#86 『特異的になりすぎない』:持久系アスリートに対してレジスタンストレーニングを処方したり指導したりする時のフィロソフィー①

 

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先日「持久系アスリートに対するレジスタンストレーニング」というテーマでセミナー講師を務めました。その時のスライドは公開しています。


90分のセミナーでしたが、内容を大まかに3つに分けて三部作という形でお話をしました。その第二部では「フィロソフィー」と題して、私が持久系アスリートに対してレジスタンストレーニングを処方・指導する時に考えている事を8個に絞って紹介しました。これらのフィロソフィーについて、今後何回かに分けてこのブログで紹介して行こうと思います。

セミナーにご参加頂いた方にとっては復習のような形になるかと思います。セミナーにご参加頂いていないけどプレゼンのスライドをご覧頂いた方にとっては「このスライドを使ってそんな話をしていたんだ〜」という感じのお話になるかと思います。

*ちなみに、slideshareにアップしたスライドをご覧頂く時に気をつけて頂きたい事があります。このスライドは、そもそも話す内容を全て詰め込んで作ったものではありません。あくまでもセミナー当日にお話をするための補助ツールとして作ったものです。スライドを見ただけで、当日話した内容をすべて正しく理解する事は不可能ですし、そうする事によって内容を誤解される可能性があるのでご注意下さい。

 

 

第1条「特異的になりすぎない」

これはトレーニングプログラムを作成する時のあらゆる面に当てはまる事ですが、主にエクササイズ選択についてのお話になります。

最近は「競技特異的エクササイズ」と称して、実際の競技中の動きに似たエクササイズや競技中の動きそのものに外的な負荷をかけたエクササイズが一部で人気があるように思います。この「競技特異的エクササイズ」は競技中のどの動きをトレーニングしようと意図しているのかが比較的わかりやすいため、アスリートやコーチからの受けは良いです。また、一見するとトレーニング効果が実際のパフォーマンスに直結するように見えたり、いわゆる「使える筋肉」を鍛える事ができそうな気がします。

しかし、実際のところは、競技の動作そのものに外的な負荷をかけてしまうと、力のベクトルや筋発火のタイミング、各筋群・各関節の全体の動きへの貢献度の割合等の要因が変わってしまうので、結果として非特異的な動作になってしまいます。見た目や動作の形が似ていても本質的なメカニズムが異なる場合、実際の競技中の動作と微妙に似ているがために逆に間違った身体の使い方を習得させることにもなりかねません。実際に、トレーニング中のエクササイズを競技中の動作に似せようとした結果、変な癖がついてしまってパフォーマンスに悪影響を及ぼしてしまったという例をいくつも見たり聞いたりした事があります。

「競技特異的エクササイズ」提唱者の中にはこのようなリスクを認識していて、「競技特異的エクササイズ」においては用いる負荷が大きすぎるとテクニックが崩れてトレーニング効果に悪影響を及ぼすので、できるけテクニックが崩れない程度の軽負荷を使用するようにと主張している場合もあります。

しかし、それだとトレーニングにおいて最も重要な漸進性過負荷の原則を適用できず、いつまでたっても筋力や筋パワーを向上させる事ができません。それに、実際の動作とあまり変わらないほどの軽負荷を使うくらいだったら、負荷なしで競技の練習そのものをガシガシやれば良いじゃないかというのが私の考え方です。わざわざ軽い負荷をかける意味が理解できません。

 

 

基礎的なエクササイズを重視する

そういった考えから、私は基礎的なエクササイズを重視してトレーニングプログラムを処方するようにしています。例えばスクワット・デッドリフト・RDL・懸垂・プレス・腕立て伏せ・ステップアップ・スプリットスクワット・リバースランジ・インバーテッドロウ等が挙げられます。

これらの基礎的エクササイズをガシガシやってコツコツと基礎的な筋力をバランス良く向上させて、その上で競技の練習もガシガシやってトレーニング効果の転移を図る。これが私のアプローチです。

そもそも持久系アスリートはレジスタンストレーニングに関しては初級者レベルの人が大多数なので、こういった基礎的なエクササイズをしっかりと実施すれば、これ以上の上級レベルのエクササイズを取り入れる必要もあまりないのではないかと考えています。

また、関節可動域に関しても、競技中に使われる関節可動域の範囲とは関係なく、できるだけ大きな可動域を用いてトレーニングするようにしています。例えば、競技中は膝関節は90°以上曲がらないから、トレーニングでもクウォータースクワットを取り入れたほうが特異的だという考え方は一切ありません。正しいフォームをキープできる範囲内で(腰をまっすぐキープできる範囲内で)できるだけ深くスクワットを実施させます。この詳しい話は第7条でまたお話します。

さらに言うと、1セットあたりのレップ数についても、持久系アスリートだからといって50レップとか100レップとかをやらせる事はありません。そんなのクレイジーですし、特異的でもなんでもありません。

あくまでも、引き出したい生理学的適応(筋力アップとか)を最初に決定した上で、それを達成するのに必要なレップ数を処方するというアプローチが正しいはずです。競技中の運動時間がどうだとかは一切関係ありません。この詳しい話も第6条でまたお話します。

また、以下のブログでまさにこの辺りのお話がされているので興味のある方は読んでみて下さい。

ウエイトと持久力

 

 

まとめ

結局、何が言いたいのかをまとめると「トレーニングはトレーニング、練習は練習」という事です。アスリートが競技の練習に加えてトレーニングを実施する理由は、練習では達成できない目的(例:筋力アップ)を達成するためであって、練習でやっている事と同じ事を繰り返すためではありません。トレーニングにおいては、基礎的なエクササイズを用いて体力アップを図る。これにつきます。

第1条の話が結構長くなってしまったので、残りの話は次回以降にまわしたいと思います。

 

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1 個のコメント

  • […] 持久系アスリートがストレングストレーニングを導入しているケースはまだまだ少ないと思われますが、私は個人的に強くオススメします。昨年は、「持久系アスリートに対するレジスタンストレーニング」と題して、セミナーでお話もさせて頂きました。その時に使ったプレゼンスライドはコチラからご覧いただけます。また、その時のプレゼンの内容の一部については、このブログでも説明済みです(1、2、3、4、5、6、7、8)。特に、まだあまり他のアスリートがストレングストレーニングをやっていない今のうちに取り入れておけば、差をつける事ができるはずです。 […]