キャッチをしないWLプル系エクササイズ
クリーンやスナッチ等の「ウエイトリフティング(WL)関連エクササイズ」は、アスリートが下肢伸展動作の爆発的パワーを向上するための手段として、非常に有効なエクササイズ群です。
ここ最近は、アメリカのスポーツ科学者であるSuchomel氏らの研究グループが、WL関連エクササイズで「キャッチ」をしない「プル」系のエクササイズ(例:クリーンプル、スナッチプル、ジャンプシュラッグ)について精力的に研究をしてデータを発表しています。
彼らのグループは、そうした研究結果をもとにして、アスリートが下肢伸展動作の爆発的パワーを向上するためにWL関連エクササイズを用いる場合、キャッチを含まないプル系エクササイズでも、キャッチを含むクリーンやスナッチと同等のトレーニング効果が期待できると主張しています。
また、キャッチを含まないプル系エクササイズのほうがフォーム習得も容易だから、無理してキャッチさせなくてもいいんじゃないかという論調でいろいろな場所で発言をしています(下記のレビュー論文はその1つ)。
まさに「おっしゃる通り!」っていう感じです。
ウエイトリフターでないのであれば、「絶対にキャッチまでやらないといけない」という呪縛にとらわれる必要はまったくありません。
キャッチ動作が下手くそなアスリートがいたら、キャッチなしのプル系エクササイズをやらせればいいんです。
それでも爆発的な下肢伸展パワーを鍛えることはできるのですから。
キャッチまでやる利点
その一方で、キャッチをさせることの利点は一切ないのか?というと、そういうわけではありません。
適切なフォームでキャッチ動作を実施できるのであれば、キャッチまで行うことにはそれなりのメリットもあると思います。
私も以前、ブログ記事でこのテーマについて一度書いています:
» 参考:ウエイトリフティング関連エクササイズでキャッチまでやる利点?
その記事の中で、キャッチまでやる利点の1つとして「体幹部(脊柱+骨盤)の剛性を高める能力の向上」を挙げました。
しかし、当時の私は、この利点について確信を持つまでいたらず、「現時点では何とも言えません」「可能性はあるけど、自信を持ってそうだとも言い切れない」といった曖昧な表現をしていました。
それから4年がたち、School of Movementのムーブメントトレーニングというコンセプトを学んだ今では、私の考えも固まってきました。
つまり、WL関連エクササイズでキャッチまでやる利点として「体幹部(脊柱+骨盤)の剛性を高める能力の向上」が重要であると、今では確信を持って言えるということです。
もっと言うと、単純に剛性を高めるだけではなく「一気に剛性を高める」という部分でキャッチまでやる利点が大きいと考えています。
イメージとしては、体幹部周りの筋群をすばやく共縮させて固める(=剛性を高める)能力、別な言い方をするとアイソメトリックなRFDを鍛えることができるということです。
上記の記事を書いた当時は、「体幹部(脊柱+骨盤)の剛性を一気に高める能力の向上」が実際のスポーツ動作に繋がるのか確信が持てていませんでした。
しかし、ムーブメントトレーニングを学んだ今となっては、スプリントや横方向の方向転換、減速等の動きを健康的かつパワフルに実施するためには、「体幹部(脊柱+骨盤)の剛性を一気に高める能力」の重要性が身にしみてわかっています。
したがって、WL関連エクササイズでキャッチまでやって、そのような能力を鍛えておいたうえでムーブメントトレーニングを実施することで、ムーブメントトレーニングの効果を促進することに繋がるとかなり確信しています。
まとめ
WL関連エクササイズにおいて、キャッチまでやる利点の1つとして「体幹部(脊柱+骨盤)の剛性を一気に高める能力」の重要性について、以前にブログ記事を書いた時よりも確信を持てるようになってきたので、改めてブログを書いてみました。
べつに、だからといってWL関連エクササイズでは必ずキャッチまで入れないといけない、と主張しているわけではないので、そこはご注意ください。
どうしてもキャッチ動作が下手とか、キャッチ動作までしっかり教えるのが難しい(指導頻度や人数の問題で)等の理由があれば、プル系エクササイズを選択するのは全然アリです。
あるいは、時期によってキャッチまでやらせたりプルだけにしたりと、バリエーションを加えるのもアリです。
このやり方が絶対にいい!ということではなく、それぞれの特徴(利点、弱点)を把握した上で、目の前のアスリートや状況に応じて適切なオプションを選択するのが重要です。
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【編集後記】
サッカーのW杯も終わって、テニスのウインブルドンも終わって、バスケ日本代表のW杯1次予選も終わって、なんだか日常生活の楽しみが一気に減って寂しくなってしまいました。
私にとって、スポーツという存在がどれだけ大きいかを実感しているところです。
大谷翔平選手がケガから復帰して、打者として試合に出始めてくれたので、その活躍に期待したいところです。