#883 「B.革新(制度設計)の詳細項目の追加発表」という資料を読んで

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最近、Bリーグから発表された「B.革新(制度設計)の詳細項目の追加発表」という資料を読み込んでいます。

とりあえずの感想をXでもつぶやきました。

 

今回のブログでは、この資料について、もう少し深くツッコんだ感想を書いていきたいと思います。

 

 

発表資料の背景

まず、こちらの資料は以下のリンクから誰でも読むことができます↓↓

https://www.bleague.jp/files/user/20241112bkakushin.pdf

 

こちらは「B.革新」についての資料です。

バスケのBリーグは現在、競技成績による昇降格制があるB1・B2・B3の三部リーグ制となっています。

2026-2027シーズンからは、競技成績による昇降格制を廃止し、事業規模などによってカテゴリ分けする大幅なリーグ構造改革を実施する予定になっており、それを「B.革新」と呼んでいます。

昇降格制の廃止以外にも、さまざまな変更が行われる予定で、それに関する資料が今回取り上げたものです。

 

この資料では

  • ①サラリーキャップ
  • ②オンザコート
  • ③選手流動性
  • ④ドラフト
  • ⑤カーディング
  • ⑥ポストシーズン

の6項目について説明されていますが、私のようなS&Cコーチにとって興味深いのが「④ドラフト」に関わる部分なので、そこにフォーカスしてお話をします。

 

 

AT2名+S&Cコーチ1名が最低条件に!?

「ドラフト」の項目のなかでも、とくに「②練習環境部分更新情報」がS&Cコーチに関連する部分です。

資料の13~14ページを読んでみると、これまでは各チームでアスレチックトレーナー(AT)を1名雇うことが求められていたのが、「B.革新」により各チームでATを2名+S&Cコーチを1名雇うことが求められるようになる、と解釈することができます。

つまり、これまではATとして1名だけ雇って、その人にATとS&Cコーチの仕事を両方押し付けることもできていたのが、「B.革新」以降はできなくなる、ということです。

本ブログの冒頭で引用したX投稿で指摘したのは、まさにこの部分です。

 

私はもともと「ATとS&Cコーチの兼任は無理」という立場なので、たまに見かける「AT兼S&Cコーチ」みたいな肩書を持った人が一掃されるのは喜ばしいことだと考えています。

なぜ兼任が無理なのか、については、ATCの藤橋さんが上手にまとめてくださっているので、そちらをお読みください↓↓

 

おそらく、これまで兼任してしまう人がいた理由は、チーム側と受け入れてしまう側の両方にあったはずです。

チーム側の理由としては、「予算がないからできれば一人で両方やってもらいたい」という期待と、「ATとS&Cコーチは別の仕事であり兼任は不可能である」という認識の欠如があったのだろうと推測されます。

しかし、そのような理由で兼任オファーを出されたときに、専門家側が受け入れてしまっていたことのほうが大きな問題です。

だって、たとえチームから兼任オファーをされても、専門家側が断ればいいだけですから。

それなのに、「プロチームでどうしても働きたいから」という個人的な想いを優先する無責任な人や、そもそも「ATとS&Cコーチは別の仕事であり兼任は不可能である」ということすら理解できないほどレベルの低い人が兼任オファーを受けてしまっていた、という事実がこれまではあったわけです。

そして、実際にそういう人がいると、チーム側からも「なんだ、兼任できるんじゃん!!」と思われてしまい、「ATとS&Cコーチは別の仕事であり兼任は不可能である」という認識の欠如が改められることもなく、ATとS&Cコーチを別々に雇うための予算を確保することの優先順位が高まることもなくなってしまいます。

本当にいい迷惑です。

 

逆に考えると、現状のルール下でもATとS&Cコーチを別々に雇っているチームは素晴らしいですし、選手もスタッフもチームを選ぶときの基準の一つにしてほしいくらいです。

ただし、「あのチームはS&CコーチとATを別々に雇っているから、チーム強化に理解のある素晴らしいチームに違いない」みたいな評価の仕方は「B.革新」以降はできなくなります。

