昨日、Xにこのような投稿をしました↓
ウエイト指導中にアスリートから「河森さんのトレーニングをやると身体が整います!」と言われました。「整う」ってサウナみたいなので、「身体が整うサウナトレーニング!」みたいに命名して売り出したら儲かるかな〜と夢想しましたが、イマイチわかりづらいからダメだろうという結論に至りました。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
この点について深堀りをします。
「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚
そもそも「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚は、経験したことがないと理解するのが難しいでしょう。
そして、その感覚を実際に経験したことのある人は限られているのが現実だと思われます。
まあ、アンケート調査を実施したわけではないので、あくまでも私の肌感覚でしかありませんが。
なんでもかんでもウエイトトレーニングをやっておけば身体が整うというわけではありません。
「関節に健康的な動き&狙った筋群を使う動き&大きな可動域での動き&エキセントリックをコントロールした動き」を徹底して実施することが大前提です。
そのような「正しいフォーム」を徹底してウエイトトレーニングを実施して初めて、経験することができるような感覚です。
それとは異なるフォームでウエイトトレーニングを実施すると、「身体が整う」とは真逆の経験をすることもあるでしょう(例:ウエイトトレーニング後に膝や肩や腰が痛くなる/重くなる)。
正直に告白すると、私も以前は「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚を経験したことがありませんでした。
慢性的に腰や股関節周りに痛みを抱えていて、ウォームアップで入念にフォームローリングやモビリティドリル等をやらないと、痛みが酷くてまともに重量を挙げることができませんでした。
そして、がんばってウエイトトレーニングを実施した後には、とくに腰周りが痛くなったり重くなったりしていました。
当時は、多少の痛みがでるのはしょうがない、と考えていて、それに対処するための方法として、フォームローリングやらモビリティドリルやらについてめちゃくちゃ勉強をして詳しくなったものです。
しかし、それはあくまでも対処療法みたいなもので、根本解決には繋がっていませんでした。
そんな私が初めて「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚を経験したのは、GS Performanceの加賀洋平さんのセミナーに参加して指導を受けたときです。
そこで教わったフォームは、「関節に健康的な動き&狙った筋群を使う動き&大きな可動域での動き&エキセントリックをコントロールした動き」を徹底して行うものでした。
すごい面倒くさいやり方だし、ある意味不自然な動きではあるので、フォーム習得にかなり苦戦をしたことを覚えています。
しかし、そのフォームでウエイトトレーニングを継続していくうちに、腰や股関節周りの痛みがなくなって、入念なウォームアップも必要なくなっていきました。
なにより、「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚を初めて経験することができました。
まさに根本解決です。
そこで学んだことをS&Cコーチとしての指導にも活用するようになり、アスリートから「河森さんのトレーニングをやると身体が整います!」というフィードバックをもらえるまでになったのです。
結局、ウエイトトレーニングをすると「身体が整う」ってどういうことなの?
