先日、以下のようなツイートをしました:
日本のプロ野球の秋季キャンプという文化は、アメリカの野球関係者の目にはどう映るのだろうか・・・。https://t.co/vjl8imGYK2
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
もとの記事で紹介されている米国シアトルのトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」のやり方がどうなんだ?というトピックでも議論を深めることができそうですが、今回はそちらの話題は置いておいて、日本のプロ野球における「秋季キャンプ」について考えてみます。
最初に言っておくと、私はプロ野球選手としてプレーした経験はありませんし、S&Cコーチとしてプロ野球に携わった経験もありません。
完全なる部外者であり、内情に詳しいわけでもありません。
それでも、長いシーズンが終わった後にわざわざキャンプをやり、その後オフに突入するという事実をもとに、それってコンディション調整とか次のシーズンに向けての体力強化とかいった観点で考えるとどうなのよ?という点を専門家として理詰めで考えることはできます。
また、部外者だからこそ逆に、プロ野球界に昔からある慣習とかしがらみに影響されずに、客観的にみることができるとも考えられます。
» 参考:アスリートとして経験した「感覚」がわからなくても、理詰めでトコトン考えれば、解決策は見えてくる
日本のプロ野球の秋季キャンプが必要ない理由
私は個人的に、秋季キャンプをやる必要はないし、むしろ、そんなのやらずにシーズン終了後すぐにオフに入ったほうがいいと思っています。
あえて秋季キャンプをやることで、逆にマイナスのほうが大きいとも考えています。
私がそのように考える理由は主に2つあります:
- ①すぐにオフに入って、身体を休めたほうがいい
- ②より長い期間を次シーズンに向けての準備に使える
①すぐにオフに入って、身体を休めたほうがいい
日本のプロ野球においては、3月末から9月の約半年にわたるシーズン中に143試合を戦います。クライマックスシリーズに出場する場合は、さらに多くの試合をこなします。
休みは週に1回程度でほぼ毎日プレーをし続けるわけです(先発投手の場合は例外です)。
それだけ長く厳しいシーズンを戦い抜いたプロ野球選手たちは、疲労も溜まっているはずですし、ケガや痛みを身体のそこかしこに抱えているはずです。
それにもかかわらず、シーズンが終わってすぐにオフに入らず、秋季キャンプをやるなんて、私には意味がわかりません。
さっさとオフに入って、身体を休めて、必要であれば治療をしたほうが、次のシーズンに向けてコンディションを最適な状態に仕上げることができる可能性が高まるのは間違いありません。
シーズン中は公式戦があるからこそ、ケガや痛みを抱えていてもなかなか休めない状況もあるでしょう。
だからこそ、シーズンが終わり、公式戦がなくなった時点で、すぐに休息や治療を始めたほうがいいに決まっています。
秋季キャンプを実施して、その機会をあえて先延ばしすることを正当化する理由を、私は想像することができません。
②より長い期間を次シーズンに向けての準備に使える
普通に考えると、シーズンが終わってオフも取らずに秋季キャンプをやるということは、秋季キャンプが終わったら一旦オフを取ることになるでしょう。
一切オフをとらないのは考えづらいので。
ここでいう「オフ」というのは、野球もトレーニングも一切やらず、心身ともに完全にリラックスする時期のことです。
私は個人的に、シーズン制競技のアスリートの場合、シーズンが終わったら2〜3週間はこの「オフ」を取ることを推奨しています。
実家に帰省するのもよし、旅行に出かけるのもよし、シーズン中はできない新しい趣味に挑戦するのもよし。
とりあえず競技のことやトレーニングのことは忘れて、身体だけでなく心も休めることが大切です。
ある意味、心身ともに一旦リセットをするようなイメージです。
秋季キャンプをやってから、その後にそのような「オフ」を取るということは、秋季キャンプにやったトレーニングや練習の効果も一旦リセットされてしまう可能性があります。
完全にゼロになるわけではないとしても、少なからずdetraining(体力の低下)は起きるはずです。
となると、せっかく真面目に秋季キャンプで練習やトレーニングをしても、その意味が半減してしまうことになります。
間にオフが挟まることで、トレーニング効果が一旦ブチッと切れてしまうイメージです。
であるならば、シーズン終了後に秋季キャンプなんてやらずにすぐにオフに入ったほうが、次のシーズンに向けての準備を早く始めることもできるし、より長い期間を準備に使うことができるようになるはずです。
たとえば、秋季キャンプを11月の上旬にやって、そこから2~3週間のオフを取るとなると、次のシーズンに向けての準備を開始するのが12月の頭ごろになってしまいます。
一方、秋季キャンプをやらずに、10月中をオフに充てれば、11月の頭ごろから次シーズンに向けての準備を開始することができます。
1ヶ月くらい多く、準備に費やすことができるわけです。
このプラスの1ヶ月があれば、トレーニングによる体力向上も捗りますし、練習もより多く積むことができます。
何より、途中でトレーニング効果が一旦ブチッと切れることなく、積み重ね続けて次のシーズンの開幕を迎えることができるので、体力やコンディションをより高い状態に持っていくことができるはずです。
まとめ
あくまでも外部の目で、しかも体力・コンディション面から考えて、秋季キャンプが必要ない理由を解説してみました。
もし、秋季キャンプを実施することにそれなりのメリットがあるのであれば、アメリカのメジャーリーグでもやっているはずですが、そのような話は聞いたことがありません。
ということは、日本のプロ野球で秋季キャンプをやる背景には、日本ならではの事情があるはずです。
おそらく、その「事情」というのは、選手が次のシーズンに向けてベストの準備をするということとは全く関係のないことでしょう。
まあ、外部の人間がブログで「なんで日本のプロ野球は秋季キャンプなんてやるんだ」と疑問を呈したところで変わるとも思えませんが、思考のトレーニングをするうえではとてもいいトピックでした。
内部の事情を知っている方でも、秋季キャンプはいらないとお考えの方もいるようです↓
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【編集後記】
左肩と左手首が最近ずーっと痛いのですが、これは完全に育児によるものです。
娘を抱っこするときは左手ばっかり使っているので。
しかし、育児はオフが取れません。
なんとか痛みを抱えながら育児をしていかねば。