リーグのルールとして、AT2名+S&Cコーチ1名を雇うのが最低条件になるからです。

各チームにまかせていると、兼任する人は減らないでしょうから、リーグが主導してそのようなルールを決めてくれるのはありがたいことですし、個人的にもBリーグを応援したい気持ちです。

ATやS&Cコーチという職種に理解を示して、そこに予算も力も入れてくれているチームにとってみると、アピールポイントが減ってしまうかもしれませんが。

そこは、より優秀な専門家を招くとか、最低条件を超えるような人員を配置する等で、AT+S&Cコーチ部門のさらなる充実を図っていただき、チーム強化と選手のリクルートに繋げていただければありがたいです。

 

 

変革の理由

そもそも、なぜ「B.革新」においてAT2名+S&Cコーチ1名を最低条件にすることにしたのか?

推測にすぎませんが、この情報が「④ドラフト」の項目に書かれている、という事実の中に答えがあると思われます。

一見、ATやS&Cコーチ等の専門スタッフの人員配置というのは、ドラフトとはまったく関係ないことのように感じられます。

しかし、ドラフト制度を取り入れるということは、新人は自由にチームを選べなくなる、ということです。

「あそこのチームはAT+S&Cコーチ部門が充実していて、選手として成長できる環境が整っていそうだから入団したい」「あそこのチームはATが1名しかいなくて、S&Cコーチも兼任しているから入団したくない」みたいな選り好みができなくなるのです(そこまで考えている新人がどれだけいるかは不明ですが)。

新人からそのような自由を奪う代わりとして、ドラフトの結果どのチームに入団することになっても最低限の環境は整っているようにするのがBリーグの責務です。

その責務を果たすための一環として、AT2名+S&Cコーチ1名を最低条件にすることになったのではないか、というのが私の読みです。

実際、専門スタッフの人数だけでなく、保有資格や実績等の条件も厳しくなっており、それらも「ドラフトの結果どのチームに入団することになっても最低限の環境は整っているようにする」ことを目指した改正であると考えられます。

 

 

S&Cコーチに求められる資格や実績

ここからは資料の14ページに記載されている、S&Cコーチに求められる資格や実績の条件について触れていきます。

まず「(1) NSCA CSCS、NSCA CPT、CSCCA、JATI-ATI、JATI-AATIまたはJATI-SATIのいずれかの資格を保有していること」という条件があります。

CSCCAというのは、主にアメリカの大学スポーツでS&Cコーチをする人向けの資格で、それを持っている人は珍しいと思うので、ちょっと横においておきます。

残された資格を見てみると、ようするに「NSCAもしくはJATIの資格を持っておいてね」ということになります。

ただし、NSCAとJATIの資格だったらなんでもいい、というわけではなく、「(3) 2029-30シーズンより前1項規定の「NSCA CPT」「JATI-ATI」は対象外とする」と書かれているように、一部の資格は2029年以降は認められなくなるようです。

NSCAのCSCSは私もオススメしている資格ですが、取得するには大学卒業が必須なので、大学に行かずにBリーグのS&Cコーチになりたい場合は、JATIの上級資格を取得することが必要になりそうです。

私がJATIのHPで調べた限りでは、JATIの上級資格は大学を卒業していなくても実績を積んでいけば取得できるはずなので、大学に行かないとBリーグでS&Cコーチになる道が閉ざされるわけではないと思われます。

 

また、資格以外に実績についても「(2) B1B2リーグ、およびB.PREMIER、B.ONE、B.NEXTを含むトップリーグでのS&Cコーチ従事歴が3年以上あること。このとき、トップリーグが指すものは五輪種目であり日本を含む各国のトップカテゴリリーグとし、Bリーグが認めた者する。ただし、NCAAは特例的にこれに含む」という条件もあります。

今回、この資料を読んでいて、解釈がもっとも難しいな〜と感じたのがここの部分です。

私も最初軽く読んだときは、「ん?Bリーグで働くためにはBリーグで3年以上働いたことがないとダメってこと?それだと今Bリーグで働いている人だけが内部でぐるぐるとチームを移動するだけで、外部から新規の人が参入できなくなってしまうのでは?」と思いました。

