最近はSPORTEC 2012でのプレゼン(詳しくはコチラ)に向けて、持久系アスリートに対するレジスタンストレーニング効果に関する学術論文を読みまくっています。
その中から、レジスタンストレーニングが持久系種目のラストスパートを向上させる可能性を示した論文を紹介したいと思います。
論文内容のまとめ
- 被験者はwell-trained cyclist(実験前のVO2maxの平均は66 ml/kg/min前後)で、過去6ヶ月の間にレジスタンストレーニングをやっていない状態
- 被験者を2つのグループに分けて、一方のグループは通常の自転車トレーニングのみを12週間継続(Eグループ)、もう一方のグループは通常の自転車トレーニングに加えて週2回のレジスタンストレーニングも実施(E+Sグループ)
- E+Sグループが実施したレジスタンストレーニングのエクササイズは、①スミスマシンを利用したハーフスクワット、②片脚レッグプレス、③片脚ヒップフレクション、④トウレイズの4つで、各エクササイズを3セット×4-10RM実施し、さらにコンセントリック局面は最大限加速させるように指示された
- 12週間のトレーニング後、E+Sグループは185分間の最大下強度の自転車こぎの後の5分間の全力(all-out)スプリント中の平均パワーを7.2%向上させたが、Eグループでは変化が見られず、変化率はE+SグループのほうがEグループよりも有意に大きかった
個人的な感想
レジスタンストレーニングが持久系アスリートのパフォーマンスにどう影響するかを調べた研究はいろいろありますが、ラストスパートに注目して調べた研究は私の知る限り今回紹介した論文だけであり、着眼点が面白いなと感じました。
持久系アスリートがレジスタンストレーニングを実施することで得られる効果をアスリートやコーチに説明する場合、タイプIIA筋線維の割合が増えるとか筋腱スティフネスが増えるとかいう生理学的な変化を説明しても話が専門的になりすぎて伝わらない可能性があります。
一方、「レジスタンストレーニングをするとラストスパート能力が向上する」というのは非常に分かりやすく強烈なメッセージとしてアスリートやコーチに伝わると思います。
この研究結果だけでは、単純なスプリント能力が向上したのか、あるいは運動効率が向上した結果、ラストスパートの時点までエネルギーを温存できるようになったのかはわかりませんが、どちらにしてもパフォーマンス向上に繋がるのは間違いありません。
もちろん、今回紹介した論文で調べたのは自転車選手なので、他の種類の持久系アスリート(マラソン、競泳、スキー、スケート)には当てはまらない可能性も十分あります。
そういったlimitationを頭の片隅に入れた上で、レジスタンストレーニングがラストスパート能力を向上させる可能性をサポートする1つのエビデンスとして今回の論文を知っておくとなにかと便利かなと思いました。
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