#446 ガイドラインをそのまま当てはめられない状況が現実には多いからこそ、仕組みやメカニズムといった本質を理解するのが重要

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トレーニング関連の書籍には、さまざまなガイドラインやプログラム例が載っています。

たとえば、ウエイトトレーニングのプログラムデザインやペリオダイゼーションについて、「筋肥大期」→「筋力期」→「爆発的パワー期」→「ピーキング/テーパリング期」→「積極的休養期」という形でトレーニングの内容(例:量・強度)を変化させましょう、と書いてあったりします。

そして、各サイクルは4週間程度(プラスマイナス2週間)続くのが一般的です。

このようなガイドラインは参考になります。

とくに、それが科学的知見にもとづいているのであれば、そのまま当てはめておけば、大きく失敗するリスクは低いでしょう。

 

 

ガイドラインをそのまま当てはめられない状況

しかし、問題は、現実の世界においては、ガイドラインをそのまま当てはめられない状況のほうが多いということです。

筋肥大期に4週間、筋力期に4週間、爆発的パワー期に4週間、ピーキング/テーパリング期に2週間を費やして、狙った試合に臨むなんて理想的なシチュエーションはほとんどありません。

 

たとえば、JリーグやBリーグ等のプロスポーツでは、オフシーズンは3ヶ月程度しかありませんし、シーズンは8ヶ月近く続きます。

さらにオフシーズン中にも日本代表の試合があったり、リーグ戦とは別のカップ戦があったりして、実際にオフシーズン中にガッツリとトレーニングに集中できる時間は3ヶ月もありません。

そのようなケースでは、「筋肥大期」→「筋力期」→「爆発的パワー期」といったペリオダイゼーションをそのままオフシーズンのトレーニングに当てはめることは難しいです。

また、シーズンが8ヶ月も続くので、開幕戦に向けてピーキング/テーパリングを実施することは必要ありません。むしろ、しないほうがいいです。

そして、8ヶ月もの長期に渡って続くシーズン中のトレーニングについては、教科書的なガイドラインはどこを探しても載っていないでしょう。

 

JリーグやBリーグほどではないにしても、近年は多くの競技において、年間の試合数が増え、オフシーズンが短くなり、競技シーズンが長くなる傾向があります。

オリンピック競技でもそうです。

昔は、日本選手権や世界選手権といった大きな試合にコンディションを合わせて結果を出せば、オリンピック出場権を得られて、あとはオリンピック本番にコンディションを合わせて結果を出せばOKみたいなところがありました(競泳等はまだこの方式です)。

しかし、現在では、多くの競技において世界ランキングシステムが取り入れられ、そのランキングによってオリンピック出場権が決まったりするので、世界ランクを上げるために年間に複数の試合に出場してポイントを稼ぐ必要があり、結果として、競技シーズンが長くなっています。

 

 

ガイドラインが当てはまらない時にどうすればいいか?

そのような状況においては、教科書に載っているガイドラインをそのまま当てはめることはできないので、目の前の状況に応じてトレーニング計画に修正を加える必要があります。

適切な修正を加えてトレーニングを成功に導くためには

  • そもそもトレーニングでどのような効果を引き出そうとしているのか
  • ガイドラインで指定されている方法を変えると効果にどのような影響が出ると予想されるのか
  • マイナスの影響をできるだけ抑えるためにはどのような工夫が必要なのか

といった点をトコトン突き止めて検討することが大切です。

 

残念ながら、教科書に載っているガイドラインを暗記しているだけでは、上記のような点を検討した上で、目の前の状況やアスリートにとって適切な修正を選択することは不可能です。

そもそも、ガイドラインで示されている内容はなぜそうなっているのか、といった仕組みやメカニズムを理解しておかないといけません。

たとえば

  • ペリオダイゼーションのガイドラインで良く見られる「筋肥大期」→「筋力期」→「爆発的パワー期」→「ピーキング/テーパリング期」→「積極的休養期」という形はなぜそうなっているのか?
  • なぜトレーニング内容(例:強度、量)を定期的に変えるのか?
  • なぜ、強度は徐々に増えていって、量は徐々に減っていくのか?
  • なぜ、この順番なのか?

