#211 ウエイトトレーニングを若くから始めてしまうと、大人になってからのパフォーマンスの伸びしろを狭めてしまうのか?

公開日: : 最終更新日:2016/10/10 S&Cコーチとしての思考


 

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最近、以下のような趣旨の発言を耳にしました。

高校生くらいの年代のアスリートは技術を磨くことに集中すべきで、本格的にウエイトトレーニングを始めるのは大学に入ってからでいい。あまり早くにウエイトトレーニングを始めてしまうと、その後のパフォーマンス向上の伸びしろが少なくなってしまう

このような考え方を耳にしたのは初めてではなく、これまでにも何度か同じような意見を聞いたことがあります。

たぶん、若い時に技術を磨いておいて、大人になってから体力を鍛えれば、2段ロケットのような感じで、急激なパフォーマンス向上が期待できるというイメージなんでしょう。だから、高校生の間はあえてウエイトトレーニングはやらせずに、その伸びしろ(=2段目のロケット)を残しておいた方が良いということなのでしょうか。若くウエイトトレーニングを始めてしまうと、2段目のロケットがないから、パフォーマンスの伸びが早くに止まってしまうと考えているのかもしれません。

なんとなく正しいように聞こえますが、個人的にはこのような考えには反対です。理由を説明します。

 

 

ウエイトトレーニング開始年齢をあえて遅らせないほうが良い理由 

①早くウエイトトレーニングを始めた方が、より高い筋力レベルに到達できる

たとえば、16歳でウエイトトレーニングを始めたアスリートAと、20歳でウエイトトレーニングを始めたアスリートBという一卵性双生児がいたとします。

ウエイトトレーニング開始年齢以外の条件がすべて同じであると仮定すると、アスリートAのほうがより高い筋力レベルに到達できるはずです。二人とも20歳の時点で比較したら、ウエイトトレーニングを4年間実施しているアスリートAのほうがまだウエイトトレーニングを始めていない(あるいは始めたばかりの)アスリートBよりも筋力は高いはずです。

「そりゃアスリートAは4年間トレーニングやっているんだから当たり前でしょ!」と思われるかもしれません。

そこで、次はアスリートAの20歳の時点の筋力と、アスリートBの24歳の時点の筋力を比べてみます。二人ともウエイトトレーニング歴という点では4年間で同じです。しかし、20歳のアスリートAのほうが24歳のアスリートBよりも筋力は高いはずです。若い方がトレーングに対する適応力も高いし、疲労から回復する能力も高いので、筋力向上率も高いからです。

したがって、あえてウエイトトレーニング開始年齢を遅らせる理由が私には理解できません。特に、高い筋力を有することが重要な競技においては、ウエイトトレーニング開始年齢を意図的に遅らせるのはマイナスでしかないと思います。

 

②筋力と技術は別物ではない

最初の発言をした人の意識では、若いときに技術を磨いておいたうえで、後にウエイトトレーニングを実施して筋力を向上させれば、もともとあった技術のうえに筋力が足し合わされて、パフォーマンスがアップするに違いない、という考えがあると推測されます。つまり、パフォーマンスは技術と筋力(もう少し一般的に言うと体力)という要素の足し算によって決まるという考え方です。

これは間違いです。筋力(あるいは体力全般)が変われば、最適な技術も変わるからです。

もし高校生の間はウエイトトレーニングを一切せずに、その時点での筋力にとっては最適な技術を身につけたとしても、その後ウエイトトレーニングを開始して筋力が変われば、高校生の間に身につけた技術はもはや最適なものではなくなるのです。新たに手に入れた筋力を使って最適なパフォーマンスを発揮する為の新たな技術を身につける必要があります。

このコンセプトを理解していないと、高校の時は技術を極限まで磨いて、大学に入ってからウエイトトレーニングを開始したらパフォーマンスが低下した、なんてことになりかねません。このコンセプトは本ブログでも何度も説明しています(例えばコチラ)。

確かに、大学に入ってウエイトトレーニングを開始したら、筋力は急激に向上するでしょう。しかし、だからといって、パフォーマンスも急激に向上するわけではないのです。

むしろ、急激に筋力が変化してしまうため、その新たな筋力レベルに合わせて技術を調節するのが難しい、あるいは時間がかかる可能性が高いのです。一時的にパフォーマンスが低下するかもしれません。あるいは、技術の調節ができずに、パフォーマンスがずーっと低下して、高校生の時のパフォーマンスを取り戻すことすらできなくなるかもしれません。

それなら、若い時点でウエイトトレーニングを開始して、技術練習と平行して筋力を鍛えておいたほうが、筋力向上に対する技術の調節は容易になるし、長期的に考えたらより高いパフォーマンスレベルに到達できる可能性も高いはずです。

 

 

まとめ

以上のような理由から、あえてウエイトトレーニング開始年齢を遅らせるのは馬鹿げていると思います。そんなことをしている大人の指導者は、若いアスリートのポテンシャルを潰していると言っても過言ではありません。

しかし、だからといって全てのアスリートができるだけ若い時点でウエイトトレーニングを開始すべきだ、と主張しているわけではありません。何歳でウエイトトレーニングを開始するのが最適なのかは競技によっても違うし、環境によっても異なると思います。したがって、そこはケースバイケースで判断するべきです。

「あえてウエイトトレーニング開始年齢を遅らせたほうが良い」という間違った考え方・バイアスを捨てたうえで、そのアスリートにとってベストなウエイトトレーニング開始年齢を見つけてあげてください。 

 

 

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【編集後記】

まだ発売はされていませんが、この商品かなーり気になります。そもそも名前が「Bar Sensei」って、すごいネーミングセンス・・・。 

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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