ウエイトトレーニングの動きを競技の動きに近づけるな!
本ブログでは以前から訴え続けていますが、ウエイトトレーニングの動きは競技中の動きと同じである必要はありません。
似せる必要すらありません。
両者は異なってもいいのです。
むしろ、異なっているから意味があるとも言えます。
逆に、ウエイトトレーニングの動きを競技の動きに近づけようとすると、危険のほうが大きいです。
» 参考:【アスリート向け】 競技の動きに見た目が似ているエクササイズのほうが競技力向上に直結する・・・なんてことはございません!
この点については、本ブログでいくつも記事を書いて繰り返し啓蒙してきたという自負があります。
おそらく私は、日本で一番「ウエイトトレーニングの動きを競技の動きに近づけるな!」と口うるさく発信してきた人間であるはずです。
伝えることの難しさと繰り返し伝え続けることの大切さ
それでも、まだまだこの考え方は浸透していないな〜と実感することが多いです。
そもそも私のブログのフォロワーが何百万人もいるわけではないので、私の訴えが届く範囲が小さいというのが主な原因です。
もっと多くの方に読まれるよう努力をしないといけません。
しかし、読まれていないから浸透していない、というだけでなく、読んでいただいた方のなかでも、まだこの考え方がしっくりきていなかったり、受け入れられていなかったりする方も多いように感じます。
私のセミナーにご参加いただいた方からも「河森さんのお考えには基本的に賛成なのですが、これこれこういう場合は競技の動きに負荷をかけてトレーニングするのはアリなんじゃないでしょうか?」という質問をいただくことがあります。
私のセミナーにご参加いただく方は、私のブログを読まれている可能性が高いので、そういう方であっても、「ウエイトトレーニングの動きを競技の動きに近づけるな!」という考え方が浸透していないんだな〜とガックリしてしまうこともあります。
自分の主張を他人に伝えて理解していただくっていうのはなかなか難しいものですね。
ただ、逆に考えてみると、私自身が情報の受け手側の立場の場合に、誰かが発信していることをすぐには受け入れることはできず、何度も何度もその主張を聞いているうちに、ぼんやりと「ああ、そうなのかな〜」と思うようになり、そして自分自身で経験をしてみて「やっぱり、あの人の言っていることは正しかった!」となることはあります。
つまり、誰かが発信しているのを見てから、それを理解して受け入れるまでに時間がかかるわけですね。
たとえば、「これをやると失敗するからやるな!」と言われてもピンとこず、実際にやってみて失敗をして初めて「あ、これやると本当に失敗するんだな」と納得できるみたいな感じです。
ただし、失敗をした時に「あ、これやると本当に失敗するんだな」と思えるのは、事前に「これをやると失敗するからやるな!」という発信を目にしたり耳にしたりして記憶に残っていたからです。
それがなければ、同じ失敗を繰り返してしまうかもしれません。
したがって、発信をする側の立場としては、たとえすぐに受け入れてもらえなくても、発信をし続けて記憶に残しておいてもらうことには意味があるはずだ、と信じることが大切です。
競技中は寝そべらないけど、トレーニングでは寝そべってベンチプレスやることもある
「ウエイトトレーニングの動きを競技の動きに近づけるな!」という主張については、手を変え品を変え発信してきました。
その新たな形として、バスケ選手を指導していたときのエピソードを紹介したいと思います。
ルーマニアンデッドリフト(RDL)というエクササイズを指導する時は、足幅は腰幅くらいでやってもらうように指示しています。
比較的狭い足幅ですね。
しかし、あるバスケ選手がRDLをやっている時に足幅が肩幅以上に広がって実施しているのに気づき、足幅は腰幅くらいに修正するよう伝えたことがありました。
するとその選手は「でも、バスケをプレーしている時は、足幅このくらい広げますよ!」と反論してきました。
つまり、「足幅は腰幅くらいでやるように」と私が明確に指示したのにもかかわらず、それを無視して、勝手に競技の動きに似せようとしていたのです。
専門家の指示を無視してウエイトトレーニングの動きを勝手に変えてしまうほど、「ウエイトトレーニングを競技の動きに近づけたほうがよい」という誤った考え方に縛られたアスリートがいるんだな〜と実感したエピソードです。
一応、ウエイトトレーニングでは競技の動きを真似る必要はない、そもそもバスケのプレー中にバーベル持ち挙げないでしょ、という説明は伝えましたが、多分本人は納得してなかったですね。
皮肉なことに、そういう選手にかぎってベンチプレスをやりたがるんです!
「いやいや、バスケをプレーしている時は、ベンチに寝そべることないでしょ!」と思うんですけどね・・・。
つまり、RDLの動きはバスケの動きに近づけようとしているのに、バスケの動きにはない寝そべってバーベルを押すベンチプレスをやりたがるっていうのは、ロジックとしては完全に破綻しているんです。
しかし、そんなことをアスリートに指摘したとしても、「ああ、たしかに矛盾していますね」なんて素直に聞き入れてもらえるわけがありません。
とくに、こちらの指示を無視するような素直さに欠けるアスリートの場合は。
論理的に正しいことを伝えるだけじゃ意味がないってことですね。
私がS&Cコーチとして、まだまだアスリートから信頼を勝ち得ていなかったということもあるでしょう。
アスリートにとって「素直さ」って重要だと思うので、言われたとおりにやることのできないこの選手は、この先苦労するだろうな〜なんて思ったりもしました。
その一方で、伝え方って難しいな、ただ論理的に正しいことを説明すれば伝わるってもんじゃないな、とも感じたエピソードでした。
だからこそ、本当に重要で伝えたいことがあれば、手を変え品を変え、繰り返し相手が理解するまで伝え続ける必要があるということを学びました。
1回伝えたし説明したんだから、それを理解できないのは相手が悪い、なんて言ってても何も解決できないんですよね。
粘り強く理解してもらえるまで伝え続けないと。
まとめ
1回伝えただけでは理解してもらえないことが多いです。
むしろ、1回伝えただけで理解してもらえることのほうが稀だと言ってもいいくらいです。
もし、伝えたい内容が重要なことなのであれば、同じ内容を繰り返し繰り返し発信し続けて、いつか「あ、河森の言っていたことはそういうことなのか!」と気づいてもらえる日を待つ必要があります。
だから、このブログでも、同じようなメッセージを手を変え品を変え伝え続けていこうと思います。
「ウエイトトレーニングの動きを競技の動きに近づけるな!」というメッセージについても、私は繰り返し伝え続けていくつもりです。
今日取り上げた、「競技中は寝そべらないけど、トレーニングでは寝そべってベンチプレスやることもある」という切り口も、なぜウエイトトレーニングの動きを競技の動きに近づる必要がないのかを考えるうえでは1つのキッカケになりうるものだと思います。
1人でも2人でも、「あ、河森の言ってたことはそういうことなのか!」と気づいていただける方が増えたらうれしいです。
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【編集後記】
1歳の娘がアンパンマンを認識するようになり、指を指して「アンパン!」と叫びます。
惜しい。