#43 バーベルエクササイズのウォームアップについて補足説明


 

6940701913 a372b9da1f b

 

前回のブログで、「バーベルエクササイズのウォームアップセットの1セット目はバーだけで実施する」と書きました。今回は、その理由についてもう少し詳しく説明するのと、さらにウォームアップセットの組み立て方についても書きたいと思います。

 

 

ウォームアップセットの組み立て方

例えば、スクワットを100KGで3セット5レップやるのが今日のプログラムだとします。この3セットを私は「メインセット」と呼びます。

通常、スクワットのように比較的高重量を扱うバーベルエクササイズにおいて、いきなり100KGでメインセットを始めるという事はなく、まずは準備段階として100KGよりも軽い重量で数セット実施する(私はこれを「ウォームアップセット」と呼びます)のが一般的だと思います。

例えば以下のような形です:

  • ウォームアップセット#1:20KG(バーだけ)x 10
  • ウォームアップセット#2:40KG x 5
  • ウォームアップセット#3:60KG x 5
  • ウォームアップセット#4:80KG x 5
  • メインセット#1:100KG x 5
  • メインセット#2:100KG x 5
  • メインセット#3:100KG x 5

前回のブログで説明したのは、このウォームアップセット#1を必ずバーだけで実施するという事です。バーだけでウォームアップセットを実施して、すぐにメインセットに移行するというわけではありません。その後さらにウォームアップを数セット実施し、用いる重量は徐々に増やしていきます。

ウォームアップセットでの重量の増やし方については、ジャンプ幅を同じにする(上記の例では20KGずつ増えている)やり方と、ジャンプ幅を最初は大きく徐々に小さくしていくというやり方(例えば20KG→60KG→80KG→90KG)があります。

また、ウォームアップセットのセット数については、メインセットの重量が重いほど多いのが一般的です。上記の例だと、100KG程度の軽さでメインセットを実施する場合は4セットもウォームアップに費やす必要はないかもしれませんが、トレーニング初級者の場合はテクニック練習という意味も兼ねて多めにウォームアップセットを設定するのもありでしょう。

また、ウォームアップセットにおけるレップ数は、メインセットと同じにするか(上記の例の場合5レップ)、徐々に減らしていく(例えば10→5→3→1)という方法があります。トレーニング初級者でメインセットがそれほど重くない場合は、上記の例のようにメインセットと同じレップ数でウォームアップセットを実施しても疲労がメインセットに影響する可能性も少なく、より多くのレップ数を実施する事でテクニック練習にもなるという利点があります。

ただし、メインセットで扱う重量が増えてきたら、ウォームアップセットでのレップ数を徐々に減らしていくのがいいでしょう。ウォームアップで疲れてメインセットに悪影響が出てしまうのは絶対に避けたい所です。ウォームアップセットの主目的はあくまでもメインセットに向けての準備なので。

※ちなみにスクワットやデッドリフト等以外のアシスタンスエクササイズの場合は、ウォームアップセットを全く実施しないか1セットやるだけでもOKだと思いますが、それはケースバイケースで自分で判断して下さい。

 

 

ウォームアップセット#1をバーのみで実施する理由

前回のブログのコメントでも書きましたが、ウォームアップセットの1セット目をバーだけでやるのは私の個人的なこだわりであり、必ずそうしないといけないというわけではありません。これは科学というよりアート的な部分が強いので、各S&Cコーチが自分なりの考えを持っていても良いと思います。そういう前提を確認したうえで、私なりの理由を説明したいと思います。

まずは、エクササイズと同じ動き・同じ可動域を用いて身体を動かす事で、エクササイズに必要な関節の可動性を上げるという事があります。バーだけだと比較的軽い重量なので、多めのレップ数実施する事ができる(上記の例だと、メインセットと他のウォームアップセットは5レップで実施しているのに対して、バーだけで実施するウォームアップセット#1は10レップ実施している)という利点があります。「それならバーだけ(20KG)じゃなくて30KGでもいいんじゃない?」と問われれば「そうですね、効果としてはどちらでもさほど変わらないでしょう」と答えざるを得ません。極論を言うと、「20KGでも25KGでも30KGでも35KGでもそれほど変わらない」という事になりますが(プレス等扱える重量が軽いエクササイズの場合は別ですが)、そんな細かいこと言わずにバーだけでやればいいじゃんって感じです。

また、毎回同じ条件でウォームアップを始める事で日々のコンディションの変化にも気づきやすくなり、「今日はいつもより身体がかたいな〜」と感じたらバーだけで2セットや3セット実施するのもありでしょう。

