#504 S&Cコーチの役割は「触媒」にすぎないけど、より良い「触媒」を目指していきたい

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やる気のないアスリートを変えるのは難しい

昨日は大宮で「S&Cコーチとして押さえておきたい考え方」セミナーを開催しました。

質疑応答の時間に、「トレーニングの意義について理解していない(疑いを持っている)アスリートに対して、どう対応したらよいのか?」という主旨の質問がありました。

 

昨日のセミナーの内容が「そもそもアスリートはなぜトレーニングをするのか」ということが中心だったので、私がお話した内容をアスリートに説明してもらうのがベストな解決策かな〜と考えました。

しかし、人間は感情の生き物なので、どれだけわかりやすく論理的に説明したところで、トレーニングをやる気がないアスリートはそんなに簡単に変わらないものです。

だから、「やる気がないアスリートはコチラが何を言ってもやる気がないものです。しょうがないです。本人が自分でやる気を出すまで待つしかありません。その間に、他のやる気のあるアスリートを精一杯指導して、そちらに結果を出してもらうよう努力しましょう。それを見てやる気を出すようになるかもしれないです。」程度の回答しかできませんでした。

 

もっと良い解決策を提示できればよかったのですが、私の経験上、やる気のないアスリートの気持ちを短期間で変えるのは無理です。

残念ながら・・・。

 

 

S&Cコーチの役割は「触媒」

私の信念として「S&Cコーチの役割は「触媒」にすぎない」という考え方があります。

「触媒」の意味をウィキペディアで調べてみると:

触媒(しょくばい)とは、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう Wikipedia

とあります。

 

私が、S&Cコーチの役割は「触媒」にすぎない、と言うときに当てはまるのは「特定の化学反応の反応速度を速める」という部分です。

後半の「自身は反応の前後で変化しない」というのは特に関係ありません。

つまり、S&Cコーチの役割は、「アスリートが自らの能力を伸ばす」という化学反応を助けるにすぎないということです。

 

「触媒」は化学反応を作り上げることはできません。

もともと存在している化学反応の反応速度を速めるのを手伝うだけです。

S&Cコーチも一緒で、自らの能力を伸ばそうと努力するアスリートがそもそも存在しなければ、なにもできません。

トレーニングをやる気のないアスリートのやる気を出してあげることも非常に難しいです。

 

その一方で、もともと自らの能力を伸ばそうと努力できるアスリートや、トレーニングをやる気のあるアスリートに対しては、S&Cコーチとしての専門性を活かして、適切なトレーニングプログラムやコーチングを提供することで、アスリートが能力を伸ばすお手伝いをすることは可能です。

たとえ、アスリート自身にやる気があったとしても、間違ったやり方でトレーニングをしていたら、パフォーマンスを向上するという「化学反応」は遅いままです。

そこで、専門家であるS&Cコーチが、アスリートのやる気を適切な方向に導く手助けをすることで、この「化学反応」を速めることができる。

そう私は考えています。

 

同じような考え方を表現している英語のことわざも紹介しておきます:

You can lead a horse to water, but you cannot make him drink

(馬を水の所まで連れていっても水を飲ませることはできない 《自分でやる気のない人はどんなに指導しようとしてもだめだ》) weblio英和辞典・和英辞典

 

 

これまでの目撃してきた両極端のアスリート

私がこのような考え方に至った背景として、両極端のタイプのアスリートを目撃してきた経験があります。

  • ①まったくトレーニングをやる気がないアスリート
  • ②こちらが言わなくてもやる気があるアスリート

 

①まったくトレーニングをやる気がないアスリート

そもそも本人はトレーニングをやる気がないのに、チーム全体の方針に嫌々従っているだけのアスリートや、コーチに無理やりトレーニングをやらされているアスリートのトレーニング指導を経験してきました。

最初はやる気がなくても、なぜアスリートがトレーニングをする必要があるのか、どのようなメリットがあるのか等々を説明すれば、がんばってトレーニングに取り組むようになってくれるアスリートもいました。

しかし、どれだけ説明しても、トレーニングやらないとやばいよと脅しても、やる気がまったくでないアスリートもいました。

そういうアスリートを目撃してきて思ったのは、周りがあーだこーだ言っても無駄だなということです。

「トレーニングをやらなきゃ」と本人が自分で思うようにならない限りはどうしようもないと悟りました。

 

 

②こちらが言わなくてもやる気があるアスリート

その一方で、トレーニングに対してやる気があり、こちらがあーだこーだ言う必要が一切ないアスリートもいました。

たとえばそういうアスリートの場合、とあるトレーニングセッション中にうまくできない動きがあったとしても、次のトレーニングセッションにおいては急にできるようになっているというケースが多々あります。

何もしないで急にできるようになるわけがないので、明らかに自分で一生懸命取り組んできているのです。

こちらもプロなので、そういうのを見れば「お、これは、前回のセッションの後に、1人で一生懸命やってきたな!」とわかります。ちょっと感動します。

それと同時に、やっぱりアスリートって本来はこういうもんだろうとも思います。

そういうアスリートは、まったく同じトレーニングをやっていても、伸びる速度が速いです。

S&Cコーチとして、指導をしていてやりがいがありますし、より良い指導を提供せねばという気持ちにもさせてくれます。

 

 

まとめ

S&Cコーチは「触媒」にすぎない、と達観しつつも、より良い触媒になろうという努力を怠らない。

それが私の目指すS&Cコーチです。

そう考えておけば、担当しているアスリートが有名だったりスターだったり結果を出したりしたからといって、自分のおかげだなんて勘違いすることもなくなるでしょう。

それは単純に、触媒として恵まれた化学反応に出会えただけのことなんですから。

 

 

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【編集後記】 

本日、確定申告書類を郵送しました。

初めての経験でしたが、コツコツと取り組んできたので、思ったほど大変ではありませんでした。