#309 ウエイトトレーニングの挙上重量が伸びるスピードはエクササイズによって違う(動員される筋線維の数が違うから)

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ウエイトトレーニングにおいては漸進性過負荷の原則にもとづいて、少しずつ挙上重量を増やしていくことが重要です。

しかし、挙上重量が増えるスピードはエクササイズによって異なるので、その点を考慮したうえで適切な漸進スピードを選択しないといけません。

 

 

エクササイズによる違い

一般論として、スクワットやデッドリフトのように高重量を扱える下半身の多関節エクササイズ、特に臀部や太もも等の大きな筋群を動員するようなエクササイズにおいては、挙上重量が伸びるスピードが速い傾向があります。一方で、バーベルカールやサイドレイズ等の上半身の単関節エクササイズ、特に小さな筋群を動員するようなエクササイズにおいては、挙上重量が伸びるスピードが遅い傾向があります。

たとえば、スクワットとバーベルカールを同じ相対的強度、同じレップ数・セット数、同じ頻度で実施したとしても、スクワットは挙上重量が1週間で5kgずつ増えていくのに、バーベルカールでは挙上重量を5kg増やすのに8週間かかるとか。※数字はテキトーです

 

 

なぜ挙上重量が増えるスピードがエクササイズによって違うのか?

エクササイズによって挙上重量が増えるスピードが異なる理由はズバリ「動員される筋線維の数」です。

多関節エクササイズは複数の筋群が動員されるので、結果として動員される筋線維の総数は単関節エクササイズよりも多くなります。また、臀部や太もも等の筋群は1つ1つが大きい(=筋線維数が多い)ので、それらを動員する下半身エクササイズにおいては、小さな筋群を動員する上半身エクササイズよりも、動員される筋線維の総数が多くなります。

仮に、同じ強度・量・頻度でトレーニング刺激を与えた場合に、筋線維1本の筋力発揮能力が向上するスピードが一定であると仮定すると、エクササイズ中に動員される筋線維の総数が多いほうが、挙上重量が増えるスピードの絶対値は大きくなるはずです。

たとえば、トレーニングをすると筋線維1本あたりの筋力発揮能力が1週間で1g増えるとします(正確に言うとgグラムは質量の単位なので力の単位ではないですが、ここでは1gの物体を持ち挙げる能力として捉えて下さい)。すると、動員される筋線維の総数が5000本の下半身多関節エクササイズにおいては、挙上重量のポテンシャルが週に5kg増えることになります。

一方、動員される筋線維の総数が500本の上半身単関節エクササイズにおいては、挙上重量のポテンシャルが週に500gまたは0.5kgしか伸びないことになります。※数字はテキトーです

実際は筋の発火のタイミングも違うし、筋群のレバーレッジや筋線維の走行方向等の条件によって挙上重量への貢献度も変わるので、そこまで単純な話ではないのですが、私の言わんとすることは分かって頂けると思います。

 

 

まとめ

挙上重量の増えるスピードが、エクササイズによって(つまり動員される筋線維の総数によって)異なる、という点をS&Cコーチとしては理解しておいて、適切な挙上重量の漸進をアスリートに指示してあげるのが大切です。また、「◯◯(上半身の小さな筋群を使うエクササイズ)の挙上重量がなかなか伸びないな〜」と言っているアスリートがいたら、「使われる筋肉の大きさによって挙上重量の伸びるスピードは違うんだよ〜」と伝えてあげて、不安を取り除いてあげるのも良いかもしれません。

 

 

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【編集後記】

学術雑誌The Journal of Strength and Conditioning Researchに投稿された論文の査読を1本終わらせました。やった研究の内容は良いものでしたが、論文の書き方の部分がイマイチでした。こういう場合は、査読者としては少し時間もかかるし面倒くさいのですが、たくさん査読コメントを返して論文の質を上げるための手助けをしてあげるように努力しています。せっかくの良いデータは世に出して欲しいので。でも、ここまでやって貢献したら、査読者の名前も著者と同じく論文に掲載してもらいたいもんだ・・・。そういう学術雑誌も出てきているらしいけど。