いやゆるクイックリフトと呼ばれるエクササイズ群があります。ウエイトリフティングのクリーン&ジャークとスナッチ、そしてそのバリエーションの総称です。その中にハイプルと呼ばれるものがあります。開始姿勢は色々あり(例:床から、膝下から)、グリップも一般的にクリーン幅とスナッチ幅の2種類あるので、その組み合わせはいろいろ考えられます。
とりあえず、フルエクステンションをした後にバーベルが高く上がってきて、でもキャッチはしないバージョンのクリックリフトと考えてみて下さい(う~ん、下手な説明だ・・・)。参考までに下の動画(床からのスナッチハイプル)をご覧ください。百聞は一見にしかず!!
ウエイトリフター以外のアスリートがハイプルをする時のリスク
多くのウエイトリフターが練習の一部にハイプルを取り入れているので、ウエイトリフティングの練習バリエーションとしては有効なエクササイズなのでしょう。しかし、ウエイトリフター以外のアスリートが筋パワーや爆発的筋力を向上させるためにハイプルを取り入れるのは注意が必要だと個人的には思います。なぜなら、ハイプルではバーを高く引き上げるために腕を使ってバーを引く癖がつく可能性があるからです。特にクリックリフト初心者にはその危険性が高いと思います。
クイックリフトでは、腕を伸ばしたままフルエクステンションをする事が重要です。フルエクステンションが達成される前に腕が曲がってしまうと、下肢で発揮された力やパワーがバーにしっかりと伝わらないからです。
この基本がマスターできていないアスリートにハイプルを実施させようとすると、フルエクステンションの前に腕が曲がってしまい、腕の力でバーを持ち上げようとするケースが多いです。さらに、(特に股関節の)フルエクステンションそのものが達成されず、胸でバーを迎えに行ってしまうという事になりがちです。上記の動画では、胸でバーを迎えに行っているように見えるかもしれませんが、スロー再生をよ〜く見てみると、しっかりと腕を伸ばしたままフルエクステンションが達成されて、その後バーがその勢いで浮き上がってきているのがよくわかります。動きが早すぎてそうは見えないかもしれませんが、決して腕の力で挙げているのではありません。っていうか腕の力であんな重さ挙げられません(下半身の力を使っても普通あんな重さ挙げられないけど・・・)。
私がオーストラリアウエイトリフティング連盟が主催しているSports Power Coach 1というコースを受講した際には、ハイプルは禁止と教えられました。上記のリスクがあるためです。このリスクは決して机上の空論ではなく、実際にハイプルを教えられたアスリートが腕の力を使ってバーを持ち上げる癖がついているのを何度も目撃した事があります。その多くの場合、アスリートはいつまでたっても軽い重量しか扱えていません。腕の力で挙げているからです。こうした理由から私は個人的にハイプルは一切教えません。
ハイプルは絶対にやっちゃダメ?
「でも上記の動画でも見られるように、ウエイトリフターは適切なフォームでハイプルを実施しているし、トレーニングの一部として普通にハイプルやってるじゃない?だったらハイプル自体が悪いのじゃなくて、ハイプルを適切なフォームで実施できない事が悪いんじゃないの?」という意見をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。まったくおっしゃる通りです。
適切なフォームで実施できるのであればハイプルにはなんの問題もないですし、ハイプルに対して私的な恨みがあるわけでもありません(ハイプルに彼女を寝取られたとかいう事もございません)。実際に、ハイプルを適切に指導されていて変な癖をつけずに正しいフォームをアスリートに習得させているS&Cコーチも知っています。ただし、それは非常に珍しいケースですが。
なのでハイプルを絶対にやっちゃダメとは思いません。やってもいいです。ただ、しっかりと正しいフォームで実施できるのであればという条件つきです。
まとめ
今日は早めにまとめに入ります。
- クイックリフトに習熟していないアスリートにハイプルをやらせると悪い癖(例:腕でバーを持ち上げる、フルエクステンションが達成されない)がつく危険性がある
- でも、適切なフォームで実施されるハイプルには何の問題もない
- なので、適切なフォームを指導できるのであればハイプルをやらせてもOK
- でも、変な癖をつけずにハイプルを実施させてクイックリフトの適切なフォームを習得させるスキルや自信がないのであれば、ハイプルは禁止したほうが良い
- 私は自信がないのでアスリートにハイプルはやらせません
以上!!
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