#371 アスリートの筋力の左右差をどう捉えて、ウエイトトレーニングでどうアプローチしていくか

公開日: : S&Cコーチとしての思考


 

16668955211 15c635af53 b

 

これまでバドミントンやフェンシングのように片側性スポーツ競技のトレーニング指導を担当する機会が多くありました。

これらの競技では、一方の腕でラケットや剣といった道具を持ち、前脚と後脚もほぼ固定されたまま競技を実施します。そのため、長年競技を続けていると、筋力に左右差が出てきます。筋力だけでなく腕や脚の太さが左右で明らかに異なるケースも多く、私はアスリートの身体つきを見るだけで右利きか左利きかを当てられる自信があります。

筋力に左右差が出やすい競技のアスリートに対してウエイトトレーニングを指導する時に、どのような考え方を持ってアプローチしていけば良いのかについて書いてみます。

 

 

左右差へのアプローチ

アプローチとしては、大きく分けて3つの考え方があるんじゃないかと思います。

 

①左右差をなくそう!

理学療法士やアスレチックトレーナー等のメディカル系バックグラウンドを持っている人に多いと感じますが(私見です)、左右差があるとケガにつながるから、ウエイトトレーニングで弱い側を優先的に強化して左右差をなくそうという考え方があります。

具体的なアプローチとしては、片腕または片脚のエクササイズを実施する時に、弱い側のトレーニング量(例:セット数)を増やしたり、扱う重量を弱い側に合わせたり(例:利き腕は20KG挙げられるけど、非利き腕は15KGしか挙げられないから、利き腕も15KGでトレーニングする)ということが考えられます。

また、「左右差を一切なくして完全なる左右対称を目指すのがケガ予防には重要だ!」という極端な考えの持ち主の場合、弱い側だけトレーニングをして強い側は一切やらない、という戦略を取ることもあるかもしれません。

 

②強い側をさらに強く!

競技を長年やって筋力に左右差が出るということは、競技中に使う側、つまり競技で必要な側が適応した結果なんだから、ウエイトトレーニングにおいてもそちら側を積極的に鍛えて、さらに強化していくのが競技力向上につながるという考え方もあります。

具体的なアプローチとしては、片腕または片脚のエクササイズを実施する時に、強い側のトレーニング量(例:セット数)を増やしたり、扱う重量を左右で変えたり(例:利き腕は20KGでトレーニングして、非利き腕は15KGでトレーニングする)ということが考えられます。

また、強い側、つまり競技で使う側だけをトレーニングして、競技であまり使われない弱い側は一切トレーニングしないという極端なアプローチも考えられます。

 

③あまり気にせず左右を同じように鍛える(ニュートラル派)

片側性スポーツをやっているかぎり筋力に左右差が多少あるのは自然であると受け入れて、左右差を完全になくして対称を目指すことはせず、かといって競技によって発生している左右差をウエイトトレーニングで助長することも避ける、という考え方があります。私は個人的にこの考え方です。

具体的なアプローチとしては、トレーニング量(例:セット数)や扱う重量を左右で同じにするということです。

ただし、ここで注意が必要なのは、そもそも筋力に左右差がある場合、左右で同じ重量を挙げようとしたら、こなせるレップ数が左右で変わってしまうという点です。だからといって、扱う重量を弱い側に合わせてしまうと①のアプローチと変わらなくなってしまうし、それだと強い側に対するトレーニング刺激が不十分です。

じゃあどうすればいいのか、については過去のブログで説明しているので、そちらをお読みください。簡単に言うと「弱い側はセット中に小休止を挟んでもいいから、トータルのレップ数を強い側に合わせる」という解決策です。

#13 片脚または片腕エクササイズ(片側性エクササイズ)で、左右どちらからセットを実施するか?

参考までに、同じような考え方を説明しているブログです↓

Tip: Train Your Strong Side First

 

 

まとめ

①のアプローチに固執すると、左右差を気にするあまり、いつまでたっても筋力強化ができないという失敗につながります。そもそも「どの程度の左右差があるとケガのリスクが高まるのか」が明確ではない状況で完全な左右対称を目指すのはナンセンスです。かといって、競技によって発生した左右差をトレーニングで助長することになる②のアプローチにも賛成しかねます。となると、一番バランスが取れていて現実的なアプローチは③ということになるのではないでしょうか?

片側性スポーツのトレーニング指導をしてきた私の経験としては

  • 多少の左右差があるのは自然であると受け入れる
  • その左右差をウエイトトレーニングで助長しない

の2点を基本戦略として心に留めておくと、プログラムデザインをする時に役に立つのではないかと思います。参考にしてみてください。

 

 

 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

【編集後記】

先日、税理士さんの個別コンサルティングを受けてきました。来年度からフリーランスとして活動するにあたって必要になる手続きについてと、フリーランスとして活動するうえでの心構え等についてアドバイスを頂きました。フリーランスとしてのサービスメニューの1つとして私も「個別コンサルティング」を提供しようと考えているので、その点でも参考になりました。

関連記事

#81 【再考】トレーニングにおける特異性の原則

    前回のブログで、「疲労した状態でスピードやパワーを発揮する能力」を鍛えるために、疲労

記事を読む

#108 トレーニングの期分け(ペリオダイゼーション)はベストな方法?

    ちょっと刺激的なタイトルです。ブログが炎上しないかドキドキです。さて、今日はちょっと

記事を読む

#132 ラダードリルはアジリティを向上させるか?

    ラダードリルは競技におけるアジリティを向上させる効果

記事を読む

#118 ブログ紹介:パワーを最大限に高めるために

    今日は非常に素晴らしいブログを紹介します。 http://bretcontreras.co

記事を読む

#367 ウエイトトレーニング中に鏡を見るべきか見ないべきか?

    ウエイトトレーニングを指導する時は、原則として鏡を見させないようにしています。移動式

記事を読む

#158 過去記事紹介:そもそもトレーニングは必要?

    なかなか自分の書いた文章を読み返すという事はないので

記事を読む

#123 トレーニングは競技のためだけにすれば良いか?

    最近担当をするようになったアスリートの胸椎モビリティ(可動性)が不足していたので、モ

記事を読む

#173 ボクサーのパンチ力をアップさせるために広背筋を鍛えろって言うけど、どうなの?

    ボクサーのパンチ力には広背筋が大事? 「パンチ力のあるボクサーは背中の筋肉、特に広背筋が発

記事を読む

#370 「Jump Squat」と「Squat Jump」は何が違うの?

    S&Cに関する学術論文や書籍、ネット記事等を読んでいると「Jump Squa

記事を読む

#287 減速能力やエキセントリック筋力の重要性を理解する

    加賀さんのブログ「怪我しやすい人の傾向」でも書かれていますが、生まれつき筋収縮のスピ

記事を読む

  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

    • 57今日の訪問者数:
    • 508昨日の訪問者数:
PAGE TOP ↑