#5 特異的なエクササイズ? その1

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Group Personal Training at a Gym


最近ではファンクショナルトレーニングの人気の影響もあり、一部のS&Cコーチの間では競技に特異的なエクササイズがもてはやされているように思います。いわゆる「競技で使える筋肉あるいは筋力」を向上させるためには競技動作に近いエクササイズを用いてトレーニングを行う必要があるという考え方が背景にあるのでしょう。

そうした考え方のもとに、重要な競技動作を取り出してきてその動作に直接負荷を加える(バーベル、ダンベル、ケーブル、ゴムバンド等を用いて)ようなエクササイズが実施されているのをいろいろな現場やインターネットで目にします。中にはそのクリエイティブさに驚かされるようなエクササイズもあります。

特異的なエクササイズのすべてに反対するわけではありませんが、あまり効果があるとは思えない場合が多いというのが実際のところです。その理由はいくつかあります。

 

特異的エクササイズに効果があると思えない理由

①外的負荷を加えることで、逆にエクササイズが競技動作に特異的ではなくなる

そもそも特異的なエクササイズを導入する理由は、競技動作に近い状態でトレーニングすることによってトレーニング効果の転移(transfer of training effect)を最大化しようということだと思います。しかし、競技動作そのものに負荷を加えることによって、そのエクササイズの動作(kinematics)や力発揮方法(kinetics)が変化してしまい、逆に競技動作とは異なるものになってしまう可能性があります。つまり特異的なエクササイズを目指しているはずが、実際には非特異的なエクササイズを実施していることになりかねないのです。

このkinematicsとkineticsの変化を抑えるために、特異的なエクササイズでは外的な負荷は最低限に抑えてできるだけ軽いものを使用すべきという主張も存在します。確かに外的負荷が小さければ競技動作とトレーニングエクササイズは極めて近いものとなると思いますが、それなら競技動作そのものを練習すればいいわけで、特異的なエクササイズをあえて実施する意味がそもそもなくなってしまいます。

 

②漸進性過負荷(progressive overload)の原則が適用できない

上記①とも関連しますが、特異的なエクササイズにおいては高負荷を外的に加えるのが難しいことがほとんどですし、非常に軽い負荷を用いてエクササイズを実施している場合が多いでしょう。ということは、選手の筋力が向上するにつれて外的な負荷を増やしていくという漸進性過負荷の原則を適用するのが難しいということになります。実際、特異的なエクササイズを実施しているアスリートがほとんど同じ負荷を何ヶ月、何年も使い続けているのを見たことがあります。

私は漸進性過負荷の原則はトレーニングの原則の中で一番大事なものだと考えているので、これが適用できないエクササイズはあまり使い勝手が良いとは言えず、私のエクササイズリストの中では優先順位が低くなってしまいます。

 

③運動制御(motor control)に悪影響を与える

上記①で述べたように、動作に直接外的な負荷を加えることによって、特異的なエクササイズは競技動作そのものとは違うものになります。しかし、動作自体は非常に近いので、逆に運動制御あるいは神経系のコントロールを混乱させてしまい、競技動作のパフォーマンスが崩れてしまう可能性があります。

例えばスクワットのようなエクササイズを実施した場合は、競技動作とは動きが大きく異なると考えられるため、競技動作の運動制御に与える悪影響は少ないと考えられます。  

 

まとめ

今日のところはここまで。また次回に続きを書きたいと思います。