#203 ベーシックエクササイズだけやってればいいのか?競技特異的なエクササイズをやらないでいいのか?

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月間トレーニング・ジャーナルの連載で、競技特異的なトレーニングについて記事を書きました(コチラ)。

これまでもこのブログで同様のトピックについて私の意見を書いてきましたが、それらをまとめた集大成のような記事になっているので、是非読んでみてください。

 

 

競技特異的なトレーニングを主張する人の論理を検証

その記事にも書いた私の基本的な考え方は「競技特異的なトレーニングは必要ない」というものです。

ほんの一部の例外を除いては。

おそらく、競技特異的なトレーニングを主張している人の論理は:

  • ①スクワットやデッドリフトのようなベーシックなエクササイズだけやっていて競技力が向上するわけない
  • ②じゃあ、何かプラスアルファのことをしなくちゃ
  • ③そのプラスアルファとは競技特異的なエクササイズのことであり、向上した筋力やパワーを実際の競技の動きに結びつけることができるはずだ!

というものだと想像できます。

中には、ベーシックなエクササイズを教えたりプログラミングしたりする能力・自信がないからそもそもやらずに、競技特異的エクササイズやファンクショナルとかいうエクササイズだけやって誤魔化している、という人もいるかもしれません。

そんな人は無視して議論を進めます。

とりあえず、競技特異的なトレーニングを主張している人の論理について、1つ1つ検証していきます。

 

主張①:スクワットやデッドリフトのようなベーシックなエクササイズだけやっていて競技力が向上するわけない

私はこの主張には100%同意します。

ベーシックなエクササイズは重要視していますが、それで筋力や爆発的パワーを向上させれば競技力向上に直結するとは考えていません。

過去のブログでも書きましたが、「筋力や爆発的パワーの向上というトレーニング効果を競技動作に転化させる(= Transfer of Training Effect)」という作業があって、初めて競技力向上が実現すると考えています。

» 参考:【論文レビュー】トレーニングによる筋力UPは、やり方によっては競技力UPにも競技力DOWNにもつながりますよって事をコンピューターシミュレーション研究の結果をもとに考えてみる

» 参考:そもそもトレーニングは必要?バージョン2.0

 

 

主張②:じゃあ、何かプラスアルファのことをしなくちゃ

この主張には同意する部分とビミョーだな〜と思う部分があります。

まず、ベーシックなエクササイズだけやっていれば良いとは思わないので、Transfer of Training Effectを促進させる「何か」をやる必要があるのは確かです。

その「何か」はベーシックなエクササイズとは別物なので、そういう意味でプラスアルファだと言えばプラスアルファです。

しかし、だからといって「特別なもの」という意味でのプラスアルファかと言えばちょっと違うような気がします(わかりづらくてすみませんが、もう少し読み進めるとわかると思います)。

 

 

主張③: そのプラスアルファとは競技特異的なエクササイズのことであり、向上した筋力やパワーを実際の競技の動きに結びつけることができるはずだ!

この主張には賛成できません。

理由はいくつかあり、月間トレーニング・ジャーナルの記事で書いた通りです。

よく耳にする「実際の競技の動きに似たエクササイズ(=競技特異的エクササイズ)をやれば競技力向上に直結するはず」というロジックは、そもそもロジックと呼べるシロモノではありません。

「ジェット戦闘機が高速で飛べる理由は、速く飛べそうな形をしているからだ!」と言っているようなもんです。考え方が浅すぎます。

それに、競技特異的エクササイズの有効性を示した科学的データもほとんど存在しません。

 

そもそも、論理的に考えても、科学的な根拠を探しても、効果があると自信を持って言えない競技特異的エクササイズをアスリートにやらせるなんて無責任です。

そんなのやる必要はないと思います。

それに、競技特異的エクササイズには、繊細な競技スキルに悪影響を及ぼしたり、痛みやケガにつながったりするリスクだってあるんです。

競技にプラスの影響を与えるかどうか不明で、逆にマイナスの影響を与えるリスクがあるトレーニングを処方するなんて、私には理解できません。

 

 

Transfer of Training Effectを促進させるには?

