先日以下のようなツイートをしました:
これはS&Cコーチにも当てはまる。トレーニングは効果が出るまで時間がかかるから特に。
トレーニング指導の担当を変えてすぐに成果が出たとしても、新しいトレーニングのおかげとは限りません。「名医」と「ヤブ医者」に出会ったら必ず考えるべき2つのこと|外科医の視点 https://t.co/a9THCGap4v
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
リンク先の記事は、医者の腕の評価について、医者である著者が、患者があまり気づかないような視点から解説してくれているものです。
とても面白いので、ぜひ読んでみてください。
「生まれてから一度も医者にかかったことがない」という特殊な人以外の多くの人には、関連のある内容です。
そして、同じようなことがS&Cコーチの腕の評価にも当てはまると共感し、上記のようなツイートをしたわけです。
今日はこの点について掘り下げて書いてみます。
現状に不満を感じていたら、堂々とトレーニング指導の担当を変更しましょう
自分でお金を払ってS&Cコーチと契約しているアスリートもいれば、チームや所属先が依頼しているS&Cコーチからトレーニング指導を受けているアスリートもいます。
後者の場合、アスリート自身に選択権はないので、アスリートがS&Cコーチの腕を評価する必要はありません。
しかし、前者の場合、誰と契約するか、そして、その契約したS&Cコーチのトレーニング指導を受けて効果が出ているのか、をアスリートが自分で決めたり見極めたりしないといけません。
場合によっては、受けているトレーニング指導に不満を感じて、そのS&Cコーチとの契約を終了し、他のS&Cコーチと新たに契約を結んでトレーニング指導を受ける場合もあるでしょう。
自分の競技人生ですし、自分のお金なので、満足できなければトレーニング指導の担当を変えることはまったく問題ありません。
むしろ、自分がお金を払って受けているサービスに不満を感じているのに、相手に気を使って契約を終了できなかったりすると、そっちのほうがアスリートとしてはマイナスです。
私が見てきた一流アスリートは、その辺り非常にドライに決断できる人が多いです。
トレーニング指導の担当を変えてすぐに成果が出たとしても、新しいトレーニングのおかげとは限らない
トレーニング指導の担当を変えて、新たにトレーニング指導を受け始めるシチュエーションにおいて、気をつけていただきたいことがあります。
それは、ツイッターでもつぶやいたように「トレーニング指導の担当を変えてすぐに成果が出たとしても、新しいトレーニングのおかげとは限らない」ということです。
というのも、トレーニングによって体力が向上するには時間がかかるし、向上した体力を使いこなせるようになって競技成績に結びつくまでにも時間がかかるからです。
トレーニングは「魔法」じゃないんです。
場合にもよりますが、ざっくりとした一般論として、前者は数ヶ月単位、後者は数年単位の時間がかかるものと私は考えています。
» 参考:トレーニング効果が競技成績向上に結びつく実感を得るには年単位の時間がかかる
したがって、新しいS&Cコーチと契約して新しいやり方でトレーニングを始めて、数ヶ月のうちに試合で好成績を出したとしても、それが新しいトレーニングのおかげである可能性はかぎりなく低いです。
前任者と取り組んできたトレーニングの成果が少し遅れて好成績に結びついたのかもしれません。
あるいは、前任者のトレーニングがキツすぎて、疲労がずーっと溜まっている状態だったのでなかなか成績に結びついていなかったのが、新しいS&Cコーチに代わりトレーニングがラクになったことで、疲労が取り除かれてコンディションが向上し、好成績に結びついたのかもしれません。
新たにアスリートにトレーニング指導を開始するときには、最初からガシガシとやってもらうことはなく、新しいやり方を覚えてもらうために、トレーニングの量や強度は軽めに抑えることが普通なので、後者のパターンは十分ありえます。
どちらにしろ、新しいS&Cコーチのもと新しいやり方でトレーニングを開始して最初の数ヶ月のうちに試合で好成績を残したとしても、そのS&Cコーチを信頼するのはまだ早いです。
S&Cコーチの腕の見極めを誤る危険性があるので、もう少し待ちましょう。
最低でも半年程度は。
少なくとも私だったら、自分がトレーニングを指導し始めたアスリートがすぐに好成績を出したとしても、「俺のトレーニングのおかげだ!」なんて恥ずかしくて絶対に言わないです。
アスリート本人から「河森さんのトレーニングのおかげです!」と言われたら、あからさまに否定するのもなんなので、「俺のトレーニングのおかげ・・・でしょうね〜」と冗談っぽく言うことはありますが。
逆に、そんなこと本気で周りに吹聴しているS&Cコーチがいたら、その人は能力が低いので、すぐに契約を終了して新しいS&Cコーチを探したほうがいいでしょう。
まとめ
トレーニング指導の担当を変えてすぐに好成績が出たとしても、新しいトレーニングのおかげとは限らないので、とりあえず最低でも半年程度は様子を見てみましょう。
半年ほどたってからも、継続して好成績を維持できていて、トレーニング効果も実感できているのであれば、新しいトレーニングが有効である可能性が高いと判断してOKです。
そういうケースであれば、新しいS&Cコーチと継続してトレーニングに取り組んでいくのが良いでしょう。
逆に、いきなり好成績が出たとしても、それが最初の数ヶ月のうちだけで、半年ほどたったら、それ以降は調子が悪くなってしまうようなら、新しいトレーニングは効果がない恐れがあります。
S&Cコーチの再度の変更を考えてみてもいいかもしれません。
もし、最初の数ヶ月の好成績の理由が、前任者と取り組んできたトレーニングの成果が少し遅れたタイミングで開花したものだと判断できるのであれば、そして、新たなS&Cコーチと半年以上トレーニングを続けてきた結果、前任者とトレーニングをしていた時期よりもパフォーマンスが著しく低下してしまったのであれば、頭を下げてでも、前任者に再びトレーニング指導をしてもらうよう依頼すべきでしょう。
アスリートとして成功したいのであれば、「一度断ったから気まずい」とか「頭を下げるのはプライドが・・・」みたいなくだらない感情なんかゴミ箱に捨ててしまいましょう。
しかし、場合によっては、新しいトレーニングを開始してすぐに好成績が出たとしても、それが前任者とのトレーニングの積み重ねのおかげではないパターンもあります。
そういうケースにおいては、まったく新しい第三者のS&Cコーチを探したほうがいいかもしれません。
ただし、トレーニング指導の担当をコロコロ変えているようでは、効果が出るものも出なくなってしまいます。
事前に時間と労力をかけてS&Cコーチの腕を見極めるための予習をしっかりとやったうえで契約し、最低でも半年間は継続してトレーニング指導を受けてみることが大切です。
» 参考:サービスを受ける相手を選ぶときは、ひと手間をかけて事前調査しておくべき
» 参考:トレーニングプログラムや指導してもらう専門家を頻繁に変えていたら効果が出るものも出ません。
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【編集後記】
高校野球が終わりましたね。
球数問題等が話題になりましたが、以前よりは複数のピッチャーで継投をするようなチームが増えてきたような印象を持ちました。
少しずつ変わっていってくれればいいですね。
しかし、そもそも少年野球の段階で、すでに投げすぎによって肩や肘の障害が出ているらしいので、もっと若い野球選手の指導者から変わってもらわないといけませんね。