Velocity Based Training(VBT)とは?
「Velocity Based Training(VBT)」なるものが流行っています。
VBTを大雑把に説明すると「Linear position transducer(LPT)や加速度計のようなテクノロジーを使い、ウエイトトレーニング中の速度やパワー等を計測し、そのデータを活用しましょう」というものです。
たとえば、爆発的パワー向上を狙ったトレーニングを実施する時に、1セットあたりのレップ数を事前に決めずに、毎レップの挙上速度をモニターしながら、疲労によって挙上速度が低下してきたら、そこでそのセットを終了にするとか。
あるいは、毎レップの挙上速度を計測しておいて、1セット終わった時点でセット平均速度を確認して、目標とする速度よりも遅かったら次のセットでは重量を減らすとか。
最近は、比較的安価で手に入るLPTや加速度計が増えてきて、スマートフォンやタブレット端末のアプリを使って容易にデータ計測ができるようになってきたこともあり、VBTに関する記事や実際に使っている人を見かけることも多くなってきました。
先日参加した国際ストレングストレーニング学会においても、VBT関連商品を紹介している企業のブースが数多く見られました。
VBTは理論的には良い方法になりうる
以前のブログでも書いたのですが、爆発的パワー向上を狙ったトレーニングを実施する時には、比較的軽めの重量を爆発的に挙上するような方法を用いることがあります。
その場合、アスリートに全力でパワーを発揮してもらうのが重要になるのですが、パワー発揮は目に見えません。
そこで、テクノロジーを用いてパワー発揮(あるいは挙上速度)を見える化(数値化)することには、以下のような利点があります:
- アスリートの努力度を確認できる
- アスリートのモチベーションUPに繋がる
したがって、テクノロジーの発展とともに「いちいち一人一人、毎レップ計測するのが面倒くさい」という問題点が改善されてくれば、VBTを日常のトレーニングに活用することには、理論的には大きな可能性が存在します。
まずは正しいフォームを身につけるのが優先なんじゃない?
理論的にはVBTは面白いアイデアですし、テクノロジーの発展とともに、今後はさらに実用的になっていくでしょう。
しかし、その一方で、私は懸念を抱いています。
それは、VBTを活用しているアスリートのエクササイズフォームがメチャメチャなことが多いということです。
これは、ネット上の動画で目にしたり、直接目にしたりの感想です。
以前から本ブログでも強調していますが、私は正しいフォームでエクササイズを実施することが何よりも大切だと考えています。
トレーニングによるケガや痛みを防ぎ、健康的に体力強化を図るために、そして、最大限のトレーニング効果を引き出すためには、正しいフォームでエクササイズを実施することが、重い重量を持ち挙げることよりも、より大きなパワー発揮をすることよりも、重要であると考えています。
正しいフォームが身についているアスリートに対してVBTを適用するのは大いに結構です。
しかし、正しいフォームが身についていないアスリートに対しては、VBTなんかよりも正しいフォームの習得を優先させるべきです。
また、VBTでパワーや速度をフィードバックすることで、パワーや速度を意識しすぎてしまい、それがフォームの崩れに繋がるリスクも捨てきれません。
ハイテク機器を使っていると最先端の科学的トレーニングをやらせているように見えるかもしれませんが、アスリートのフォームがヒドイようであれば、そんなS&Cコーチはニセモノです。
ハイテク機器を使って自分の能力の無さを隠しているだけです。
» 参考: 「ハイテクトレーニング」と「科学的トレーニング」を混同するな!
まとめ
繰り返しますが、VBTのコンセプトは理論的には面白いです。
オーストラリア大学院留学時代の私の恩師であるDr. Rob Newtonは、10年以上前からVBTができるソフトウェア(Ballistic Measurement System)を開発していましたし。
しかし、優先順位としては、正しいフォームの習得のほうが、はるかに上です。
そこを勘違いしないようにしましょう。
そして、正しいフォームを指導する自信がないS&Cコーチがいるのであれば、ハイテク機器を使って自らの能力の無さをごまかすのではなく、まずは指導能力を磨く努力をしてください。
2019/2/2追記:以下の記事も合わせて読んでいただくと、さらに理解が深まります。
#441 ウエイトトレーニングのコンセントリック局面で「爆発的に素早く」挙げましょう!と以前は主張していたけど、考えが少し変わりました
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【編集後記】
冬のボーナスが出ました。
来年度からは個人事業主になるので、もしかしたら人生で最後のボーナス・・・。
大切に貯金します!