じゃあ、Transfer of Training Effectを促進させる「プラスアルファ」って何なのよ?という話になりますが、私は「競技練習をたくさんやること」だと信じています。

まあ、競技練習なんてもともとアスリートがやっていることなので、それを「プラスアルファ」と呼んでいいのかわかりませんが・・・。

 

そして、その競技練習はS&Cコーチの担当領域ではありません。

アスリートと競技コーチの領域です。

なので、基本的にそこにはS&Cコーチとして口を出しません。

言うとしたら「たくさん練習してください」ということくらいです。

たまに、競技練習やスキルの部分に口を出しているS&Cコーチがいますが、「いったい何様なんだろうな〜」と思ってしまいます。

» 参考:S&Cコーチとスキル練習

 

 

アスリートから特異的トレーニングをリクエストされたら?

アスリートやコーチの中には、ベーシックなエクササイズだけで競技力が向上するわけないと考えて、「競技特異的なエクササイズもやってください!」とお願いしてくる方もたくさんいます。

場合によっては、「ベーシックエクササイズはいらないから、競技特異的なエクササイズだけ教えて下さい!」とお願いされることもあります。

 

そう言われてしまうと、「アスリートやコーチのリクエストに答えないと申し訳ない」という気持ちや「S&Cコーチとして、ベーシックなエクササイズを処方しているだけで良いのか?」という不安から、競技力向上に結びつくかどうかもわからない(マイナスになるリスクさえある)競技特異的なエクササイズを処方してしまっているS&Cコーチも多いのではないのでしょうか?

ま〜、リクエストに応えているわけですから、罪悪感は薄いのかもしれませんが、私から言わせればそんなの無責任です。

不必要かつマイナスの影響のリスクのあるトレーニングを、アスリートの貴重な時間を使って実施するわけですから。

その時間を練習に使うこともできるはずなのに・・・。

» 参考:ニーズを無視する?

 

S&Cコーチの役割は、アスリートやコーチのYESマンになって、要望されたことをそのまま実行することではないはずです。

時には、リクエストに対して「できません」とハッキリと伝えて、その理由を説明することも必要です。

» 参考:コーチやアスリートの本当の要望を聞き出すカウンセリング能力

 

じゃあ、 「競技特異的なエクササイズをやってください!」と要望されたらなんて答えたら良いのでしょうか?

私なら

競技特異的なエクササイズが競技力向上に結びつくという科学的根拠はありません。逆に、競技動作に似たエクササイズを外的な負荷をかけた状態で実施すると、痛みやケガに繋がるリスクがあります。また、繊細な競技スキルに悪影響を及ぼして、パフォーマンス低下につながる恐れもあります。だから、競技特異的なエクササイズをやる必要はありません。S&Cトレーニングに関しては、ベーシックなエクササイズを実施して筋力やパワーを向上させれば十分です。そこの部分は私が責任をもって効果的かつ効率的に実施します。そのぶん余った時間はどうぞ競技練習に使って下さい。競技練習をたくさんやることによって、向上した筋力や爆発的パワーを競技動作の中で使えるようになって、それが結果としてパフォーマンスアップに繋がります。

と自信を持って伝えます。

同じシチュエーションを経験したら、この文言をコピーして使ってもらって結構です。

ここまで説明しても「そんなの自信を持って言えないよ〜」という方は、ベーシックなエクササイズを教えて効果的かつ効率的に筋力・爆発的パワーを向上させる能力を磨いてください。

そして、競技特異的トレーニングは必要ないと自信を持って言えるだけの知識を蓄えてください。

 

 

まとめ

箇条書きでまとめます。

  • ベーシックエクササイズだけやっていればいいのか?
  • それだけじゃダメ
  • 練習をガシガシやるべき
  • ただしS&Cコーチの領域としては、それだけでOK
  • 競技特異的トレーニングやっても効果ないし、悪影響のリスクもあるから、時間の無駄
  • トレーニングはシンプルに効率良く短時間で終わらせて、練習に割ける時間を確保してあげるのもS&Cコーチの仕事
  • 不必要に競技特異的トレーニングをやっちゃうS&Cコーチはベーシックなエクササイズだけで大丈夫という自信がないだけ
  • 不安だからとりあえず色々なエクササイズを取り入れている
  • そんなの自分自身の地位やプライドを守っているだけで、アスリートからしたらいい迷惑
  • やめましょう
以上です。

 

 

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【編集後記】

残念ながらサッカーW杯で日本代表はグループリーグ敗退してしまいましたね。

大会が始まる前に、代表チームのコンディショニング方法について意見を書きました(コチラコチラ)。

終わった今、改めていろいろ書きたいこともありますが、「そんなの結果論だろ〜」と言われそうなので、どうしようか迷っているところです。

もう少し時間がたって落ち着いてから書くかもしれません。