継続してウエイトトレーニングを実施しているアスリートが、スケジュールの都合等でしばらく(2~3週間)まともにウエイトトレーニングができなくなるシチュエーションがたまにあります。
そんな時に耳にするのが「ウエイトトレーニングをやらないほうが疲れがなくて身体のキレがある気がします」というアスリートの意見です。
そういう場合、おそらくアスリートの心の中では「こんなんだったらウエイトトレーニングやらないほうがいいんじゃない?」という気持ちが芽生えて、ウエイトトレーニングをやる必要性に疑問を持ち始めているものと推測されます。
そんな経験をするアスリートに対して、トレーニング指導の専門家(S&Cコーチ)の立場から、私の意見をお伝えします。
ウエイトトレーニングやらないほうが身体のキレがある!?
そもそも、しばらくウエイトトレーニングを休止すると身体のキレが増すことはありうるのでしょうか?
この疑問に対する私の答えは「ありうる」です。
ただし、前提条件があります。
それは、ウエイトトレーニングを休止した時点で疲労が溜まっていることです。
継続してウエイトトレーニングを実施していれば筋力等は徐々に向上するはずですが、その一方で、疲労も溜まります。
これはしょうがありません。
この「筋力等の向上」というプラス面と「疲労蓄積」というマイナス面のバランスを探りながら、ウエイトトレーニングのタイミングや頻度、強度や量を調整するのが私のような専門家の役割です。
したがって、継続してウエイトトレーニングを実施しているアスリートの場合、疲労がある程度は溜まっている状態で練習等をこなしていることになります。
もちろん短期的に疲労の蓄積レベルは上下しますが、完全にゼロになることは考えづらく、疲労は多少は残っているはずです。
そのような状況でウエイトトレーニングを休止すると、溜まっていた疲労が次第に取り除かれていくので、一時的には身体のキレが増したように感じる可能性はあるでしょう。
短期的な効果 vs. 長期的な効果
だったら、そもそもウエイトトレーニングをやらなければ疲労が溜まることもないんだから、常に身体のキレがある状態で練習や試合にのぞめて、そっちのほうがいいんじゃないか?と思われるかもしれません。
残念ながら、ウエイトトレーニングを休止したことで身体のキレがUPしたと感じるのは一時的な現象で、長くは続かないでしょう。
短期的には、蓄積していた疲労が取り除かれるプラス効果が筋力等の低下というマイナス効果を上回るために、コンディションは上向くはずです。
しかし、長期的に考えると、ウエイトトレーニングを実施していたことで蓄積していた疲労はそのうちほぼ完全に取り除かれるので、その後は疲労の除去によるプラス効果は期待できなくなります。
その一方で、ウエイトトレーニングをやめたことで筋力等の低下は徐々に進んでいくため、マイナス効果のほうが大きくなっていきます。
したがって、ウエイトトレーニングを休止することで身体のキレが増すというのは短期的な効果としてはありうることですが、長期的に考えると体力低下というマイナスの影響が強くなり、むしろ継続してウエイトトレーニングを実施し続けたほうがより良いコンディションで練習や試合にのぞめる可能性が高まると考えられます。
まとめ
ウエイトトレーニングを休止したほうが身体のキレが増すと感じていて、目の前に重要な試合が迫っていて、その試合の後はしばらく試合がない、といった条件であれば、一時的にウエイトトレーニングを中止するのは選択肢としてはアリです。
一方で、毎週試合があるような状況が数ヶ月間も続くシーズン中であれば、目の前の試合によりよいコンディションでのぞむためにウエイトトレーニングを休止するよりも、目の前の試合には多少の疲労が残ったとしても、シーズンを通して筋力等の体力を維持または向上するためにウエイトトレーニングを継続する、という選択をとるほうが賢明です。
短期的な効果と長期的な効果を天秤にかけながら、その時点で最適なウエイトトレーニングのやり方を模索できるのが理想です。
アスリートとしては、現時点での自分のコンディションがよくなるものを選択したいと思うのはしょうがないかもしれませんが、そういう場合は、専門家の客観的なアドバイスも活用しながら、長期的な視点も取り入れてみてはいかがでしょうか?
※ちなみに、短期的 vs. 長期的な視点とか、トレーニングによる体力向上というプラス効果 vs. 疲労蓄積というマイナス効果といった考え方については、上で紹介した関連記事や拙著「ピーキングのためのテーパリング −狙った試合で最高のパフォーマンスを発揮するために−」で解説した「フィットネスー疲労理論」が参考になります。
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【編集後記】
オークリーのメガネを新調しました。
オークリーの曲線的なフレームに合わせるためのレンズ代が高く付きました。
でも、目の問題でコンタクトレンズの使用が難しいので、ほぼ毎日メガネをかけることを考えれば必要な投資です。