S&Cコーチとして「アスリートの感覚」は気にするようにしています。
特定のエクササイズやらトレーニングプロトコルやら重量やらについての感想とかキツさとかのフィードバックはちょくちょくアスリートに求めます。
「1から10で言うと、どのくらいキツイ?」とか「どこの筋肉を使ってる感じがする?」とか。
結局はトレーニングをするのはアスリート本人なわけで、そのトレーニングがどういう感じなのかとか、こちらが意図したトレーニング刺激を与えられているのか等は本人にしかわかりません。
でも、だからと言って「アスリートの感覚」を信じ過ぎるのも危険だと感じます。
なぜ危険なのかをハムストリングの柔軟性を例に挙げて説明していきます。
「ハムストリングが硬い」というアスリートの感覚は正しい?
「ハムストリングが硬い感じがする」と言ってストレッチをガシガシやっているアスリートがいたとします。
「アスリートの感覚」を100%信じるなら、S&Cコーチとしてハムストリングのストレッチ方法を教えるという行動を選択するのが正しいのでしょう。
でも、場合によってはこれは間違った選択である可能性があります。
たとえば、骨盤が前傾して腰椎が過伸展している姿勢のアスリートの場合、それ以上骨盤が前傾して腰痛が発生しないようにハムストリングが最後の砦として常にONの状態になっていて(protective tension)、それを「ハムストリングの硬さ」とアスリートが認識しているのかもしれません。
もしそうなら、ハムストリングは既にストレッチされた状態にある事になります。
そのハムストリングをさらに無理やりストレッチしようとすると、最後の砦が崩れてしまい、骨盤がさらに前傾して腰痛等につながる恐れがあります。
そういう場合は、骨盤を後傾させる働きのある他の筋群(殿筋、anterior core)をウエイトトレーニングで強化して使えるようにしてあげるのが効果的であり、そのような選択をするには専門的な知識のあるS&Cコーチの客観的な判断が必要となります。
「アスリートの感覚」を100%信じてしまうと、そのような判断はできません。
まとめ
ハムストリングのお話はあくまでも例であり、結局何が言いたいのかというと、アスリートの感覚は重要だけど100%信じるのは危険であるという事です。
あくまでも判断材料の1つとして参考にするのが適切で、そこにS&Cコーチとしての客観的な考えもミックスした上でいろいろな判断を下す必要があります。
総合的に物事を考えるのがキーです。
ちなみにアスリートの感覚を100%信じるのは危険ですが、完全に無視するのも危険です。
たとえば上記のハムストリングの例では、「ハムストリングに違和感がある」というアスリートの感覚そのものは必ずしも間違ってはいないのです。
ただ、それを「ハムストリングが硬い」と考えた『解釈』の部分と「だからハムストリングのストレッチをしよう」とした『解決策』の部分が間違っていただけなのです。
なので、アスリートが何かを訴えた場合はその言葉によく耳を傾けつつも、それをそのまま受け取らずに、本当は何が起こっているのかを専門家として究明する態度が求められるのではないかと思います。
チーム等で大勢のアスリートを相手にしている場合は難しいかもしれませんが。
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