#368 【論文レビュー】「筋肥大期」的な量の多いウエイトトレーニングを実施すると一時的にRFDが低下する

公開日: : プログラムデザイン, 論文レビュー


 

Yin Yang carved in stone

 

中・長期のトレーニング計画を立てるうえで、おさえておいたほうが良いと思われる科学的知見を見つけたので、論文レビューとして紹介します。 

 

論文の内容

Mangine et al. (in press) Resistance training intensity and volume affect changes in rate of force development in resistance-trained men. Eur J Appl Physiol.

 

研究プロトコル

2年以上レジスタンストレーニング経験のある男性被験者を2つのグループに分けて、週4回のトレーニングを8週間に渡って実施し、その前後でforce-time curve測定(isometric mid-thigh pull)を実施した:

  • 高強度低量グループ(INT):4セット x 3-5レップ with 90% 1RM、レスト3分
  • 多量低強度グループ(VOL):4セット x 10-12レップwith 70% 1RM、レスト1分

 

結果

特に重要な点だけ箇条書きします:

  • トレーニング前後の変化量をグループ間で比較すると、力の最大値、力発揮開始から30-200 ms後における力、力発揮開始から50-90 ms後におけるRFD(rate of force development)の向上率はVOLよりもINTのほうが有意に大きかった。
  • INTのトレーニング前後の変化を見ると、力の最大値、力発揮開始から50-200 ms後における力、力発揮開始から50 ms後におけるRFDにおいて有意な向上が見られた。
  • VOLのトレーニング前後の変化を見ると、RFD関連変数に有意な変化は見られなかった。 ※生データを見ると低下傾向が認められますが、RFDはreliabilityが低いので統計学的に有意な差にならなかったと推測されます。

  

考察

この研究は、ある意味「筋肥大期」に特徴的なプログラムと「最大筋力期」に特徴的なプログラムの比較と捉えることができます。前者がVOLで後者がINTです。

そういう観点でこの研究を解釈すると、「筋肥大期」のプログラムを実施している期間中はRFD、つまり素早く力を立ち上げる能力が一時的に低下する(あるいは向上が停滞する)ことを示唆していると捉えることができます。これは恐らく、まともなS&Cコーチであれば経験的に知っていることだと思いますが、それが研究によって確認されたということです。

だからといって「筋肥大期」的なプログラムは避けるべき、という単純な話ではないので、注意が必要です。量の多いプログラムを実施するのには、RFDの向上以外にもそれなりの目的や理由があるので、必要であれば「RFDが一時的に低下する」というリスクを承知の上で、覚悟を持ってやらせるべきです。

ただし、そのぶん、そのような量の多いプログラムをいつ実施させるかには気をつけたほうがいいでしょう。

試合が実施されている時期にRFDが低下するのは(競技にもよるでしょうが)あまり好ましくないはずなので、理想は試合が実施されないオフシーズン、それもできるだけ初期に量の多いプログラムを実施させたいところです。試合のスケジュールから遠くはなれている時期に量の多いプログラムを実施することで、筋肥大や筋持久力の向上といったベースを作っておくことができます。

一時的にRFDが低下するかもしれませんが、この時期は試合がないので、大きな問題にはならないでしょうし、その後、シーズンインが近づくにつれて、より強度の高く量の少ないプログラムに移行していけば、徐々にRFDも向上していくはずです。

また、シーズンが始まってからも、例えば1ヶ月くらい試合がない期間があるようであれば、最初の2週間くらいは量の多い「筋肥大期」的なプログラムをやらせるのもアリでしょう。

 

 

まとめ

トレーニングだけでなく世の中の物事はなんでもそうかもしれませんが、プラスもあればマイナスもあるものです。陰と陽と言ってもいいかもしれません。「筋肥大期」的なプログラムにも陰と陽があるんです。だから、両者を理解した上で、うまく使いこなせばいいのです。それだけです。

 

 

||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

【編集後記】

ドナルド・トランプがアメリカ大統領になっちゃいましたね。勝利宣言の演説をやっていたのをテレビで見たのですが、まだ実感がわきません。「これ、テレビ番組の壮大なドッキリ企画なんじゃないの?」と今でも少し思っています・・・。

関連記事

#72 矛盾:レジスタンストレーニング初心者がトレーニングを始める時

私が学生時代に抱いた疑問 私が大学生の時、スポーツ生理学やレジスタンストレーニング

記事を読む

#278 【論文レビュー】筋トレ後の冷水浴は筋肥大や筋力UPを阻害するから、やらないほうがいいんじゃない?

    冷水浴や温水浴、交代浴etcのリカバリー方法が、研究の世界でもスポーツの現場でもホッ

記事を読む

#108 トレーニングの期分け(ペリオダイゼーション)はベストな方法?

    ちょっと刺激的なタイトルです。ブログが炎上しないかドキドキです。さて、今日はちょっと

記事を読む

#119 腕立て伏せ vs. ベンチプレス

    今日は短いブログを書きます。   腕立て伏せ vs. ベンチプレス レジスタンストレーニン

記事を読む

#279 前額面のパフォーマンスUPのために、まずは矢状面メインのストレングスエクササイズで筋力を上げてみる、という考え方

    前額面における動き、つまり横方向の移動能力が重要な競技は色々とあります。じゃあ、前額

記事を読む

#337 【論文レビュー】プレシーズンの練習やトレーニングを欠席せずにしっかり参加しておくと、シーズン中の傷害予防に繋がる!

    久しぶりに論文レビューをします。      論文の内容 Windt et a

記事を読む

#151 【論文レビュー】ストレングストレーニングがラン&自転車の持久力パフォーマンスを向上する

    持久系アスリートがストレングストレーニングを導入しているケースはまだまだ少ないと思わ

記事を読む

#7 コアスタビリティエクササイズの分類

コアスタビリティという能力はパフォーマンス向上や傷害予防のために重要と考えられ、この能力

記事を読む

#69 シーズンオフのトレーニングだけで1年間戦えるカラダを作る事は不可能だっ!!

    前回のブログでシーズン中のトレーニングについてお話をしました。 (試合期が長い競技

記事を読む

#152 懸垂のプログラミング

    懸垂は上半身のプル動作パターン(特に垂直方向)を鍛えるエクササイズの中でも、特に重要

記事を読む

  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

    • 566今日の訪問者数:
    • 716昨日の訪問者数:
PAGE TOP ↑