アスリートの身体的特徴はエクササイズフォームに影響を及ぼします。
体型が異なれば、正しいフォームの見た目もまた異なるのです。
相対的な身体的特徴が及ぼす影響
以前に「各セグメントの長さの比率」という身体的特徴が、スクワットのフォームに影響を及ぼすという話をしました。
たとえば、大腿部の長さが下腿部や体幹と比べて長いアスリートの場合、スクワットにおける上体の前傾が強くなりますよ、ということでした。
この場合、単純な意味での「大腿部の長さ」が問題なのではなくて、他のセグメントと比較した時の「相対的な長さ」が問題になります。
つまり、アスリートの身長が2mだろうが150cmだろうが、それは関係ないわけです。
あくまでも「相対的な」身体的特徴のお話ということです。
絶対的な身体的特徴が及ぼす影響
一方で、「絶対的な」身体的特徴(たとえば身長)がエクササイズフォームに影響を及ぼすケースもあります。
たとえば、デッドリフトやクリーン、スナッチ等でバーを床から引く時です。
一般的なバンパープレートの直径は45cmなので、バーを床から引こうとすると、バーの中心の高さは床から22.5cmです。
この高さは身長が2mだろうが150cmだろうが一緒です。
ということは、身長が2mのアスリートが床からバーを引く時は、身長が150cmのアスリートと比べて、開始姿勢においてより深くしゃがむ必要が出てくるということです(腕の長さによっても変わるので、あくまでも一般論です)。
この22.5cmという高さは、トレーニング効果の観点から特別な意味があってそう設定されているわけではありません。
単にバンパープレートの大きさがそのように作られているから、バーを床から引く時はみんな22.5cmの高さから引くことになる、というだけのことです。
だから、もし身長が高くて床から正しいフォームでバーを引くことができないアスリートがいたら、床から引くことにこだわる必要はありません。
バーをボックスやパワーラックのセーフティーバーの上に乗せて高さを上げたところから、引き始めればいいんです。
床から引くことにこだわって不適切なフォームでエクササイズをやらせるよりも、正しい開始姿勢をとれる高さからトレーニングさせてあげたほうが、はるかに健康的かつ効果的です。
もちろん、ウエイトリフティングやパワーリフティングを競技として実施しているアスリートの場合、ルール上みんな22.5cmの高さからバーを引かないといけないので、もうどうしようもありません。
背の高いウエイトリフターやパワーリフターは、自分の背の高さを恨みつつも、がんばるしかありません。
まとめ
身体的特徴がエクササイズのフォームに影響を及ぼす場合は、「相対的」と「絶対的」という2つの観点があることを知っておくと色々と役に立ちます。
実際は、その両方が複雑にからみ合って影響を及ぼすケースがほとんどですが、「相対的」と「絶対的」という考え方を知っていると、頭の中が整理されるでしょう。
ちなみに、私の経験上、バレーやバスケの選手のように極端に高身長でないかぎりは、ほとんどのアスリートは正しいフォームで床からバーを引くことができます。
できない場合は、身体的特徴の問題ではなく、柔軟性や筋力や身体の動かし方の問題であることがほとんどです。
だから、RDL等を事前に徹底的にやらせて柔軟性を確保しつつ正しいフォームを指導できれば、いずれは問題なく床から引けるようになるはずです。
「なんだよ、だったら絶対的な身体的特徴がエクササイズフォームに及ぼす影響なんて知らなくてもいいじゃん、気にしなくていいじゃん!」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、最終的にやることは同じであっても、そのような事実を知っている・認識しているのと知らないのとでは、大きな差があると私は思います。
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【編集後記】
日本バスケットボール学会の学会大会行きたかったな・・・。