先日、こちらの一連のツイートをリツイートしました:
YouTubeのトレーニング動画に潜むリスク
・ボディービルやボディーメイクのトレーニングが検索上位を占めている
・一般人向けの「手軽で」「楽に」「効果が出る」と謳った動画の視聴回数が多い
・技術コーチが、競技動作に似た練習を「トレーニング」として紹介している
・基本的に視聴回数を稼ぎたい pic.twitter.com/S8opG8FaAY— 小川航平@S&Cコーチ(トレーニングコーチ) (@OGAWA_training)
「視聴回数を稼ぎたい」と思った瞬間に、
・誇張した表現
・視聴者を煽るような表現
・プロ選手の名前などを出し権威性を高めようとするが平気で出てくる。
根拠のない発言をしても「無料」だから、責任なんて生じない。「タダ」ってことはそういうことです。
— 小川航平@S&Cコーチ(トレーニングコーチ) (@OGAWA_training)
すみません、前提条件が抜けていました。
「アスリートが競技力向上のために、YouTubeでトレーニング動画を探すことに潜むリスク」
についてです。
— 小川航平@S&Cコーチ(トレーニングコーチ) (@OGAWA_training)
YouTubeに限らず、Twitter等のSNSでもトレーニングに関する動画はたくさん発信されています。
とくに新型コロナウイルスの影響で外出自粛ムードが高まり、トレーニングジムが休館したりするようになってからは、これまでネット上で発信していなかった人も発信し始めたので、トレーニング関連の情報量が一気に増えた印象があります。
競技力向上に真摯に向き合っているアスリートであれば、情報を求めてネットで検索することはあるでしょう。
それは素晴らしいことですが、これだけ情報量が多いと、正しい情報や自分の目的に合っている情報を見極めるのはとても難しい状況です。
そんなときに上記のツイートを見かけたので、共感をしてリツイートをしました。
ただリツイートするだけではなく、せっかくなのでブログ記事としてもう少し詳しく解説しようと思います。
アスリートが競技力向上のために、YouTubeでトレーニング動画を探すことに潜むリスク
私が考える「アスリートが競技力向上のために、YouTubeでトレーニング動画を探すことに潜むリスク」は大雑把にわけると2つに整理することができます:
- リスクその①:そもそも間違った情報が発信されている
- リスクその②:間違ってはいないけど「アスリートの競技力向上」という目的には合っていない情報を取り入れてしまう
リスクその①:そもそも間違った情報が発信されている
私もYouTubeでトレーニング関連の動画を観ますが、「なんだ、これ!?」と驚くようなインチキ情報を見つけるケースも少なくないです。
その「インチキ度」は、「こんなトレーニングをやったらケガをするリスクが大きくて絶対にやるべきじゃない!」というものから、「やっても害はないかもしれないけど効果もないから、アスリートの貴重な時間を奪ってしまうっていう意味ではマイナスだな」というものまでさまざまです。
前者のタイプのトレーニングはあきらかに「アウト」ですが、アスリートがトレーニングに費やすことのできる時間は限られているという前提で、効率よく最大限のトレーニング効果を引き出すことを仕事としている専門家の立場としては、後者のようなトレーニングも「インチキ」のレッテルを貼らざるをえません。
» 参考:アスリートがトレーニングに使える時間は限られているという事実を肝に銘じておくべし
しかし、専門知識をもっている人間が見れば、インチキかそうでないかの判断はつきますが、それを持ち合わせていないアスリートが情報の真偽を見極めるのは非常に困難です。
私も専門ではない分野で情報を求めてYouTubeで動画を探すことはありますが、どの情報を信用していいのかサッパリわかりません。
基礎知識がないと、何を根拠に情報の真偽を見極めていいのか、わからないのです。
となると、視聴回数とかの数字を参考にしてしまいたくなります。
しかし、そうなると、冒頭で紹介したツイートで指摘されているような問題に突き当たります。
つまり、視聴回数の多い番組は「視聴回数を稼ぐこと」を目的に内容を構成している場合が多く、その結果として情報発信の仕方が不正確だったり不誠実だったりする場合があるということです。
とはいえ、視聴回数が多くて内容も参考になる場合もないわけではありません。
結局のところ、視聴回数と発信されている情報の質は比例しないし、関係ないのです。
