「アクチベーションドリル」という言葉。日本語でGoogle検索してもあまりヒットしません(アクチベーションドリルの検索結果は4つ、アクティベーションドリルの検索結果は6つ)。しかし、”activation drill”と英語で検索すると、8000以上の結果がヒットします。英語で書かれたブログやウェブサイトでは最近よく目にする言葉で、すでに市民権を獲得していると言っても過言ではないでしょう。
アクチベーションドリルとの出会い
私がこの言葉を初めて耳にしたのは、オーストラリアで博士課程の学生をしている時だったので、多分2007年頃だったと思います。同じ博士課程で勉強していたアメリカ人の学生が「筋トレ前のウォームアップでお尻のactivation drillをしておくと、スクワットとかデッドリフトをする時にお尻の筋肉をうまく使えるようになって、お尻の筋肉をしっかりトレーニングできるぜ、ベイビー!!」的な感じの発言をしていた記憶があります。それに対して私が「activation drillって何だよ、ブラザー!!」と言ったとか言わなかったとか。
当時は何の知識もなかったので、彼の説明を聞いて「ふ〜ん」という反応をする事しかできませんでした。正直な感想としては「何でウォームアップ中にお尻の筋肉をアクチベート(そもそもアクチベートって何じゃい?)しておくと、その後のトレーニング中(スクワットとか)にお尻の筋肉をうまく使えるようになるの?可能性はあるのかもしれないけど、論理的にはいまいち納得できないな〜。そもそもスクワットとかデッドリフトを正しいフォームでやってれば自然とお尻の筋肉もしっかり動員(recruit)されてトレーニング効果も出るんじゃないんかい?」という感じでした。
アクチベーションドリルって何?
その後、いろいろとアクチベーションドリルについて勉強したり、英語圏のS&C業界でactivation drillというものがポピュラーになっていくのを見てきて、私なりに「アクチベーションドリルとはこんなものだ」というアイデアがある程度固まってきました。それを簡単にまとめると普段何らかの理由(姿勢、不使用etc)により動員(recruit)されにくくなっている筋(または筋群)を、しっかりと動員(recruit)できるように神経系を再教育する目的で、低負荷を用いて実施するドリルといった感じです。
アクチベーションドリルの使い方というか目的は主に2通りあると思います。1つは、神経系の再教育をメインの目的にして、トレーニングの一部として実施する方法。もう1つは、ウォームアップの一部としてactivation drillを実施して、その後のエクササイズ中における筋の動員(recruit)アップとパフォーマンスの向上につなげて行こうとする方法です。
よくアクチベーションドリルでターゲットにされる筋には、大殿筋・中殿筋・腸腰筋・体幹etcの筋群が挙げられます。確かに、普段ウエイトトレーニングを教えていて、これらの筋群がうまく使えていないアスリートが多いと感じます。なので、これらの筋群を使えるように神経系を再教育するというのは、必要な事なのかな〜と思いますが、アクチベーションドリルを実施する事で本当に神経系の再教育ができるのかどうかという疑問があります。さらには、「ウォームアップ中にアクチベーションドリルを実施する事で、その後のウエイトトレーニング(または実際の競技)中でもターゲットとする筋群が動員(recruit)できるようになって、結果としてパフォーマンスが向上するのか?」という疑問が残っていました。
アクチベーションドリルに対する疑問を解くには?
これらの疑問を解くには以下の3タイプの研究が必要です:
- アクチベーションドリル実施中に、ターゲットとする筋の動員(recruitment)が増えているのかを筋電図を用いて調べる研究
- ウォームアップ中にアクチベーションドリルを実施する事で、その後のエクササイズ中にターゲットとする筋の動員(recruitment)が増えているかを筋電図を用いて調べる研究
- アクチベーションドリル実施の前後でパフォーマンスが向上するかを調べる研究
次回のブログでこれらの研究についてレビューしたいと思います。