本ブログをお読み頂いている方には伝わっているかもしれませんが、実は私、「スポーツ動作に特異的なエクササイズ」とかいうものが大嫌いです。
そんなトレーニングをしても効果が出るわけないし、逆に技術に悪影響を及ぼしたりケガや痛みに繋がったりするリスクが大きいからやるべきではないと考えています。
ある程度の知識やまともな脳ミソを持った人が少し考えれば、私と同じ意見になるはずです。
だから、恥ずかしげもなく堂々とそんなトレーニングを宣伝している人たちがいることが不思議でなりませんでした。
なぜダークサイドに落ちてしまう人がそんなにたくさんいるのだろうと・・・。
なぜダークサイドに落ちるのか?
しかし、先日アスリートと話をしていて、「あ、こういう時にダークサイドに落ちちゃう人がいるのかな?」と感じた瞬間がありました。
それは、アスリートから「◯◯の動きが最近良くないから改善したいんですけど、どういうトレーニングをしたらいいですか?」と言われた時です。
私の場合、そういう話をされたら、まずは「その動きの練習はどのくらいやっていますか?」と尋ねます。
で、多くの場合「それほど練習をしていない」という答えが返ってくるので、それに対して
- ◯◯の動きを改善したいなら、◯◯の練習をたくさんやるべき
- トレーニングはあくまで補強であって、練習の代わりにはなり得ない
- トレーニングをして体力を上げることで、より高い質でより多くの練習を繰り返すことができるようになる
- トレーニングによって体力が向上しても、それが直接パフォーマンス向上に結びつくわけでなく、たくさん練習をすることでトレーニング効果の転移(コチラやコチラ参照)が起こって初めてパフォーマンス向上に繋がる
といったことを説明して、納得してもらうようにします。
そのうえで私が実施させるトレーニングは、やはりスポーツ動作に似せたなものではなく、ベーシックなエクササイズが中心となります。
一方、知識が不足していたりS&Cコーチとしての自分の能力に自信がない場合、上記のような対応ができない可能性は十分考えられます。
その結果、「じゃあ◯◯の動きに特化したエクササイズをやろう!」という安易な選択をする可能性があることも想像がつきます。
そっちのほうがラクチンですから。
アスリートの立場から考えても、「◯◯の動きを向上させるトレーニングを教えて欲しい」とリクエストをして、その◯◯に動きの似たトレーニングをやらせてもらえば、◯◯の改善を図っている気持ちにもなるでしょう。
しかし、そんな安易な選択をして一時的にアスリートを満足させることができたとしても、長期的にみたらアスリートの足を引っ張ることになるので、絶対にそんなダークサイドに落ちてはいけません!
トレーニング効果(それがポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ)が出るには時間がかかるし、パフォーマンス向上あるいは低下にトレーニングがどれほど貢献しているかを評価することは非常に難しいので、「スポーツ動作に特異的なエクササイズ」という安易で間違った選択をしてもそれがバレづらいというのはあるかもしれません(これがこの業界の問題だと思うのですが・・・)。
しかし、それに甘えて何の根拠もないテキトーなトレーニングをアスリートにやらせて、アスリートは満足しているからそれでOKなんて思っている人がいたら許せません!
無責任すぎます!
どうすればダークサイドに落ちないか?
ダークサイドに落ちずに適切なトレーニングをアスリートに提供するためには、何が必要かを考えてみました:
- ①「特異的なトレーニングは効果がないどころか逆効果だ!」と自信を持って言えるだけの圧倒的な知識を身に付ける
- ②ベーシックなエクササイズを中心にトレーニング指導をして十分な結果を出すだけの圧倒的な指導力を身に付ける
- ③アスリートを一時的に満足させて自分の立場を守るという非倫理的な選択をしないだけの圧倒的な責任感を身に付ける
まとめ
ということで、「ダークサイドに落ちるのは知識も指導力も責任感もない人だ!」というのが私の結論です。
そんな人にならないように、常に責任感を持って自分自身の知識と指導力を向上させていきましょう!
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【編集後記】
たまっていた論文査読のもう1つをやっつけました。
こちらもクオリティーが低く、一発で「reject」とさせて頂きました。
いろいろと査読を務めていても、なかなかクオリティーの高い論文に巡りあうことは少ないな〜というのが実感です。