次にバーだけでウォームアップセットを実施する理由の1つにメンタル的なリハーサルという事があります。フォームで課題となっている点(例えば膝を外にpushするとか踵を床から浮かせないとか)を意識しながら1セット目のウォームアップを実施する事で、その後のウォームアップセットとメインセットにおいてもそういったポイントを意識しやすくなる事が期待できます。重量が重いとバーベルを持ち上げる事に意識が集中してしまいフォームの課題を意識するのが難しくなるので、バーだけの軽い重量であらかじめメンタル的にリハーサルしておくのは有効だと考えます。

また、毎回20KGのバーだけでウォームアップセットを開始する事でこれが一種の儀式となり、メンタル的にスイッチが切り替わる効果もあると考えます。ま〜、私は心理学の専門家ではないので本当にそのような効果があるかどうかはわかりませんが、個人的にはあると信じています。

 

 

まとめ

今回は前回のブログを補足説明するような形でブログを書きました。S&Cについては科学的な側面とアート的な側面があり、今回取り上げたトピックは後者の要素が強いと思うので、「科学的にこれが正しいやり方だ」と言い切れないところがあります(そもそもそのように言い切れるトピックなんて存在しないのかもしれませんが・・・)。

各S&Cコーチがそれぞれの考え方のもとにこだわりがあって良い部分だと思いますが、少なくとも「なぜそうするのか?」という理由を説明できるよう準備しておくのは重要だと思います。理由だけしっかりと説明できるのであれば、私のやり方と異なるやり方をされていてもリスペクトできますし、私の理由よりもすぐれた理由があれば私のこだわりをあっさりと捨てて、やり方を変える事も十分あり得ます。

今回紹介した私のやり方とその理由についてもひとつの個人的な意見として受け取って頂き、鵜呑みにしないで下さい。重要なのは、いろいろな情報を仕入れた上で自分なりの理由やこだわりを築き上げる事だと思います。

 

2016/4/18追記:このトピックについて、少し考えが変わりました。下記ブログを読んでみてください。

#332 【継続学習】「朝飯前セミナー!」を受講した感想

関連記事

#340 「パワー = 筋力 x スピード」だから、ウエイトトレーニングをして筋力を向上させればパワーも向上する!って正しい?

    「パワー = 筋力 x スピード」だから、ウエイトトレーニングをして筋力を向上させれ

記事を読む

#72 矛盾:レジスタンストレーニング初心者がトレーニングを始める時

私が学生時代に抱いた疑問 私が大学生の時、スポーツ生理学やレジスタンストレーニング

記事を読む

#246 パフォーマンスの制限要因

    先日、スノーボードに行ってきました。私の腕前は「初級の上」くらいです(自己評価)。技

記事を読む

no image

#40 今日の気付き

深爪して、フックグリップでクリーンとかすると親指の痛みがハンパないんだなぁ・・・ なをき

記事を読む

#365 S&Cコーチの役割のひとつを「傷害リスクの低減」ではなく「ケガをしづらい身体をつくる」って言ったほうが納得させられるかも

    S&Cコーチの役割のひとつとして「傷害予防」がよく挙げられます。しかし、完全

記事を読む

#134 短期間で急激に体力アップできたら、それは競技パフォーマンスにとってプラスになるのか?

    競技コーチやアスリートと接していると、短期間(数週間単位)激しいトレーニングをしたら

記事を読む

#26 【論文レビュー】運動前のスタティックストレッチングはパフォーマンスを低下させる?

  運動前のウォームアップの一部として、これまでスタティック(静的)ストレッチングが一般的

記事を読む

#238 「専門性」とリスペクト

    今日は愚痴ります。ツイッターでもつぶやいたのですが、競技コーチでもない運動指導者が技

記事を読む

no image

#31 S&Cコーチとしてのキャリアについて

突然ですが、S&Cコーチとしてご飯を食べていくのは難しいですね。そもそも、スポーツ業界で働い

記事を読む

#361 原則 vs. 例外

    トレーニング指導をする時には、私の中である程度の「原則」が決まっていて、それに基づい

記事を読む

Comment

  1. Naoki Kawamori より:

    >KagaさんHooters2号店が銀座にできたみたいですよ。

  2. kawai より:

    いつも面白い情報を発信していただき、ありがとうございます。このブログのおかげでトレーニングの質が確実に上がっていると感じています。

    細かい点なのですか質問があります。
    デッドリフトやパワークリーンなどの床から開始するエクササイズの場合、バーベルのみでウォームアップをするとスタート位置でバーの位置が固定されないため、メインセットと異なる動作になってしまいます。そのため、現在は左右1枚ずつプレートを付けて行っているのですが、河森さんはこの点についてどのようにお考えでしょうか。

  3. Naoki Kawamori より:

    そういう場合は、1番軽いプレートを付けてウォームアップを始めるのでOKだと思います。

  4. kawai より:

    返信ありがとうございます

  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

    • 78今日の訪問者数:
    • 647昨日の訪問者数:
PAGE TOP ↑