筋トレ中のエクササイズ実施順序が筋力向上と筋肥大に及ぼす影響
ちょっと固い感じのタイトルになりましたが、このテーマについてmeta-analysisを実施したレビュー論文が発表されました。
要点を簡単にまとめると:
- エクササイズ実施順序は筋力向上効果に影響を及ぼす
- セッション最初に実施されるエクササイズのほうが後に実施されるエクササイズよりも大きな筋力向上効果を示す
- 筋肥大に関しては、エクササイズ実施順序の影響は確認されず
という感じです。
ウエイトトレーニング経験者にとっては、なんとなく「そうだろうな〜」と思っていたことが“ある程度は”科学的にも確認されたという程度のお話かもしれません。
つまり、セッションの最初は、疲労のないフレッシュな状態でエクササイズを実施でき、セッション後半では疲労が蓄積した状態でエクササイズを実施することになるので、先に実施したエクササイズにおけるトレーニング効果のほうが大きくなるだろうな〜、ということです。
まあ、この点については新しい発見はないですし、「しょせん研究は現場でやっていることの後追いだ」と言われても「はい、そのとおりです」としか返事のしようがありません。
それでも、場合によっては、現場でやられていることを研究が後追いで確認したら間違っていた、なんてこともあるので、現場では当たり前と思われることを科学的に確認することには意義があると思います。
もともと、向上させたいエクササイズや重要度の高いエクササイズをセッションの最初のほうに配置していた場合は、今回紹介したレビュー論文を読んだからといって、その行動に変化を及ぼすことはないでしょうが、より自信を持ってそれが実施できるようになるだけでも、意味はあるはずです。
ちなみに、「“ある程度は”科学的に確認された」という言い方をしたのは、筋力向上効果については予想どおりかもしれない一方で、筋肥大に関してはエクササイズ実施順序の影響がないというのは、少し予想とは違うかもしれなかったからです。
とはいえ、このmeta-analysisに含まれた研究におけるトレーニング実施期間は、平均で9週間程度に過ぎないので、エクササイズ実施順序が筋肥大に影響を及ぼして、その差がはっきりと見えるようになるには期間が短すぎただけかもしれません。
筋肥大は時間がかかるので。
したがって、もっと長い期間(例:6ヶ月)同様の研究を実施していたら、筋肥大においてもエクササイズ実施順序の影響が見られたかもしれません(もちろん、見られない可能性もあります)。
その点は頭の片隅に入れた上で、今回紹介したレビュー論文の結果を理解しておいたほうがいいでしょう。
レビュー論文の発見の現場での使い方
どちらにしても、このレビュー論文を読む限りでは、最も重要なエクササイズや最も向上させたいエクササイズをセッションの最初に配置したほうがいいのは間違いなさそうです。
理屈で考えてもそのはずだし、科学的にもそれを支持するデータがあるということなので。
そうした知識を持ったうえで、あとは「じゃあ、目の前のアスリートにとって、どのエクササイズを優先すべきなのか?」を見極めることがS&Cコーチに求められます。
これは科学というよりもアートの部分であり、S&Cコーチとしての「腕」が試されるところでもあります。
一般論としては、単関節エクササイズよりも多関節エクササイズ、上半身エクササイズよりも下半身エクササイズ、を先に実施することが多いかもしれませんが、その一般論を自信を持って捨て去るだけの確固たる理由があるのであれば、単関節エクササイズや上半身エクササイズを先にやったほうが目標達成には近づくはずです。
まとめ
今回紹介したレビュー論文の内容は、それほどセンセーショナルで興奮するようなものではないかもしれません。
でも、科学的知見にもとづくトレーニングとかトレーニング指導というのは、こういう地味な知識を積み上げていくのがとても重要です。
セクシーである必要なんて、まったくありません。
自分のためではなく、指導対象者のためだと思って、地味な作業を積み重ねて、よりベターなトレーニングを提供するための努力を継続しましょう。
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【編集後記】
昨日、確定申告をしました。やはり、自ら「プチ育休期間」と定めて仕事量を抑えていたので、売上は少し落ちました。
振り返ってみると、仕事のために外出する機会も極端に少なくなり、しょっちゅう家にいたわりには、それほど売上が落ちなかったな〜という印象です。収入源を分散するよう意識してきた成果かもしれません。
収入源を分散するというのは、子供が産まれたときだけでなく、今回の新型コロナの感染が広がるような状況に対する備えにもなるので、フリーランスとして活動されている方には強くオススメします。
「S&Cコーチたるもの、トレーニング指導1本で食べていくべし!」なんて変なプライドなんていりません。
そもそも、トレーニング指導以外の活動をすることで、トレーニング指導の腕を磨くことにも繋がるので、変にトレーニング指導1本で食べることにこだわるのは、指導対象者のためにもなりません。
究極的には、食べていけなくなって廃業したら、一番困るのは指導対象者の方々なんですから。