#262 【月刊トレーニング・ジャーナル記事転載⑧】S&Cコーチとしての継続教育

公開日: : 最終更新日:2015/08/07 継続学習(セミナー、読書、DVD、ブログ)


 

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月刊トレーニング・ジャーナルに掲載して頂いた記事(河森執筆部分)を転載するシリーズの続きです。今回は連載第8回の「S&Cコーチとしての継続教育」です。

=====ここから記事=====

S&C分野に関する知識や技術は常に進歩しており、今までと同じことを続けていてはS&Cコーチとして後退することになります。私もそのような危機感を持ち、常に勉強を続けています。現在はS&Cコーチとしてフルタイムで働いているので、少ない時間で効率良く情報を手に入れる工夫もしていますが、本当に役に立つ重要な技術や知識を身につけるには、効率が悪くても時間や手間、お金をかける必要があると最近は感じています。

勉強法にはインプット型とアウトプット型の2種類があると言われています。前者は情報を自分の中に取り込むこと、後者は外に出すことです。「勉強」という言葉を聞くとインプット型だけを想像されるかもしれませんが、それだけだとなかなか知識が身につきません。

例えば、受験の問題集を解いていて解き方がわからず、解答と解説を読んだ後に「何だ、この解き方なら知っているよ!」と思った経験はありませんか?これは、インプットはできている(=知っている)けど、アウトプットができていない(=使えない)状態です。S&Cコーチとしての仕事の多くは、自分の持っている知識や経験、技術を、目の前の状況やアスリートの特徴に合わせて活用するものです(教科書通りのシチュエーションなんてありません)。そのような能力を身につけるには、アウトプット型の勉強を取り入れる必要があります。しかし、そもそも情報を全く持っていないとアウトプットしようがないので、初めのうちはひたすらインプット型の勉強に励み、ある程度の知識がたまってきた段階で、アウトプット型の勉強も取り入れていくのが良いでしょう。

 

インプット型勉強法

私が活用しているインプット型勉強法には、論文を読む、ブログを読む、本・雑誌を読む、DVDを見る、セミナーに参加する、S&Cコーチを訪ねて指導の様子を見学させてもらう、等があります。

読む論文を探すには、PubMedやGoogle Scholarといった検索サービスを使います。PubMedでは、特定のキーワードを登録しておけばそのキーワードが含まれる論文のリストを定期的にメールしてくれるサービスがあります。また、学術雑誌の最新号が発刊されたらメールで通知が来るサービスにも登録しています。手に入れた論文はスキャナー等でPDFファイルに変換し、文献管理ソフト(Endnote)を用いてデータベース化しています。また、今後手に入れて読みたい論文は、CiteULikeというウェブ上ブックマークサービスを利用してリスト化しています。

このように、論文検索や管理はIT技術を駆使して効率化を図っていますが、実際に論文を読む時はアナログ式です。紙に印刷して、蛍光ペン等でマーキングをしながら読んでいます。そのほうがパソコンやタブレット型端末で読むよりも集中して読めるし、内容も頭に入ります。

チェックしているブログは、RSSリーダーに登録してあります。新しい記事が投稿されたら自動的に知らせてくれるので、記事のタイトルにざっと目を通し、興味のある記事だけをクラウド型情報管理サービスのEvernoteに保存・同期して、時間のある時にスマートフォンやタブレット型端末、パソコンで読みます。ブログはそれほど集中せずにサッと読める記事が多いので、わざわざ紙に印刷して読むことはありません。論文にはないブログ記事の良さとしては、読みやすさ・情報の新鮮さ・動画も添付できる、等が挙げられます。一方で、ブログの情報は書いた個人の意見にすぎないので、その点を意識しながら読むことが大切です。

本は、執筆から出版まで時間がかかるため、新鮮な情報を得ることはできませんが、体系化された情報群にアクセスできる点が魅力です。また、雑誌は、手軽に幅広い分野・テーマについて情報収集をするために読んでいます。最近は、セミナーを撮影した動画がDVD教材として販売されていますが、好きな時に何度も見返せる点やセミナー開催地まで行かずに済む点は(特に海外のセミナーの場合)DVD学習の大きなメリットです。しかし、実際にセミナーに参加する経験には代えられません。講師に直接質問ができるし、エクササイズ指導などにおける微妙なニュアンス(文章や映像ではわかりづらい部分)を学ぶこともできます。他の参加者とネットワークを築く機会があるのも魅力です。セミナー参加は他の勉強法よりも時間や費用がかかるのでハードルが高いかもしれませんが、それだけの価値があります。

インプット型勉強法で最もオススメなのが、他のS&Cコーチを訪ねて指導の様子を見学させてもらう、という方法です。私の経験上、これが1番勉強になります。ただし、見学させてもらう相手は慎重に選ぶ必要があります。反面教師から学ぶこともあるかもしれませんが、できれば優秀なS&Cコーチから良いものをたくさん吸収したいものです。また、見学を許可してくれるS&Cコーチの経験や専門知識は、膨大な時間・労力・お金をかけて蓄積されたものです。その事実に対して十分に敬意を払い、それを態度や手土産で相手に伝えることも重要だと思います。何でもタダで手に入ると思ったら大間違いです。

インプット型の勉強をするうえで、そのタイプに関わらず共通して重要なのは「情報を鵜呑みにしない」という姿勢です。情報をインプットする時はその真偽をトコトン疑ってかかり、自分の持っている知識や経験をフル動員して論理的に判断し、正しいと納得できるものだけを自分の中に取り入れるようにしています。これを私は「フィルターを通した情報収集」と呼んでいます。

また、正しいと判断した情報であっても、自分の置かれた状況に当てはまらなかったり、自分のやり方・システムに合わなかったりすることもあります。そういう場合は無理に取り入れようとせず、とりあえず知識として持っておいて、その後その知識を使える時が来る日まで寝かせておきます。

 

英語力はマスト?