S&Cコーチとして活動していた私でさえ、GS Performanceの加賀洋平さんからの指導を受けるまでは「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚を経験したことがなかったのです。
だから、その感覚を実際に経験したことのある人は限られているだろうと予想しているわけです。
そもそも、この辺りの感覚は言語化しづらいので、私の意図が読者にちゃんと伝わっているかどうかも怪しいです。
たとえばですが、「腰痛を抱えている人は、デッドリフトをやると良い」と言われて理解できる方には伝わるはずです。
これが理解できる方は、「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚も経験されている可能性が高いでしょう。
逆に「腰痛を抱えている人は、デッドリフトをやると良い」と言われて違和感を覚えた方は、「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚を経験されたことはないはずです。
「え、腰が痛かったら、腰に負担がかかるデッドリフトなんて、むしろ避けるべきじゃないの!?」と考える方が大半でしょう。
気持ちはわからないでもないです。
とりあえず重いバーベルを持ち挙げようとして、いわゆる「ぶっこ抜きスタイル」でデッドリフトをやれば、たしかに逆効果で、腰痛を悪化させてしまうでしょう。
しかし、「正しいフォーム」を徹底して実施すれば、むしろデッドリフトをやるほうが腰痛の改善に繋がります。
これは私自身が経験していますし、これまで指導してきたアスリートにも経験してもらっていることです。
経験すればわかるけど、経験していないとわからない。
そんな感覚的なお話なのですが、私なりに言語化に挑戦してみます。
まず、ウエイトトレーニング実施直後は、疲れます。
「身体が整う」というのは、「疲れが取れる」とかいうことではありません。疲れはします。
疲れてはいるけど、身体は整っている、という状態になるのです。
じゃあ、「身体が整う」って何か?というと、「固まっていた筋肉が伸ばされて関節周りの可動域が広がり、適切な筋群が活性化されて使いやすい状態になり、結果として痛みを感じずに身体を動かせる状態になること」なのではないかと考えます。
競技をプレーしているだけだと、特定の筋肉を限られた可動域内だけで何千回何万回と繰り返し使うことになります。
結果として、そこの筋肉ばかりが発達したり、あるいはそこの筋肉が慢性疲労状態で固くなったり、柔軟性が失われたり、競技動作で使われない他の筋肉が弱くなったりうまく使えなくなったりする恐れがあります。
「競技で使われない筋肉や可動域が失われるぶんには問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、あまりにも身体が競技に特化しすぎると、アスリートとしてというよりも人間としての健康的な身体が失われてしまう恐れがあります。
そこで、「関節に健康的な動き&狙った筋群を使う動き&大きな可動域での動き&エキセントリックをコントロールした動き」を徹底してウエイトトレーニングを実施することで、人間としての健康的な身体を取り戻すわけです。
また、「正しいフォーム」でウエイトトレーニングを実施することは、人間としての健康的な身体を取り戻すだけではなく、競技動作の向上にも繋がります。
たとえば、私は下半身のエクササイズでは「ケツ」を意識して使ってもらって「ケツ」の筋力UPを目指すことが多いのですが、その結果として「身体が整って股関節周りが使いやすくなって、競技動作のキレが出ました!」というフィードバックをもらうことがあります。
ここでいう「ケツ」は、大殿筋や大内転筋などの股関節伸展に関与する筋群をまとめてそう呼んでいるのですが、これらの筋群が弱いOR使えていないアスリートは多いです。
だからといって、「競技動作中にもっとケツを使え!」と指示されてもすぐに使えるわけではありません。
そもそもケツの筋力が弱かったりうまく動員できないからこそ、より強くて使いやすい他の筋群を使って競技動作を実施するようなフォームになっているはずだし、その動きが染み付いているでしょうから。
そこで、ウエイトトレーニングにおいては、ある意味面倒くさいフォームを徹底してケツを使ってもらうことで、短期的にはそこの筋群が活性化されたり(その筋群を動員する脳神経系も含めて)、長期的には筋力UPに繋がったりするわけです。
この短期的にケツが活性化されて使いやすい状態になる、というのも「身体が整う」という現象の一部だと私は捉えています。
私の経験上、この短期効果はウエイトトレーニング実施後、数日間は継続するようです。科学的根拠はまったくありません。
まとめ
普段は科学的知見に基づいた発信をすることが多い本ブログですが、今回は言語化しづらい感覚的なものについてまとめてみました。
おそらく、「ウエイトトレーニングをやったほうが身体が整う」という感覚を経験したことがないと、理解が難しい内容だったはずです。
わからなかった人は「なんだかそういう世界があるんだな〜」くらいに考えておいていただければ。
実際にその感覚を経験されたい方は、GS Performanceで加賀洋平さんの指導を受けてみることをオススメします。
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【編集後記】
昨日をもって、拙著「競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方」の出版契約が終了しました。
もう1冊の拙著「ピーキングのためのテーパリング」についても、来年の3月で出版契約が終了する予定です。
なぜそのような経緯に至ったかについてブログを書こうかと思ったのですが、それを書くのは「ピーキングのためのテーパリング」の出版契約が終了して、もろもろの手続きが無事に終わった頃まで延期することにしました。
どちらも、準備が整い次第、アマゾンのKDPを活用して自費出版のKindle版として発売しようと考えています。