ただし、何度も読んでみると、そうでもないかもしれない、と思い始めました。

解釈が難しいのは「B1B2リーグ、およびB.PREMIER、B.ONE、B.NEXTを含むトップリーグ」というのが何を指しているのか、です。

「トップリーグが指すものは五輪種目であり」とあるので、バスケ以外の競技のトップリーグでのS&Cコーチ従事歴もカウントされる可能性があります。

たとえば、サッカーのJリーグとか、バスケのSVリーグとか、ラグビーのリーグワンとか(野球は五輪種目?)。

それなら、多少は外部から新規の人が参入できる可能性はありそうです。

 

また、この14ページに記載されている条件は、各チームに最低条件として義務付けられている1名のS&Cコーチを雇う際に当てはまるものと考えられます。

条件を満たすS&Cコーチを1名雇ったうえで、プラスアルファでアシスタントS&Cコーチを雇う場合には、この条件は義務付けられない可能性が高いでしょう。

となると、この条件を満たさない場合は、まずはアシスタントS&CコーチとしてBリーグのチームに雇ってもらって、ヘッドS&Cコーチのもとで実績を積みながら、「S&Cコーチ従事歴が3年以上あること」という条件をクリアすることを目指すルートもでてくるかもしれません。

ただし、アシスタントS&Cコーチまで雇うBリーグチームは少ないでしょうから、このルートもなかなか厳しそうです。

 

あと、この条件は「PREMIER」と「ONE」というカテゴリーが対象なので、その対象外である「NEXT」のカテゴリーで実績を積んで「S&Cコーチ従事歴が3年以上あること」という条件をクリアする、というルートもありそうです。

しかし、「NEXT」のカテゴリーにはAT2名+S&Cコーチ1名という条件も当てはまらないので、そもそも「NEXT」のカテゴリーではS&Cコーチを雇うチームが少ないかもしれません。

となると、このルートも厳しそうです。

 

 

まとめ

最近、Bリーグから発表された「B.革新(制度設計)の詳細項目の追加発表」という資料を読んで考えたことをつれづれと書いてみました。

まだ、資料15ページの「練習場およびウェイトトレーニング施設規程」という項目には触れていないのですが、ちょっと思った以上の長文になってしまい疲れてしまったので、それには深く触れません。

過去にXで少し触れたので、そちらの投稿を貼り付けておきます↓↓

 

リーグ主導でS&Cコーチ最低1名の配置を各チームに義務付けてくれる、というのは、我々の業界からするとありがたいことです。

ぜひ、他のプロスポーツにも広がってほしいと思います。

おそらくバレーのSVリーグはライセンス制度等がBリーグに似ているので、今後Bリーグと同じような制度になっていく可能性は高いでしょう。

 

ただし、プロスポーツにおけるS&Cコーチの必要性が認識されて、その「イス」が増えるのはありがたい一方で、ドラフト制度導入との兼ね合いで「ドラフトの結果どのチームに入団することになっても最低限の環境は整っているようにする」ために、求められる資格や実績等の条件はこれまで以上に厳しくなりそうです。

とくに、新規で参入を目指すS&Cコーチにとってはハードルが高くなりそうなので、「どうしてもBリーグでS&Cコーチとして働きたい!」という方は、よく戦略を練ったうえで、資格取得や実績作りを進めていく必要があります。

 

個人的には、条件を厳しくするというのは、質を担保するためには必要だと思うし、その方向性には賛成です。

しかし、参入のハードルを高くしすぎて新陳代謝が起こりづらくなり、すでに中にいる人だけがぐるぐるとチームを移動するだけで既得権益化してしまうのはよろしくないので、そのあたりの良いバランスを見つけてほしいと思います。

とくに「(2) B1B2リーグ、およびB.PREMIER、B.ONE、B.NEXTを含むトップリーグでのS&Cコーチ従事歴が3年以上あること。このとき、トップリーグが指すものは五輪種目であり日本を含む各国のトップカテゴリリーグとし、Bリーグが認めた者する。ただし、NCAAは特例的にこれに含む」という条件は、ちょっと入口を狭めすぎているような気がします。

 

 

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