私が活用しているインプット型勉強法の情報源のうち、90%以上が英語です。S&Cという概念自体がアメリカで生まれたものですし、この分野では英語で発信されている情報量が圧倒的に多いので、これは当然です。「英語は苦手だから」と言って、英語での情報収集を避けていては、S&Cコーチとしての能力を最大限に伸ばすことはできません。

私は海外留学中に必死で勉強をして、英語でS&Cの情報をインプットする能力を身につけました。「そりゃ海外留学すれば英語力は身につくでしょ」と思われるかもしれませんが、少なくとも英語を「読む」能力は留学なんてしなくても身につきます。辞書を片手に英語の情報を読むというプロセスは、自分自身との戦いだからです。世界中どこに居てもできますし、逆に言うと英語圏に留学したからといって自然に身につく能力ではありません。S&Cコーチを名乗るのであれば、時間と労力をかけてぜひ英語力を鍛えて下さい。

 

アウトプット型勉強法

私が活用しているアウトプット型勉強法のメインとなるのがブログ執筆です(「S&Cつれづれ」kawamorinaoki.jp)。ブログを書くにはかなりの時間とエネルギー、集中力が必要ですが、それだけの価値はあります。インプットした情報を一度頭の中で整理してから、自分の言葉にして吐き出すという作業は、まさにアウトプット型勉強法の典型です。アウトプット型勉強法のビギナーが最初に取り入れるものとしてはブログ執筆が一番おススメです。ウェブ上に自分の書いた文章を公開することに対して漠然とした不安を持たれるかもしれませんが、有名人でない限りそれほど閲覧数も多くないので、炎上するリスクは低いでしょう。勉強だけが目的なら、ブログ記事を書くだけ書いて、非公開の設定にするという選択肢もあります。

依頼原稿を書くのも私にとってはアウトプット型勉強法の1つです(本連載も含めて)。ブログでは、頭の中で考えたことをとりあえず吐き出してみるという気持ちで文章を書いているので、推敲はほとんどしないし、内容が過去の記事と重複することもあります。一方、依頼原稿を書く時は何度も推敲をしますし、過去に同じテーマについて書いた自分のブログ記事を読み返したうえで、1つの集大成の作品を書くような気持ちで臨みます。何度も考えて、自分の意見を練りに練る、という作業を繰り返すうちに、そのテーマに対する自分の意見が深まり固まっていく感覚があります。

エクササイズやトレーニングプログラムを自分の身体で試してみるのは、S&C分野に特有のアウトプット型勉強法と言えるでしょう。例えば、新しいエクササイズを覚えても、まずは自分でやってみないことにはアスリートに教えられません。エクササイズ動画を見て「こんな感じのエクササイズかな?」と頭の中で想像したのと、実際に自分でやってみたのとでは印象がまったく異なることも多々あります。それに、自分でやっているのとやっていないのとでは、アスリートに指導する時の説得力が全然違います。

ただし気を付けないといけないのは、自分の経験は一人の経験にすぎないと言うことです。つまり、研究で言うところのサンプル数N=1にすぎないのです。同じエクササイズを実施しても、身体のサイズ、四肢と体幹の長さの比率、柔軟性、過去のトレーニング歴、etcによって感じ方も違いますし、適切なフォームも異なります。また、ある人に効果のあるトレーニングが他の人にも効果があるとは限りません。したがって、自分で試してみるのは重要ですが、それが全てだと思い込まないよう気を付けないといけません。

 

指導に活用

最後に忘れてならないのが、インプットした知識や技術をアスリートの指導に活用してみる、という方法です。なんだかアスリートを実験台にするみたいで抵抗があるかもしれませんが、インプットしたものは使わないと意味がないので、これは避けては通れないプロセスです。ただし、何の根拠もないのにとりあえずアスリートにやらせてみる、という姿勢はいただけません。これをやれば効果があるはずだ、と自信を持って言えるだけの論理的根拠を集めたうえで、アスリートにやらせるのが大切です。そのうえで、本当に効果があるかどうかを見極めながら、試行錯誤していく必要があります。トレーニング中のアスリートの声に耳を傾けたり、言葉には出てこない表情等のフィードバックをモニターしたりすることは、何よりも勉強になると感じています。ある意味、アスリートは私にとって最高の先生です。

 

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【編集後記】

スターウォーズ最新作の予告編第2弾が公開されましたね〜。いや〜、公開が待ち切れません!!

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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