#591 Charles Poliquin氏を偲んで:Undulating Periodization(波状ペリオダイゼーション、期分けの一種)を世に広めた功績を振り返る

 

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Charles Poliquin氏の突然の死

著名なカナダ人S&CコーチのCharles Poliquin氏が亡くなったとのニュースを先日ツイッターで目にしました。

私は直接お会いしたことはありませんでしたが、雑誌記事、ネット記事、YouTubeビデオ等でいろいろと学ばせていただいていました。

特に、Poliquin氏のオフィシャルサイトの「Strength Sensei」からは色々な情報をインプットしていました。

Poliquin氏の影響力はおそらく世界中のS&Cコーチの間に広がっていたものと思います。

日本人に馴染みのあるところで言うと、リオ五輪で女子レスリングの吉田沙保里選手を決勝で破ったヘレン・マルーリス選手のトレーニング指導をされていたことでも有名な方でした。

享年57歳とのことで、まだお若いのに残念です。

 

今回は、Charles Poliquin氏を偲んで、氏から私が最も影響を受けた「Undulating Periodization(波状ペリオダイゼーション)」というコンセプトについて紹介します。

 

 

Undulating Periodization(波状ペリオダイゼーション)とは?

Charles Poliquin氏は世界中で有名なS&Cコーチでしたが、私がはじめてその存在を認識したのは、以下の記事をNSCAのジャーナルで読んだ時でした。

Poliquin (1988) FOOTBALL: Five steps to increasing the effectiveness of your strength training program. NSCA J. 10(3):34-39. ※無料でPDFファイルがダウンロードできるはずです

この記事は30年も前のものですが、今読んでも新鮮に思えるような面白いアイデアがいくつも詰まっています。

 

その中でも、私が特に印象に残っているのが「Undulating Periodization(波状ペリオダイゼーション)」というコンセプトについての記述です。

ペリオダイゼーションのやり方について語る時によく目にする「Linear Periodization vs. Undulating Periodization」みたいな議論は、私がアメリカに留学していた頃(2002~2004)に出てきたものです(少なくとも私の認識では)。

そして、そもそもUndulating Periodizationというコンセプトがどこから出てきたのかを探っていくと、上記のPoliquin氏の記事にたどり着きます。

 

一般的に「ペリオダイゼーション」というと

  • 筋肥大期(10レップ)
  • 基礎筋力期(5レップ)
  • 最大筋力・パワー期(3レップ)
  • ピーキング期(1-3レップ)

という形で、強度や量を一定期間ごと(4週間前後が一般的)に変化させていくのが教科書的なやり方でした。

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こういうやり方を一部の人たちが「Linear Periodization」と呼んでいます。

MEMO
私のアメリカ留学時代の師匠のDr. Greg Haffのそのまた師匠であるDr. Mike Stoneは、上記のようないわゆる教科書的なペリオダイゼーションを研究し、西側諸国に広めた方ですが、Dr. Stoneに言わせると「Linear Periodization」という呼び名は不適切であるとのことです。

 

大きな視野で捉えると、直線的に強度が増えて直線的に量が減っているように見えるかもしれませんが、実際は1週間の中でもHeavy DayとLight Dayをもうけて変化をもたせたり、各期の切り替えの時期の1週間はDeload Weekのような形で量や強度を減らしたりしているので、「Linear(直線、線形)」という呼び方は適切ではないとのこと。

 

そこで、上記のタイプのペリオダイゼーションを私は個人的に「Traditional Periodization(伝統的なペリオダイゼーション)」と呼んでいます。

 

上記の記事で、Poliquin氏は「Traditional Periodization(伝統的なペリオダイゼーション)」的なやり方の問題点をいくつか指摘しています:

  • トレーニング強度・量のバリエーションが十分ではないため、身体が刺激に慣れてしまい、適応を引き出すのが難しい
  • 強度がドンドン増えていくので、そのストレスから回復するのが難しい
  • トレーニング量は筋肥大のために必要だが、筋肥大期が終わってからはトレーニング量が減っていくため、最初の筋肥大期で獲得した筋量をその後の期間に維持するのが困難になる

そこで、代わりの方法としてPoliquin氏が提唱したのが「Undulating Periodization」と呼ばれるタイプのペリオダイゼーションです。

具体的なやり方としては、以下の表を見ていただくとわかりやすいはずです。

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この「Undulating Periodization」の大きな特徴は:

  • 量の多い時期(Accumulation期、表2で黄色で囲まれた部分)と強度の高い時期(Intensification期)を交互に入れている
  • Accumulation期とIntensification期の入れ替わりが早い(各期が2週間しか続かない)
  • Accumulation期とIntensification期を(波状に)交互に入れながら、全体的には徐々に強度を増やして量を減らす方向に進んでいる

といったところにあります。

 

 

Traditional Periodization vs. Undulating Periodization

多くのアスリートやS&Cコーチが知りたいのは、どちらのペリオダイゼーションのほうが効果が高いのかということでしょう。

実際に、2つのタイプのペリオダイゼーションの効果を調べる研究も(数は少ないですが)これまで実施されてきました。

結論として、現時点で手に入る科学的知見や私の指導経験をもとに言うと、「絶対的にどちらのほうが効果が高いとは言えない」というのが正直なところです。

明確にどちらのほうが優れていると示した証拠は今のところないと言っていいでしょう。

 

実際のところ、どちらのタイプのペリオダイゼーションも

  • 強度や量といったトレーニング負荷にバリエーションをつける
  • 徐々に強度を増やして量を減らしていく

といった「ペリオダイゼーションの原則」みたいな部分については共通しています。

したがって、どちらがより効果的かと考えるよりも、ペリオダイゼーションにはさまざまなやり方があって、その中の1つのタイプとして知っておく、自分の道具箱に入れておく、といった捉え方のほうが適切です。

理想的には、さまざまなペリオダイゼーションのやり方を知っておいたうえで

  • アスリートのトレーニング歴
  • 競技スケジュール
  • アスリートの好み

等によって、うまく使い分けることができるとベストでしょう。

 

 

まとめ

Charles Poliquin氏は「Undulating Periodization」というコンセプトを世に広めた以外にも、さまざまなトピックで世界中のS&Cコーチに影響を与えてきました。

氏も含めた先人たちの知恵に学び、さらに積み上げていくことが、アスリートにより良いサービスを提供することに繋がります。

先人たちへの感謝の気持ちを忘れずに、本や記事、論文、ブログ等のあらゆるメディアから情報をインプットし続けて、より良いアウトプットに繋げていきたいと思います。

 

 

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【編集後記】

風疹の免疫がない39~56歳の男性を対象に、予防接種が3年間無料になるというニュースを観ました。私は妻が妊娠した時に1回予防接種は済ましているのですが、もう1回必要かどうか、まずは抗体検査を受けようと思います。同年代の男性はこの機会にぜひ予防接種を受けてみてください。