#169 トレーニング中にパワー発揮を計測をするのが人気なのは、パワー発揮が目に見えないから

公開日: : 最終更新日:2015/08/24 測定・スクリーン・テクノロジー


 

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リニアポジショントランスデューサー(LPT)や加速度計を用いて、レジスタンストレーニング中(特にパワートレーニング中)の発揮パワーを計測するのが最近流行りです。その一方で、筋力を向上させるためのトレーニング中に、発揮された力を計測している人はあまりいません。なぜでしょうか?

 

なぜトレーニング中にパワーは計測するのに力は計測しないのか?

恐らく、筋力トレーニング中の力発揮は、挙上重量によってある程度規定されるという前提があるからでしょう。簡単に言い換えると、持ち上げている重さを見れば、どの程度の力を発揮しているか予想がつくということです。

一方、パワートレーニングにおいては、軽めの重量をできるだけ素早く持ちあげるという方法が一般的です。そのようなトレーニングにおいては、実際のパワー発揮(=トレーニング刺激)はアスリート自身の努力度に大きく依存することになります。例えば、スクワット1RMの30%の重量を用いてジャンプスクワットを実施する場合、用いている重量自体は非常に軽いので、それほど全力でジャンプしなくても指定されたレップ数をこなすことは可能です(つまり「手抜き」が可能)。

しかし、できるだけ大きなパワーを発揮して、できるだけ大きなトレーニング刺激を身体に与えて、できるだけ大きなトレーニング効果を得たいと思ったら、できるだけ全力でジャンプする必要があります。しかし、挙上重量を見ればある程度力発揮(=努力度)を把握できる筋力トレーニングとは異なり、パワートレーニングにおいては見た目からパワー発揮(=努力度)を把握するのが困難です。

そんな背景があって、LPTや加速度計を用いたパワー計測への関心がS&C専門家の間で高まっているのでしょう。つまり、パワー発揮を計測するのは、パワー発揮が目に見えないからということです。

 

ウエイトリフティングでキャッチする理由をパワー発揮(努力度)の観点で考えてみる

関連した話として、アスリートがウエイトリフティング関連エクササイズをパワー向上のために取り入れる際に、キャッチをすべきか(クリーンなら肩で、スナッチなら頭上で)、あるいはプル動作(クリーンプルやスナッチプル)のみでもOKかという議論があります。

いわゆるトリプルエクステンションと呼ばれる股関節・膝関節・足関節の伸展動作におけるパワー発揮能力を向上させるためにアスリートがウエイトリフティング関連エクササイズを取り入れるのなら、トリプルエクステンションだけ爆発的にやっていればその後にキャッチしようがしまいが関係ないから、プル動作だけやっていれば十分なトレーニング効果を得られるはずだという主張があります(そのほうが技術的にも簡単で習得がしやすいし)。個人的には一理あると思います。

それに対する反論として良く聞くのは「トリプルエクステンションの後に素早く方向転換をして素早くバーの下に潜り込む動き(=加速の後に素早く減速する動き)がアスリートにとって重要だからキャッチまで含めてやるべきだ」といったものがあります。何となくわからないでもないですが、いまいちピンときません。ウエイトリフティングに愛着のある人が「ウエイトリフティングはキャッチせにゃアカン」的な結論ありきで、無理やりこじつけているようにも聞こえます(別に批判しているわけではありません)。先入観を捨てて客観的に考えてみると、キャッチをすべきとする理由としては弱いと感じます。

その一方で、プル動作の弱点を考えてみると、ジャンプスクワット等と同じで、パワー発揮が目に見えないということがあります。つまり手抜きができてしまうのです。

逆に、キャッチまで含めてクリーンやスナッチを実施することのメリットは、キャッチまで成功した場合はある程度のパワーを発揮したと判断することが可能であるという点が挙げられます。例えば、キャッチに失敗した試技とキャッチに成功した試技を比べると、後者のほうが大きなパワーを発揮していた可能性が高いでしょう(キャッチが上手く行ったかどうかも重要ですが)。また、今まで80kgしかキャッチできていなかったのが、90kgをキャッチできるようになったら、パワー発揮能力が向上したとある程度予想することが可能です。アスリートにとってのモチベーションがアップするというメリットもあるでしょう。

そういった意味で、プル動作だけでなく、キャッチまで含めてウエイトリフティング関連エクササイズを実施することには、十分なメリットがあると考えることができます。

 

まとめ

  • パワー発揮を計測するのが人気なのは、パワー発揮が目に見えないから
  • 指導者としては、パワー発揮を計測することで、アスリートの努力度を確認するという意味がある
  • アスリートにとっては、目に見えないパワー発揮を数字として示されることによって、モチベーションがアップするという効果がある
  • ウエイトリフティング関連種目(クリーン、スナッチ)において、プル動作だけでなくキャッチまで含めて実施する理由として、前者だとパワー発揮がわからずに手抜きがしやすく、後者だとある程度のパワー発揮がされたことが予想できるという点と、アスリートのモチベーションアップという点が挙げられる

 

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【編集後記】

あけましておめでとうございます。物事を継続して実施することが不得意な私が、このブログはなんとか続けることができています。最近はネタ切れが激しく、更新頻度がだいぶ落ちてきていますが、2014年もがんばって続けていこうと思うので、よろしくお願いします。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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