といった本質の部分を理解しておけば、ガイドラインを修正せざるをえない時に、「こういう風に修正したら、こういう風に効果が変わるな」ということが想像できるようになります。

いろいろな可能性を想像したうえで、最も効果的であると思われる修正を選ぶことで、与えられた状況下でベストのトレーニング効果を引き出すことができるようになるのです。

 

 

仕組みやガイドラインを理解するために

そのような仕組みやメカニズムを理解するためには、それなりに勉強をする必要があります。

ただし、ガイドラインを覚えるだけの暗記型学習をさらに重ねたとしても意味がありません。

しっかりと自分の頭を使って考える訓練が必要です。

 

具体的に自分の頭を使って何を考えれば良いのかはいくつかのレベルがあります。

 

一番基礎的なレベルでは、そもそもなぜトレーニングをするのか?を考えておくことがあります。

上記のペリオダイゼーションの例で言うと、エクササイズやレップ数・セット数、強度etcを時期によっていろいろと変えたりしてプログラムをデザインするのは楽しいですし、S&Cコーチという仕事の醍醐味でもあります。

しかし、机上でいろいろな変数を組み替えてなんとなく複雑なプログラムを作って満足しているようでは、トレーニングの本質を見失ってしまいます。

手段と目的を取り違えかねないのです。

そういった事態を防ぐためには、そもそもなぜトレーニングをするのか?という本質をトコトン考えておいて、自分の心に刻み込んでおくことが必要です。

そうしておくことで、何か悩んだ時に立ち返ることのできる原点というか原則を自分の中で作り上げることができるのです。

 

次のレベルで頭を使って考えておきたいのは、たとえば、筋肥大期に特徴的なトレーニングをやった場合に、どのようなポジティブなトレーニング効果が期待できるのかだけでなく、どのようなネガティブな影響が起こりうるのかという点です。

筋肥大期的なプログラムを実施すれば、筋肥大や身体組成の改善(除脂肪体重の増加、体脂肪の減少) といったトレーニング効果が期待できる一方で、セッション直後のパフォーマンス低下が大きく回復にも時間がかかったり、一時的にRFDが低下したりといったマイナス点が存在します。

» 参考:【論文レビュー】「筋肥大期」的な量の多いウエイトトレーニングを実施すると一時的にRFDが低下する

つまり、ガイドラインで示されている内容をやった時に、どのような効果・影響(プラスだけでなくマイナスも)があるのかを把握しておくということです。

なぜ、ガイドライン通りにやると良い効果が得られるのかという仕組みやメカニズムを理解しておけば、それを修正する時にも役立つ情報が得られます。

 

最後のレベルでは、実際に目の前の状況に合わせて、いろいろと想像を膨らませながら、ガイドラインにこのような修正を加えると、このような変化(プラスとマイナス両方)が起こると予想される、ということを自分の頭を使って考える訓練をする必要があります。

自分の中で仮のシナリオを作っておいて、それに応じてガイドラインを修正する練習をすることもできなくはないですが、なかなかリアルなシナリオを作ることは難しいでしょう。

したがって、ここのレベルで頭を使うには、実際にアスリートやチームのトレーニング計画を立てる経験を積みながら訓練していくしかありません。

そして、その際には、目の前のアスリートやチームへの愛を最大限に発揮して、トコトン考え抜くことが大切です。

 

 

まとめ 

ガイドラインは参考になるし、知っておいて損はないですけど、そのまま当てはめることができないシチュエーションが多いというのが現実です。

したがって、ガイドラインを丸暗記するのではなくて、その仕組やメカニズムといった本質を理解しておくことが重要です。

そうすれば、ガイドラインを修正せざるをえない状況でも、適切な選択をすることができるようになります。

 

 

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【編集後記】

PCを新調しようと計画中です。

現在使用しているMacBook Air 11インチはもう2年ほど使っているので、そろそろ変え時です。

MacBook 12インチが気になり、どの色にしようか検討するためにApple Storeに行ったのですが、視界に入ったMacBook Pro 13インチのスクリーンの大きさにも惹かれてしまい、迷っています。

スペック的にはMacBook 12インチで十分なのですが、結構、スタバにPCを持っていって作業をすることが多いので、 スクリーンの大きさも結構重要な気がします。

さて、どうしたものか・・・。