論文や本を読んだり、セミナーに参加して話を聞いたり、ブログやSNSで情報を収集していると、さまざまなグラフを目にする機会があります。
そんなときに、ちょっとだけ気をつけておいたほうがよいことをシェアします。
とくに「棒グラフ」を見るときに当てはまる内容です。
棒グラフを見るときに注意すべき点
先日、ツイッター上でとある棒グラフを見かけたのですが、その表示の仕方があまり好きじゃないな〜と思い、つぶやきました。
元ツイートをここに埋め込むのはやめておきますが、それは下の図のような感じの棒グラフでした(あくまでもイメージ図です)。
この棒グラフを見て、違和感を持たれた読者はいるでしょうか?
もしかしたら、この棒グラフを見るだけだとそれほどおかしいと感じないかもしれませんが、このデータをもとに「AとBには大きな差がある」と主張されていたらどうでしょうか?
たしかに、ビジュアル的にはAとBの間には大きな差があるような印象を受けるかもしれません。
しかし、具体的な数字を見ると、その差はわずか2%です。
もちろん、2%という差が大きな意味を持つ場合もあるでしょうが、この棒グラフの表示の仕方だと、2%よりもはるかに大きな差があるように錯覚させてしまう恐れがあります。
だから、私はこういう棒グラフの表示の仕方は好きじゃないのです。
じゃあ、そもそもこの棒グラフの表示の仕方の何が問題なのでしょうか?
一言でいうと、データの目盛りを「ゼロ」始まりにしていないことです。
これだけだと「は?ゼロ始まりにしていないってどういうこと?」と思われる読者もいると思うので、逆にデータの目盛りを「ゼロ」始まりにしている表示の仕方を紹介します。
このグラフは、データとしては上で紹介したものとまったく同じものです。
どちらもAの数値が80%で、Bの数値が82%で、その差は2%です。
2つのグラフの違いは、データの目盛りが「ゼロ」始まりか否か、です。
まったく同じデータなのに、表示の仕方によって受ける印象がまったく異なることがわかっていただけるはずです。
棒グラフにおいてデータの目盛りを「ゼロ」始まりにしないとダメ?
棒グラフにおいて、データの目盛りを「ゼロ」始まりにしないとダメなのか?というのは、議論の余地があるところでしょう。
たとえば、データの性質によっては、「ゼロ」以外の数値から目盛りを始めるほうが適切である、というケースもあるかもしれません。
また、数字としては僅かな差だけど、実際には大きな意味を持つような差を強調するために、あえてデータの目盛りを「ゼロ」始まりにしないでグラフを作るのがプレゼンテクニックの1つだ、という考え方もあるでしょう。
私としては、どちらも完全に否定するところではありません。
ただ、データの目盛りの開始を任意に設定してよい、ということになってしまうと、発信者にとって都合の良いデータの見せ方をすることを許容してしまうことにもなります。
そもそも情報を発信する上で、グラフという形でデータや数字を提示するのは、客観的な根拠を示して、自分の主張の正当性を高める、という意図があるはずです。
それなのに、データの目盛りの開始を自分に都合よく変えてしまうというのは、データの客観性を歪めてしまう行為です。
だから、個人的には「あまり好きじゃないな〜」という感想を持つのです。
そういうグラフを見ると、「この人は、自分にとって都合よく見せるために、わざとデータの目盛りをゼロ始まりにしていないんじゃないか?」と疑ってしまいます。
でも、まあ、それで良いんだろうと思います。
データの目盛りがゼロ始まりになっていない棒グラフを見かけたときに、「あれ、ちょっとおかしいな」と違和感を持つことができて、注意してその発信者の主張を聞いたり読んだりすることができさえすれば。
情報の受け手側として、そういう注意をすることができるようになっておくことが重要です。
まとめ
普段から、棒グラフのデータの目盛りが「ゼロ」始まりになっているかどうかを注意して見ている読者にとっては、「そんなの当たり前だろ!」という内容でした。
しかし、今までそういう視点を持っていなかった方にとっては、参考になったはずです。
今回取り上げた「棒グラフ」に限らず、情報をインプットするときには、発信者の主張をそのまま受け入れるのではなく、「本当にそうなのかな?」と疑いながら慎重に見極めることが大切です。
そして、疑って見た上で、その情報を受け入れるかどうかを判断するためには、自分の頭で考えることが不可欠です。
思考停止に陥らずに、常に自分の頭で考える癖をつけたいものです。
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【編集後記】
ツイッターではつぶやいたのですが、トレーニング指導を担当させてもらっているフェンシングの見延選手が世界選手権個人戦で銀メダルを獲得されました!!
結構スゴイことなんですが、思ったよりも大きく報道されないのが悔しいところです・・・。
東京オリンピック団体戦で金メダルを獲得したときとは大違いです。
やっぱりオリンピックの注目度は桁違いなんだな〜と改めて感じました。