんです。

そう考えると、エビデンスに基づいてトレーニング指導をすることは当たり前のことだということがわかりはずです。それが必要かどうかなんて議論の余地すらありません。

もし、「エビデンスに基づいたトレーニング指導なんて必要ない」なんて言ってる人がいたら、なんて無責任な人なんだろうと私は思います。だって「私は目の前のアスリートにベストのサービスを提供するために、あらゆる情報を集める努力をやる気はありません」って言っているようなものですから。

 

 

「経験」にも根拠は必要

エビデンスに基づくトレーニングには「経験」も含まれているとお話しましたが、その「経験」にもある程度の根拠は必要です。「私は今までこのやり方でやってきたから」というだけでは不十分です。

「なぜ、そのやり方でやってきたのか」という点を、ある程度論理的に説明できるだけの「理屈」が伴わない経験はエビデンスにはなりえません。

だって、たとえば間違ったやり方を10年間積み重ねてきたとしても、そんな経験は何の役にも立たないはずですから。

ただし、ここで言う「理屈」は必ずしも科学的知見に裏付けられている必要はありません。すべてのことが科学的に解明されているわけではないからです。

それでも、「これこれこういう理由で、このトレーニングをすると効果があるはずだ」という筋の通った説明ができないようであれば、そんなやり方を継続して得た経験は「エビデンス」と呼べる代物ではありません。

実際にいるんですから。間違ったやり方を何の根拠もないままず~っとやり続けている人が。

 

 

まとめ

目の前のアスリートにベストのトレーニング指導を提供するために、手に入りうるすべての情報を集めて最善の選択をするよう努力すること。それが、「エビデンスに基づくトレーニング指導」です。

なにも特別なことではありません。指導するアスリートに対して責任感を持って仕事をしているS&Cコーチであれば、すでに実践していることのはずです。

自分でトレーニングをして経験するのも大切だし、学術論文を読んで科学的知見を手に入れるのも大切です。どれかひとつだけでいいなんて言っている人は信用できません。逃げずにすべてに取り組むことが、アスリートへの愛だと思います。

 

 

参考文献

 

 

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【編集後記】 

平昌五輪始まりましたね。それにしてもオランダのスピードスケート強いな。バンクーバー五輪の時に、現地でハイネケンハウス行ったのが懐かしい・・・。