ISAK認定身体計測講習会とは
先週末、金曜から日曜にかけて、表題のコースを受講してきました。
ISAKは「国際キンアンソロポメトリー推進学会(International Society for the Advancement of Kinanthropometry)」の略です。今回私が受けたのは、ISAKが標準化した身体計測(身体の各部位の計測、皮下脂肪厚や周径囲など)を行う技術を身につけるためのコースです。
ISAKの認定はレベル1からレベル4までが存在し、今回はいわゆる初心者コースであるレベル1を受講しました。座学と実技に分かれていて、3日間朝から夕方までみっちりと勉強します。
レベル1コースの実技で身に付ける計測技術は:
- 皮脂厚:Triceps、Subscapular、Biceps、Iliac Crest、Supraspinale、Abdominal、Front Thigh、Medial Calf
- 周径囲:Arm (relaxed)、Arm (flexed & tensed)、Waist、Gluteal、Calf
- 骨巾:Humerus、Femur
- 身長、体重
といった項目です。
ISAKが国際基準の資格という事もあり、これらの項目は英語またはラテン語で憶えないといけません。そして、最終日に実技の試験があって、それをパスしないといけません。
さらに、コース受講終了後に宿題が出されて、20人を計測してそのデータを提出する必要があります。20人を計測する時は2回計測をして、その2回の計測値間の誤差がISAKによって決められた値よりも小さくならないといけないという条件もあります。
さらに、この資格の有効期間は4年間で、有効期間が切れたらまたテストを受けて20人を計測してデータを提出して、再認定を受けないといけないという条件もあります。
ここまで読んで頂ければ分かる通り、結構厳しいコースで、私自身恥ずかしながら最終日のテストは一発合格できず、再テストを受けてようやく合格をもらいました。でもこれだけ厳しいという事は、この資格をパスした人の知識や技術のレベルを保証するためには必要な事だと思いますし、コースの内容も認定のシステムも非常にしっかりしていて、受講して良かったな〜と素直に感じました。
今回はS&Cコーチの受講者は私1人だけで、他の受講者はみなさん栄養関係の方でした。日本では年に2回開催されているようですが、毎回栄養関係の方の受講者がほとんどのようです。個人的にはスポーツ関係者にもドンドン受講してゲットしてもらいたい資格だと思います。
なぜこの資格を取ろうと思ったか・ISAKの利点
ISAKの資格を取ろうと思ったきっかけは、オーストラリア留学時代にさかのぼります。
オーストラリアのAISや各州のスポーツ医科学機関では、スタッフに対してISAKの資格を取るように求めているようで、AISに就職した友人もISAKのコースを受けていて「20人の計測をしないといけないんだよね〜」と話していました。
また、オーストラリアのスポーツ界では体組成を調べる時に体脂肪率(%)をあまり利用せず、皮脂厚を7-8箇所で計測してその合計値を体組成の指標として利用していたという事もありました。その理由としては、体脂肪率はそもそも直接計測する事ができず(屍体を使わない限り)、体脂肪率を推定する際には誤差が生じたり使用する推定式によって値が変わってしまったりという事があるようです。
実際、今回ISAKコースの座学でさまざまな体組成計測方法の理論を学びましたが、なるほど方法によって推定式やそもそもの仮定が異なっていて、どの計測方法を採用するかによって体脂肪率の値が大きく変わってしまうんだな〜という事がよく理解できました。なので、異なる方法や異なる機器で計測・推定された体脂肪率を比較する事はまったく意味がないと言えます。
その点、厳密に決められて統一されたISAKの手法を用いて計測されたデータを比べる分には、ある程度の信頼感を持って比べる事ができると言えます。また、皮脂厚という実測値を用いている(推定式を使ってさらなる計算をしない)ので、計算というステップによって誤差が大きくなる心配もありません。
1つ重要なのは、異なる計測者によるデータを比べるには、各計測者がまったく同じ手法を用いている事と最低限の技術レベルを有している事が前提になりますが、前述の通り、ISAKのコースは非常に厳しいのでこの点も担保されていると言えるでしょう。
個人的には、1人のアスリートの体組成を縦断的にモニターして行くという事であれば、市販の体脂肪率計を使用して体脂肪率を計測してもいいと思います。この場合、毎回同じ条件で計測する事が前提で、一番オススメなのは起床後おしっこをした後に飲食をする前に計測する方法です。この方法で長期的に体脂肪率の変化をモニターするのはアリだと思います。
しかし、この方法だと全身の変化を追跡する事は可能ですが、部位別にモニターする事ができません。皮脂厚と周径囲を計測する事によって、全身の傾向だけでなく部位別の変化をモニターする事ができるというのもISAKの方法を利用する利点だと言えます。
また、何よりISAKの利点の1つは高価で大きな計測機器が必要ではない点です。有資格者と最低限の計測器具があれば、あらゆる場所で計測が行えるというポータビリティは魅力的だと思います。
最後に
ISAK受講時には受講生同士で計測し合って練習をします。その結果、私の上腕二頭筋には内出血が今でも残っています。これはお互いあまりうまくない状態で練習をし合っているのでしょうがないです。「これから練習して上達しないと」というモチベーションにもつながるし、話のネタにもなるので、個人的には結構オイシイかなと思っており、良い思い出です!
このブログを読んでISAKの資格に興味を持ったスポーツ関係者がいたら、コースを受講するのをオススメします。このコースは年2回、国立健康・栄養研究所で開催されています。コース開催のお知らせは研究所のホームページに掲載されます。また、過去の受講者にもお知らせのメールが来るらしいので、お知らせメールを受け取ったら私のTwitterでシェアしようと思います。興味のある方はTwitterフォローして頂ければと思います。
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