#54 トレーニング初心者には高レップ数を実施させない

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ずーっと出張でロンドンに滞在していました。勤務時間中も勤務時間外もオリンピック漬けな感じだったので、なかなかブログを更新できませんでした。今日は久しぶりの更新です。

 

私が共感したブログ記事

タイトル通りの内容のブログを読みました。全く同感なので紹介します。

Should Beginners Perform High Reps?

あきらかにトレーニング初心者と思われるアスリートに対して、ベンチプレスを15レップ(1セットあたり)実施させているコーチを見かけて思わず話しかけたというエピソードからブログ記事が始まります。フォームもめちゃくちゃだったという事です。残念ながら、こんな光景は日本でも結構見かけます。そして見かけるたびに嫌~な気持ちになります。なぜ嫌~な気持ちになるかは後でお話しします。

まず、新しいエクササイズを覚えるためには、1セットあたりのレップ数を少なく抑えるべきです。レップ数が多くなると集中力が続かなくなるし疲労も溜まってくるので、セット後半に正しいフォームを維持するのが難しくなります。間違ったフォームでたくさんのレップ数を実施すると、新しいエクササイズを覚える事が阻害されます。それに身体に負担がかかって痛みが出たり怪我につながる可能性もあります(正しいフォームに対する私のこだわりは以前こちらで書いたので興味があればお読みください)。だから、トレーニング初心者に15レップとかやらせるのは信じられません。私は5レップ程度に抑えるようにしていますが、5レップでもフォームが崩れるようであればさらに1セットあたりのレップ数を減らす事もあります。

こんなの普通に考えたらわかる当たり前の事だと思うのですが、わかっていない人もいます(なんでやねん!!)。なぜだろうと考えて、2つ理由を思いつきました。1つは「新しい動作を覚えるには高回数反復する必要がある」という考えから1セットあたりのレップ数を増やすという行動につながったという可能性。この「新しい動作を覚えるには高回数反復する必要がある」という考え方自体は、個人的には賛成です。ウエイトトレーニングに限らず、新しい動作を覚える時には何度もその動作を繰り返す事によって脳の中に新しい回路を作りあげる必要があるからです。でも、間違ったフォームで繰り返しても間違った動作を覚えるだけです。

そもそもこの考え方を「新しい動作を覚えるには正しいフォームで高回数反復する必要がある」と言い直したほうがいいのかもしれません。正しいフォームで動作を繰り返すには、1セットあたりのレップ数を増やすんじゃなくて1セットあたりのレップ数を抑えつつセット数を増やせばいいのです。例えば、15レップ×3セットやるのではなくて5レップ×9セットやるとか。この例ではトータルのレップ数は同じ(45レップ)ですが、レップの質は後者のほうが断然上のはずで、長期的に見れば後者のほうがより早く新しい動作を身につける事ができる可能性が高いでしょう。それに、セット間にフィードバックを与えて指導をする機会が増えるので、さらに動作習得が促進されるはずです。

初心者に高レップで新しいエクササイズを実施させちゃうコーチがいる理由の2つめは、教科書的なペリオダイゼーションの説明が関係するような気がします(あくまでも気がするだけで、気のせいかもしれませんが)。教科書的に書いてあるような一般的な(古典的な?)ペリオダイゼーションのやり方は、高レップ(10-15回)・低負荷から始めて徐々に低レップ・高負荷に移行していくというものです。この概念自体に問題があるとは言いませんが、これを盲目的にトレーニング初心者に当てはめようとすると、まずは高レップから始めるぞ~という話になります。でも実際にそうやってみると初心者のエクササイズテクニック習得という点で問題に直面するので、普通は気付くはずなのですが・・・。教科書の知識と現場で必要な知識にはギャップがあるとつくづく感じます。

 

まとめ

要するに何を言いたいのかっていうと、新しいエクササイズを習う時はセットあたりのレップ数を少なく抑えて、代わりにセット数を増やしましょうって事です。そうする事の利点は

  • 疲労を最小限に抑えて集中力を保つ事でレップの質を高める事ができる
  • トータルのレップ数は確保できるので、学習効果に悪影響はない
  • セット間のレストの回数が増えるので、フィードバックを与える機会も増えて学習効果がアップするはず

等が挙げられます。これだけの理由があればレップ数を少なくするほうがいいと私は思うのですが、それでも初心者に高レップでエクササイズを実施させるコーチはたくさんいます。それでフォームがバッチリなら問題ないのですが、ほとんどの場合セット後半でフォームが崩れます(セット前半から崩れている場合も)。そんな様子を見るとムズムズするのですが、自分が指導しているアスリートでなければ、我慢して何も言いません。自分にできる事は何もないので。でもそのアスリートがかわいそうな気持ちは半端ではありません。この仕事をしている身として多少の罪悪感もあります。でも、がんばって我慢して何も言いません。そんな心の葛藤が生まれるので、冒頭に述べた嫌~な気持ちになってしまうんですね。ちくしょー、ビアガーデンでも行ってビール浴びるように飲んで忘れてやるぜ~。

※ちなみに、今回の議論が当てはまるのはスクワット、ベンチプレス、デッドリフト、オリンピックリフト等のフォーム習得が比較的難しい多関節エクササイズだけです(いわゆるメインエクササイズとかコアエクササイズとして実施されるようなもの)。バーベルカールとかラットプルダウンのようなアシスタンスエクササイズに関しては、いきなり高レップ数で実施してもいいと思います。もちろんアシスタンスエクササイズでもフォームに問題があって高レップ実施するとフォームが崩れるようであればレップ数を少なくするのもありでしょう。

※さらにちなみに、私がS&Cプログラムを作る場合、初心者でなくてもセットあたりのレップ数は基本的にあまり多くしません。5回とか3回とかが多いです。量が必要ならセット数を増やします。例外として、オフシーズン初期でいわゆる「身体を作る」時期(解剖学的適応期とか呼ばれることもあります)や筋肥大を目的とする場合はレップ数を多めにします。

 

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【編集後記】

という事で、今回は少し辛口だったかもしれません。甘いものでも食べてお口直しして下さい。ちなみに私のオススメはTim Tamというオーストラリアのチョコのお菓子です。いろいろな味の種類があるのですが、私は断然double coatがオススメです!!