先日読んだ以下のツイートに共感を覚えました。
練習まで時間あるのでのんびり☕️
「どうやったら卓球強くなりますか?この技術はどうやったら上手くなりますか?◯◯はどうやったらできるようになりますか?」って人生で1番質問されてる俺の嫌いなワードですから答えます。「1万時間練習してから質問しに来てください」
近道なんてない✋ pic.twitter.com/uKnUq4JWVE— 水谷隼 (@Mizutani__Jun)
卓球の水谷選手のツイートです。
あれだけ実力があって、実績もあるアスリートの言葉なので、重みがありますね。
でも、スーパースターの発言でも、わけのわからないものはわけがわからないので、結局は誰が言ったかではなく何を言ったか、が重要なんでしょう。
そして、このツイートは、その内容がとても共感できるものだったということです。
スポーツがうまくなりたいなら、練習をやらないとダメ。それも、うんとたくさん。
私の肩書は「S&Cコーチ」です。
トレーニングによる体力強化を通じて、アスリートのパフォーマンス向上をサポートする専門家です。
で、アスリートから「〇〇の技術がうまくなりたいので、〇〇を向上させるトレーニングを教えてください」と言われることが度々あります。
こういう質問って、結構困るんです。
なんて答えたらいいかな〜って。
こんなことを言ったら元も子もないですが、トレーニングをしてもスポーツはうまくならないです。
スポーツがうまくなりたいなら、練習をやらないとダメです。それも、うんとたくさん。
水谷選手がツイートでビシッと言ってくれたとおりです。
実際、そういうリクエストをくれたアスリートに「〇〇の動きの練習はどれくらいやってるの?」と尋ねると、「少ししかやってないです」という答えが返ってくることが多いです。
〇〇がうまくなりたい、とか、〇〇ができるようになりたい、と考えているアスリートにとって、〇〇は難しい動きのはずです。
それなのに、死ぬほど練習もしないで〇〇がうまくできるようになるわけないじゃないですか!
「1万時間練習してから質問しに来てください」と私も言いたいくらいです(言わないけど)。
ぜんぜん練習もしていないのに、ちょっとトレーニングしただけで、自然に〇〇が上達したりできるようになるはずがありません。
トレーニングは魔法ではないのですから。
だから、〇〇がうまくなりたい、とか、〇〇ができるようになりたいと悩んでいるアスリートは、まずは死ぬほど練習してください。
それも、ただ動きを繰り返すだけでなく、頭を使って考えて工夫しながら練習してください。
トレーニングやっても、スポーツはうまくならないのか?
こんなことを言うと、必ず反論をいただきます。「じゃあ、トレーニングやっても意味ないの?」と。
意味ないことはありません。
トレーニングをやることで、「間接的に」スポーツがうまくなることをサポートすることができます。
スポーツがうまくなるために、トレーニングが果たすことのできる役割は大きく2つあります:
- ①より高い強度でより多くの練習をできるようになる
- ②体力不足が原因で〇〇ができない場合、そのボトルネックを取り除くことができる
①より高い強度でより多くの練習をできるようになる
トレーニングをすることで、「ケガのしづらい身体づくり」をすることができます。
そして、ケガをしなければ、練習をよりたくさんできるようになります。
また、トレーニングをして筋力や持久力を向上させれば、より高い強度での練習を繰り返すことができるようになります。
つまり、スポーツがうまくなるためには練習をやることが必須ですが、トレーニングをすることで、その練習の質と量を高めることができるのです。
②体力不足が原因で〇〇ができない場合、そのボトルネックを取り除くことができる
スポーツにおける特定の動きを実施するためには、最低限の筋力や柔軟性が必要になる場合があります。
もし、アスリートがその最低限の体力レベルを有していないのであれば、たとえ死ぬほど練習をしたとしても、その動きを習得することは難しいでしょう。
つまり、体力不足が「ボトルネック」になっている場合があるのです。
そういうケースにおいては、練習とはべつにトレーニングを実施して、筋力や柔軟性等を効率よく向上させることができれば、ボトルネックを取り除くことができます。
ただし、その動きを実施するのに必要な体力を手に入れて、ボトルネックがなくなったからといって、自動的にその動きができるようになるわけではありません。
やはり結局のところは、練習をたくさんやらないとうまくはなりません。
まとめ
トレーニングしてもスポーツはうまくならない。うまくなるためには、練習をたくさんやらないとダメ。でも、トレーニングをやると練習の効果がでるのを手助けすることができる。
というのが、トレーニング指導の専門家の立場から、私がアスリートに伝えたいことです。
で、こんなことを主張すると「S&Cコーチは体力の向上は手助けするけど、それを競技力向上に結びつけるのは競技コーチとアスリートの責任だと河森は言っているのか!無責任だ!」とかいう的外れな批判をしてくる人がいます。
ハッキリ言っておきます。
スポーツがうまくなるために、頭を使って工夫しながらたくさん練習をするのは、アスリート自身と競技コーチの責任です。S&Cコーチの責任ではありません。
練習をしてくれないと、トレーニング「だけ」では、スポーツがうまくなることに貢献することは、私の立場ではできません。
それがS&Cコーチという立場の限界です。
自分の立場やその限界をわきまえず、中途半端に専門外のことに首を突っ込むことのほうが無責任だと私は思います。
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
娘が生まれて育児にも携わるようになると、仕事に使える時間が著しく減ることに気づきました。
短時間で集中して効率的に働く術を身に付ける必要がありますね。