#623 【論文レビュー】息が上がるような激しい運動後は、手を膝についたほうが、頭に乗せるよりも、回復を促進させるかもしれない!?

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先日、ツイッターで興味深い研究を紹介しました。

 

私が中学・高校で部活動をしていた頃は、練習や試合でプレーが一時的にストップしたときに、手を膝についてゼハーゼハーと息を整えていたら、「コラー、下向いて休むな!」なんて顧問の先生に怒られたものです。

おそらく、「自分が疲れている様子を相手に悟られるな!」「相手に弱みを見せるのはマイナスだ!」という考えが背景にはあったのでしょう。

しかし、上記の研究は、手を膝についたほうが回復を促進させるかもしれないことを示唆しており、「下を向いて休むな!」と怒る文化を変える可能性があります。

今回は、その研究の内容を少し詳しく紹介します。

 

 

論文の内容

Michaelson et al. (2019)  Effects of Two Different Recovery Postures during High-Intensity Interval Training. Translational Journal of the American College of Sports Medicine. 4(4): 23-27.

※PDFファイルが無料でダウンロードできます。

 

研究プロトコル

大学生の女子サッカー選手に、4×4分@90%–95% HRmaxの高強度インターバル走を、3分間の休息をはさんで実施してもらった。

被験者には2回、間に1週間をあけて、上記の高強度インターバル走を実施してもらい、休息時に2つの異なる姿勢をとってもらった:

  • 両手を膝について、背中を丸めた姿勢(HK; hands on knees)
  • 両手を頭の後ろにおいた直立の姿勢(HH; hands on head)

 

3分間の休息中に心拍数や呼気ガスを測定し、そこから以下の3つの指標を求めて、2つの姿勢で回復度を比較した:

  • HRR(Heart Rate Recovery):4分のランニング終了直後と1分後の心拍数の差
  • VCO2:二酸化炭素排出量
  • VT:一回換気量

 

結果

主な結果をまとめると以下の通りです:

  • HRRはHKのほうがHHより有意に大きかった(53 ± 10.9 vs 31 ± 11.3 bpm)
  • VCO2はHKのほうがHHより有意に大きかった(1.1 ± 0.2 vs 1.0 ± 0.2 L/min)
  • VTはHKのほうがHHより有意に大きかった(1.4 ± 0.2 vs 1.3 ± 0.2 L/min)

 

考察

この研究で調べた3つの指標のすべてにおいて、両手を膝についた姿勢(HK)のほうが両手を頭の後ろにおいた姿勢(HH)を上回った、という結果です。

著者らは、両手を膝についた姿勢が、呼吸のしやすさに繋がったり、副交感神経の再活性化に繋がったりするのではないかと推測しています。

そして、激しい運動を繰り返すときには、休息時に膝を手についた姿勢をとったほうが、疲労からの回復を促進し、パフォーマンス向上に繋がるのではないかと主張しています。

 

個人的には、目のつけどころが面白い研究だと思います。

こういうの嫌いじゃないです。

 

しかし、この研究では、あくまでも休息時の「生理学的な指標」を測定して比較しているだけであり、実際の「パフォーマンス」の指標を測定しているわけではありません。

たとえば、「ダッシュを繰り返すときに、休息中に膝を手においたほうが、ダッシュのスピードが落ちずに維持しやすい」みたいに直接的に調べたわけではないということです。

したがって、この研究結果だけでは、休息中に手を膝についた姿勢をとったほうが、間欠的な運動のパフォーマンスが向上するとは言い切れないのがLimitationではあります。

 

 

まとめ

球技スポーツ・ラケットスポーツ・対戦型スポーツ等、プレーが一時的に止まることがあるような間欠的な運動においては、休憩中に手を膝においたほうが、回復が促進されるかもしれません。

もし、「下を向いて休むな!」と怒られたら、「この姿勢のほうが呼吸がしやすく、回復も促進される可能性が高いので」と反論することができるかもしれません。

しかし、絶対にこの姿勢のほうがいい!と言い切るには、まだまだ手に入る科学的データの量が足りないのが実際のところです。

将来的には、生理学的な指標だけでなく、パフォーマンスの指標についても調べるような研究がされることを期待したいです。

 

 

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【編集後記】

娘の沐浴はだいぶ腰にきます。

そして、沐浴のあとに筋トレをすると、腰がヤバイことになります。。。