#415 試合翌日を完全オフにするよりもアクティブレストにしたほうがいいっていう主張に科学的根拠はあるの?

 

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シーズン中、毎週末に試合があるような競技(例:チーム競技)においては、試合が終わったら次の試合に向けて疲労回復に努めることが重要です。そして、そのために様々なリカバリー戦略が提案され実行されています。

 

 

試合翌日はアクティブレストがいい!?

そんな数あるリカバリー戦略の中でも、「試合翌日を完全オフにするよりもアクティブレストにしたほうがいい」という主張が10年ほど前に流行りました。完全休養するよりも、軽めの運動でアクティブに身体を動かしたほうが疲労回復が早まるという考え方です。

「試合翌日を完全オフにするなんて時代遅れだぜ〜!最新の流行はアクティブレストだぜ〜!」みたいな感じで、ブイブイ言わせていた印象があります(完全に私の主観です)。特に、試合翌日にプールで軽い運動をするのが流行の最先端だったように思います。

ただ、アスリートの気持ちになって考えてみると、試合翌日は完全オフだったはずなのに、それが練習場(あるいはプール)まで行って運動しないといけなくなるなんて、精神的にも肉体的にもストレスのはずです。たとえアクティブレスト程度の軽い運動であったとしても、です。

 

 

科学的根拠はあるのか?

そんなストレスをアスリートに与えることになるにもかかわらず、「試合翌日は完全オフよりもアクティブレストにすべきだ!」と主張をするということは、そちらのほうが疲労回復が早いとするよほど明確な科学的根拠があるに違いないと思い、学術論文をいろいろと調べてみたのですが、まったく見つかりませんでした。

一部の方々から「ハカセ!」と呼ばれる私とはいえ、なんでもかんでも完璧ではないので、関連論文を見逃した可能性もゼロではありません。それでも、大学院で研究して博士号まで取得した私の論文検索能力は伊達ではありません。もし、誰がどう見ても「完全オフよりもアクティブレストのほうが疲労回復効果が高い」というコンセンサスが世界中のスポーツ科学者の間で共有されている事実があるのだとすれば、そこまで明確な結論に繋がるような重要な論文を私が見逃すはずがありません。

ということで、私の論文検索能力が信用できるという前提にもとづいて考えると、そこまで明確に「試合翌日は完全オフよりもアクティブレストにしたほうが良い」と言い切れるだけの科学的根拠はそもそも存在しないという結論にたどり着きます。

ただし、必ずしも「科学的根拠がない=間違っている」というわけではありません。現時点ではそれを証明する科学的根拠がなかったとしても、実際のところアクティブレストのほうが完全オフよりも疲労回復効果が高い可能性は否定できません。それが将来的に研究によって証明されることも十分ありえる話です。

だとしても、現時点では明確な科学的根拠もないのに、よくもまあそんなに自信満々にアクティブレストを推奨できるもんだ〜と思ってしまいます。ちょっと誠実性を疑ってしまいます。個人的にはそんなことを言っている人は信用できません。

 

 

試合翌日をアクティブレストにする問題点

試合翌日をアクティブレストにする場合、その後のスケジュールをどうするのかについての考え方は大きく2パターンあるはずです:

  • 試合翌日にアクティブレストしたら、その翌日(試合の翌々日)は完全オフにする
  • 試合翌日の完全オフの“代わりに”アクティブレストにしたから、その翌日(試合の翌々日)からは完全オフをとらずに普通の練習スケジュールに移行する

後者のパターンにおいては、完全オフを潰してアクティブレストにしたにもかかわらず、その代わりに完全オフを他の日に取るわけではないので、結果として余計疲れがたまってしまうのではないかと考えられます。そもそも完全オフをアクティブレストに置き換えたほうが疲労回復効果が高いとする科学的根拠はないんですから。

特に、精神的にリフレッシュする機会が奪われるため、アスリートにとっては厳しいものがあるでしょう。疲労とかその回復っていうのは、生理学的なものだけでなく心理的なものも大きく影響するので。

 

一方、最初のパターンであれば、まだ疲労回復という観点から考えると受け入れることができそうな気がしますが、長いシーズンを通して体力を維持する(場合によっては向上させる)という観点と次の試合に備えるという観点から考えると、その有効性にはやはり疑問符がつきます。

まず、シーズン中、毎週末試合があるようなチーム競技等においては、シーズンそのものが比較的長いことが多いので、シーズン中であっても積極的にトレーニングを実施して、体力の維持(または向上)を図る必要があります。ただし、次の週末の試合に向けて疲労を蓄積させるのは避けたいので、体力維持・向上効果は高いけど疲労が残りやすいような量が多めのガッツリしたトレーニングは、その週のできるだけ初めのほうにやっておきたいはずです。そうすれば、週末の試合までに疲労回復する時間を多く確保できます。

もし、試合翌日をアクティブレストにして、その翌日を完全オフにしてしまうと、ガッツリしたトレーニングをできるのが、早くても試合の3日後になってしまいます。一方、試合翌日を完全オフにすれば、その翌日、つまり試合の2日後からガッツリとしたトレーニングをすることができます。つまり、後者のほうがガッツリとしたトレーニングをした後に次の試合日を迎えるまでに、疲労回復を図る時間が1日多く確保できるので、トレーニングによるダメージや疲労が試合に悪影響を与えるリスクが低くなるのです。

したがって、単純に前の試合からのリカバリー効果が大きいか小さいかだけで考えるのではなくて、次の試合への影響やシーズンを通しての体力の維持・向上効果も含めて、より大きな視点を持って、試合翌日を完全オフにするのかアクティブレストにするのかを検討する必要があります。そして、そのような観点で考えると、試合翌日をあえてアクティブレストにする必要性を見出すことは私にはできません。

 

 

まとめ

科学的根拠がすべてではないですが、根拠もないのに自信満々に主張している人を見ると「胡散臭い・・・」と思ってしまうんですよね。「現時点では明確な科学的根拠はありませんが、論理的に考えても、この方法は効果がある可能性が大です!」くらいの主張の仕方であれば、まだ良心的だな〜と思えるんですけどね。私の経験上、科学的根拠も示さずに「◯◯です!」と言い切る形で極端な主張をしているケースのほとんどはインチキなんで・・・。ま、何事も疑問を持つというのは、S&Cコーチとして情報を収集する時には必要な姿勢なので、今後もその姿勢は崩さず、怪しいものに対するアンテナを貼り続けたいと思います。

あ、ちなみに、「海外の強豪チームも試合翌日はアクティブレストを取り入れている」っていうのも、アクティブレストを支持する根拠にはなりませんからね。強いチームがやっていることが全て正しいわけじゃないんで。

 

 

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【編集後記】

もうすぐラスベガスでNSCAカンファレンスが開かれますね。残念ながら、私は仕事の都合で参加できません。参加されるかたはエンジョイしてきてください。できればブログ等でレポートを書いてくれるとありがたいです。