#586 ハムストリングの肉離れを予防するためには、ハムストリングを直接鍛えるだけではなく「ケツ(特に大殿筋)」も鍛えるべし!

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こんにちは、河森です。

アスリートの競技力向上のためのトレーニング指導をしているS&Cコーチです。

アメリカとオーストラリアの大学院に留学してスポーツ科学を学び、博士号も持っています。

 

今日のブログでは、世の中のアスリートの99%くらいの人にとって重要な「ケツ」を鍛えることについてお話します。

 

 

アスリートと「ケツ」

アスリートは「ケツ」を鍛えるべきだ!

私の持論です。

ここで言う「ケツ」というのは、大殿筋や中殿筋を中心とした股関節まわりの筋肉のことを指します(その中でも特に大殿筋)。

大内転筋もある意味「ケツ」の一部である、という認識です。

「お尻」と言えばもっと上品なのかもしれませんが、普段から呼び慣れている「ケツ」という言葉を使わせていただきます。

 

アスリートがケツを鍛えるべき理由としては、大きく分けて

  • パフォーマンス向上に繋げるため
  • ケガをしづらい身体を作るため

の2つがあります。

 

今回は、後者の「ケガをしづらい身体を作るため」という点にフォーカスを当ててブログを書きます。

ケツを鍛えることは、身体のさまざまな部位のケガのリスク低下に繋がりうるのですが、すべてについて書こうとすると超長文になってしまいます。

そこで、今回は「ハムストリング肉離れ」の予防に対象を絞り、ケツを鍛えることのメリットについて解説してみます。

 

 

一般的なハムストリング肉離れ予防の方法

ハムストリングの肉離れはスポーツにおいて頻繁に発生するケガの1つです。

また、ケガの再発率も高く、過去にハムストリング肉離れを経験していると、再受傷のリスクが高まることが知られています。

そのような理由から、ハムストリング肉離れの予防トレーニングに高い関心を持つ運動指導者やアスリートは多いはずです。

» 参考:【論文レビュー】ハムストリング肉離れのリスク因子

 

ハムストリング肉離れ予防のためのトレーニングとして人気が高く有名なのは「ロシアンリーン」「ノルディックハムストリング」等と呼ばれるエクササイズでしょう。

エキセントリック(筋肉が伸ばされながら力を発揮すること)な筋力発揮にフォーカスしてハムストリングを鍛えることができるこのエクササイズは、ハムストリング肉離れのリスクを低下させることが研究でも報告されています(1,2,3)。

» 参考:「ロシアンリーン」とか「ノルディックハムストリング」とか呼ばれているエキセントリックを強調したエクササイズを導入する時に、筋肉痛をできるだけ抑えるためにできる工夫

 

また、ロシアンリーンだけでなく、ルーマニアンデッドリフト(通称RDL)もハムストリングの肉離れ予防のためには個人的にオススメのエクササイズです。

» 参考:ルーマニアンデッドリフト(RDL)の実施方法について、2017年現在の考え方

 

ハムストリングは「二関節筋」と言って、膝関節と股関節の2つの関節を介している筋肉です。

膝関節では「屈曲」といって膝を曲げる役割、股関節では「伸展」といって股関節を伸ばす役割があります。

そのようなハムストリングの特性から考えると、ロシアンリーンのように膝関節を屈曲させるタイプのエクササイズと、RDLのように股関節を伸展させるタイプのエクササイズを組み合わせることで、より包括的にハムストリングを鍛えることができると考えられます。

 

 

ハムストリング肉離れ予防のために「ケツ」も鍛えるべき理由

ロシアンリーンやRDLのようなエクササイズで、ハムストリングを直接鍛えることは、肉離れ予防に効果的です。これは間違いないです。

さらに、それに加えて「ケツ」を鍛えることでも、ハムストリング肉離れのリスクを下げることができます。

「なんで、ハムストリングの肉離れを予防したいのに、別の筋肉であるケツを鍛えるの?」と疑問に思われた方も多いかもしれませんので、そのメカニズムを説明していきます。

 

まず、ハムストリングとケツには共通の役割があります。それは「股関節の伸展」です。

ジャンプやスプリント等のスポーツ中の動きにおいては、股関節を勢いよく爆発的に伸展させることが重要ですが、その役割をハムストリングとケツで分担しているのです。

 

もし、ケツの筋力が弱いと、股関節を伸展させるために、そのぶんハムストリングが頑張らないといけなくなります。

別の言い方をすると、ケツの筋力が弱いと、そのぶんハムストリングに負担がかかるということです。

逆に言うと、ケツの筋力が強いと、そのぶんハムストリングの負担を減らせるということです。

これが、ハムストリングの肉離れ予防のために「ケツ」も鍛えるべき理由です。

» 参考:【論文レビュー】スクワットではハムストリングより大殿筋と大腿四頭筋(大腿直筋以外)を優先的に使ったほうが、高重量を持ち上げられる

 

「なんで、ハムストリングの肉離れを予防したいのに、別の筋肉であるケツを鍛えるの?」と疑問に思われた方は、同じ役割を共有するケツを鍛えて強くなると、そのぶんハムストリングの負担が減るから、と捉えていただけると理解しやすいのではないでしょうか?

この辺りの考え方は、アメリカ人の理学療法士Shirley Sahrmann氏が言うところの「any time a muscle is injured, look for a weak synergist(筋肉のケガを見つけたら、筋力が弱い協働筋を探せ)」と同じです。

ただ、ケガをしてから犯人探しをするのではなく、ケガをしないように弱い筋肉をあらかじめ強化しておこうということです。

» 参考:筋肉をケガした場合、その原因がケガをした筋肉そのものではなく他の筋肉(=協働筋)の筋力不足であることもある「any time a muscle is injured, look for a weak synergist」

 

 

まとめ

特定の筋肉の肉離れを予防するためには

  • 戦略①:その筋肉を鍛える
  • 戦略②:その筋肉と役割を共有する他の筋肉を鍛えて、その筋肉の負担を減らす

という2つの異なる戦略がどちらも有効です。

ハムストリングの肉離れ予防を例に挙げると、ロシアンリーンやRDLでハムストリングを鍛えるのが戦略①で、ケツを鍛えるのが戦略②ということになります。

戦略②のような考え方は見過ごされがちですが、とても重要なので、ぜひとも知っておいてください。

 

参考文献

  1. Mjølsnes, R., et al., A 10-week randomized trial comparing eccentric vs. concentric hamstring strength training in well-trained soccer players.Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports, 2004. 14(5): p. 311-317.
  2. Askling, C., et al., Hamstring injury occurrence in elite soccer players after preseason strength training with eccentric overload.Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2003. 13(4): p. 244-250.
  3. Petersen, J., et al., Preventive effect of eccentric training on acute hamstring injuries in Men’s soccer: A cluster-randomized controlled trial.American Journal of Sports Medicine, 2011. 39(11): p. 2296-2303.

 

 

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【編集後記】

明日のバスケ日本代表カタール戦は地上波・BSで生中継ないのか・・・。

バスケットLIVEでも生中継しないのか・・・。

地上波で生中継するほどメジャースポーツになってほしい・・・。