トレーニングを指導していると、正しい動きをしてもらうために「声がけ」をすることがあります。
「声がけ」は英語だと「coaching cue」と呼んだりします。
この「声がけ」が以前に言っていた内容と真逆になる場合があります。
アスリートからすると「前に言っていたことと違うじゃん」と不満に思われるかもしれません。
しかし、べつに指導する側の考え方が以前と比べて180度変わったわけでもないし、指導する方針がブレているわけでもありません。
しっかりと意図を持って指導をしているうえで、あえて真逆の声がけをすることがあるのです。
それがどういうことなのか説明したいと思います。
ポスターを壁にまっすぐ貼るときの指示が真逆になる場合
説明をわかりやすくするために、壁にポスターを貼る作業をたとえに使って考えていきます。
「壁にポスターをまっすぐ貼る」というのを最終目標と定めます。
で、ポスターが結構大きくて、一人で貼っているとポスターが傾いていないか確認するのが困難なので、二人一組で作業をしているものとします。
一人がポスターを持って壁に貼り付ける役、もう一人はポスターが傾いていないかを少し離れた後方からチェックして指示を出す役とします。
貼り付け役がポスターを壁にくっつけて「これでどう?まっすぐになってる?」と尋ねます。
それに対して、チェック役が「ちょっと傾いてるから、右側を少し上げて」と指示します。
貼り付け役がポスターの右側を少し上げて「これでOK?」と尋ねます。
すると、チェック役が「右側上げすぎて逆に傾いちゃったから、今度は右側を少し下げて」と指示します。
そうしたやり取りを何度か繰り返すうちにポスターがまっすぐになるので、そうしたら、ポスターがそれ以上動かないように押さえたまま、画鋲等を使って壁に実際に貼り付けることになります。
このやり取りの中では、「右側を少し上げて」「右側を少し下げて」という真逆の指示が飛び交っています。
しかし、「壁にポスターをまっすぐ貼る」という最終目標はまったくブレていません。
ただ、そのときどきのポスターの傾きに応じて、それをまっすぐに持っていくために適切となる指示の内容が変わっただけです。
トレーニングにおいて「声がけ」が真逆になる場合
トレーニングにおける「声がけ」もこれと全く同じです。
こちらが狙ったトレーニング効果を引き出すために「最適な動き」というものがあります。
目の前のアスリートの実際の動きが「最適な動き」から外れていたら、動きを修正するために声がけをすることになります。
たとえばデッドリフトの開始姿勢におけるケツの高さが低すぎた場合は「ケツを少し高くしよう」と声がけをしますが、それが高くなりすぎてしまったら今度は「ケツを少し下げよう」と声がけをします。
アスリートからすると「言っていることがさっきと違うじゃないか」と思われるかもしれませんが、それはあなたの動きがさっきと違うからであって、狙っている(引き出したい)「最適な動き」はブレていないのです。
トレーニング初心者で、まだフォームが固まっていない場合は、1セットの中でそのような真逆の声がけをすることもあります。
ある程度のトレーニング経験者の場合は、トレーニングを数ヶ月続けている中で動きが徐々にブレてきたときに、数ヶ月前とは真逆の内容の声がけをすることもあります。
真逆の声がけをするタイムスパンがどれくらいかはさておき、それは「最適な動き」を引き起こすために、目の前のアスリートの動きに応じて声がけの内容が変わっただけのことです。
つまり、トレーニング中に「声がけ」される内容が大きく変わったりしたら、それはトレーニング指導者が変わったのではなく、アスリートであるあなたの動きが変わったのだと受け止めてください。
まとめ
専門家からトレーニング指導を受けているアスリートの皆さんには、「声がけ」が真逆になることもあるということを知っておいてほしくて今回のブログを書きました。
ポスターを壁にまっすぐ貼るというたとえを思い浮かべていただけると理解しやすいのではないかと思います。
とはいえ、場合によってはトレーニング指導者の側が変わっているケースもありうるので、もし「前に言ってたことと逆じゃん」と不安・不満に思ったら、「前はこういう風に指示されたのに、今回は真逆のことを言われたんですけど、どうしてですか?」と尋ねてみるといいでしょう。
ちゃんとした専門家であれば、今回のブログ記事のようなことを具体的に答えてくれるはずです。
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【編集後記】
洗濯機をオキシクリーナーを使って掃除しております。
カスみたいなのが大量に出てきます。
これをすくっては捨てる作業の繰り返しです。
きれいになるのは気持ちいいですが、今までこのカスみたいなのがある状態で洗濯をしていたのかと思うと気持ち悪いです。