情報の真偽や質を判断することが難しく、間違った情報もたくさん発信されているYouTubeという世界の中で、アスリートが自らの競技力向上に役立つトレーニング動画を見つけ出すのは至難の業です。
確率としては、間違った情報を取り入れてしまうリスクのほうが高い、と認識してください。
リスクその②:間違ってはいないけど「アスリートの競技力向上」という目的には合っていない情報を取り入れてしまう
一言で「筋トレ」といっても、さまざまな目的が存在し、その目的によって適切なやり方は異なります。
YouTubeでトレーニング関連の動画を見ていると、ダイエットとかボディメイクと言われるような「見た目をよくするためのトレーニング」に関する動画の数が圧倒的に多い印象です。
そういう動画のほうが需要が高いだろうことは容易に想像がつきます。
視聴回数もそういう系統の動画のほうが多いように思います。
それはそれでいいですし、それを否定するつもりは一切ありません。
もちろん、「見た目をよくするためのトレーニング」動画のなかでも、間違った情報もあれば正しい情報もあるでしょうから、その見極めは各視聴者の責任になるのは同じことです。
しかし、今回のブログ記事では「競技力向上のためにトレーニングをやるアスリート」を読者として想定しているので、その観点で考えると、それらの動画は参考にしないほうがいいでしょう。
バーベルやダンベル等の同じ器具を用いて、スクワットやデッドリフト等の同じ名前のエクササイズを実施するので混同されがちですが、「見た目をよくするためのトレーニング」と「競技力向上のためのトレーニング」は別物です。
目的が異なるので、適切なやり方も異なります。
したがって、「アスリートの競技力向上」を目的としたトレーニングについて発信している情報かどうかを見極めることが、YouTubeでトレーニング動画を探すときには求められます。
これは、視聴者側、つまりYouTubeにアップされている動画から参考になるものを取り入れようとしているアスリート側の責任です。
「見た目をよくするためのトレーニング」を解説している動画を参考にトレーニングをやってみて、それが競技力向上に繋がらなかったり、逆にマイナスになったりしても、文句を言ってはいけません。
それで文句を言っている人は、理不尽な理由でクレームをつける悪質クレーマーと同じです。
「カレーライスを作ろうと思ってルーを買ったら、ハヤシライスのルーだった!どうしてくれるんだ!」とスーパーマーケットでクレームを言っているようなもんです。
また、「ボディービルダーの筋肉は使えない筋肉だ!」という批判を聞くことがありますが、これもまったく的はずれです。
ボディービルダーの方々は、見た目を目的にトレーニングをしているのであって、速く走ったり高く跳んだりするためにトレーニングしているわけではありません。
また、ボディービルディングのコンテストで勝つという目的のためには、ボディービルダーの筋肉こそが「使える筋肉」です。
たとえ身体能力が高く、速く走ったり高く跳んだりできる筋肉を持っているアスリートであっても、ボディービルディングのコンテストに出場して勝てないのであれば、ボディービルダーの観点からすると「使えない筋肉」ということになります。
筋肉が使えるか使えないかは、目的によって異なるということです。
まとめ
YouTubeでトレーニング動画を探すときには、そもそも間違った情報が多いというリスクと、間違ってなくても目的が異なる別物であるトレーニングに関する情報が多いというリスクが存在します。
そして、トレーニングについての知識が浅いアスリートの場合は、それらを見極めるのが難しいという問題があります。
もちろん、トレーニングについての基礎知識があって、自ら適切な情報を見極められるのであれば、大いにYouTubeを参考にしていただければと思います。
ただ、アスリートの多くは、そこまでトレーニングに精通しているわけではないと思うので、YouTubeを参考にする場合は十分注意してください。
» 関連記事:ネットでトレーニング関連情報を仕入れる時に注意したほうがいいこと
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【編集後記】
オンラインセミナーを平日の夜に開催してみたい気持ちはあります。
しかし、娘がまだ小さく、泣いたり叫んだりしだすと音が入り込んでしまう恐れがあるので、なかなか実行できません。
住んでいるところも狭いので、他の部屋で泣き叫ばれたらバッチリ聞こえてしまいます。
日曜に実施しているオンラインセミナーのときは、妻と娘は妻の実家に前日から帰ってもらっています。