#11 モビリティについて Part 2:影響する要因「スティッフネス」



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前回は「モビリティの定義」と「なぜモビリティが重要か」について書きました。今回からは「モビリティに影響する要因」を3つ取り上げて説明して行きたいと思います。その3つとは

  1. スティッフネス(stiffness) 
  2. 筋の長さ 
  3. 運動制御・コーディネーション(motor control) 

です。

 

モビリティに影響する要因 ①スティッフネス

まず、スティッフネスとは「物質を変形させるために必要とされる力の大きさ(単位変形量あたりの力)」の事で、単位はN/mで表されます。

例えばゴムを思い浮かべてみて下さい。ゴムにはその材質や太さによって、固いゴムと柔らかいゴムが存在します。固いゴムを引っ張って伸ばすには大きな力が必要ですし、柔らかいゴムは小さな力で引っ張ってもビヨーンと伸びると思います。この場合のゴムのスティッフネスとは、ゴムを一定の長さに伸ばすために必要な力の大きさの事で、固いゴムはスティッフネスが大きく、逆に柔らかいゴムはスティッフネスが小さいと言うことができます。

モビリティに関して言うと、例えば、仰向けの状態でハムストリングのパートナーストレッチをするとします。この時、ハムストリングが非常に固くて、伸ばすのに大きな力が必要な場合はスティッフネスが大きいという事になります。

ここで注意が必要なのは、「スティッフネスが大きい」イコール「関節可動域が小さい」ではないという点です。スティッフネスが大きいと関節を動かすのに大きな力が必要になるだけで、それと可動域の大きさとは別問題です。大きな力を加えさえすれば関節は動くわけですから。

逆に言うと、上記のハムストリングのストレッチでどれだけ大きな力を加えてもそれ以上動かないという場合は、関節可動域が小さいという事になり、これはスティッフネスの問題ではなく、筋の長さの問題(筋が短い)である可能性が考えられます。

アスリートのモビリティを測定・評価する際に、この「スティッフネス」と「筋の長さ」という2つの問題を区別して考える事は非常に重要で、その後のモビリティ向上トレーニングの方法にも影響してきます。2008 Indianapolis Performance Enhancement Seminar DVDBill Hartmanは太さの違うゴムバンドと長さの違うゴムバンドを用いて、この点を分かりやすく視覚的に説明しています。何度も言いますがこのDVDはオススメです。



スティッフネスに影響を与える要因

ここでスティッフネスに影響を与える要因(特にpassiveな要因)を考えてみると、

  • Titinフィラメント
  • Thixotrophy(チキソトロピー)
  • 筋やその他結合組織のadhesions (癒着)

等が考えられます。


①Titinフィラメント

Titinフィラメントは筋サルコメア内でミオシンフィラメントの位置を保持する役割を果たしている高分子タンパク質で、バネの特性があります。

筋量が多いと、このtitinフィラメントの量も多くなるので、理論的には筋のスティッフネスも大きくなります。つまり、筋力トレーニング等をして筋肥大が起きると、その筋のpassiveなスティッフネスが大きくなり得るという事です。

これを読んで「えっ!!」と驚かれる方もいるかもしれません(特にS&C関係の方)。よくスポーツ競技のコーチで筋力トレーニングに対する理解のあまりない方が、「筋トレをすると身体(動き)が固くなる」という理由で筋力トレーニングをアスリートにやらせない(やらせたがらない)事があります。これに対してS&Cの専門家としては、「そんなの科学的な根拠がない!」とか「間違ったトレーニングの仕方をしているのでは?」といった反応を示すのではないでしょうか。

しかし、筋肥大するとtitinフィラメントの量が増えて筋のスティッフネスが大きくなる可能性があるという事は、一見スポーツ競技コーチの主張をサポートしているように感じるため、S&C関係者にとっては都合の悪い(受け入れがたい)情報かもしれません。

でも、安心して下さい!!上でも述べたように、「スティッフネスが大きい」イコール「関節可動域が小さい」ではないのです。筋肥大をして、その筋のスティッフネスが大きくなっても、必ずしも関節可動域が小さくなるわけではないですし、モビリティが低下するわけでもありません。

筋肥大をしつつ、モビリティ向上も同時に達成することは十分可能ですし、場合によっては(関節や競技によっては)スティッフネスが大きくなる事がパフォーマンス向上や傷害リスク低減につながる事だってあるのです(この辺りの話はまた後日詳しくします)。

ただし、筋肥大に伴う筋のスティッフネス増大がモビリティ低下につながる可能性も、モビリティ低下につながらない可能性と同じだけあるという事は頭に入れておく必要があるでしょう。

この辺りの議論をBill Hartmanは次のようにうまくまとめています:Hypertropy does not necessarily limit the joint’s ability to move, but it may make it more difficult to move


②Thixotrophy

次にスティッフネスに影響を与える要因がthixotrophy(チキソトロピー)です。これは、一定の期間静止していると粘度が高まり固くなる性質の事を指していて、我々の身体もこの性質があり、朝起きた直後に身体のいろいろな部位が固く感じるのはthixotrophyが多少影響しているという事です。


③筋やその他結合組織のadhesions (癒着)

最後に、筋や結合組織のadhesions(癒着)ですが、これはBill Hartmanによると我々の日常の身体行動のレベル等(normal use、a lack of use、injuries)によって起こる適応で、身体運動を制限す る可能性がある要因とされています。



まとめ 

以上、今回は「モビリティに影響する要因」を3つご紹介し、その中の「スティッフネス」についてお話しました。残りの「筋の長さ」と「運動制御・コーディネーション」については次回お話したいと思います。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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