S&Cコーチとして、常に勉強をして自分の知識やスキルを向上し続けるのは非常に重要です。学ぶのを止めたら、S&Cコーチとして停滞するどころか、後退してしまいます。「俺はもう十分経験もあるし、これ以上学ぶことはないぜ〜」なんて言って、今までやってきたのと全く同じことをずーっと続けているようなS&Cコーチはまったく尊敬できません。ということで、私自身も毎日少しでもS&Cコーチとして成長しようと努力をしています。
S&Cコーチとしての継続教育の種類
さて、知識やスキルを向上するといっても、その方法は色々とあります。私が自分でやっていることを、思いつく限りリストで挙げてみます:
- セミナーを受講する
- DVDやネット上の動画を視聴する
- ブログを読む
- ブログを書く
- 本を読む
- 雑誌(例:トレーニング・ジャーナル、コーチング・クリニック)を読む
- 科学論文を読む
- 他のS&Cコーチがアスリートを指導しているのを見学する
- 他のS&Cコーチや他の分野の専門家に質問したり議論したり
- 自分でトレーニングをして、色々と試してみる
学習方法としては、それぞれ長所・短所がありますが、全ての方法が自分にとっては役に立っています。
その中でも、最近改めてオススメだな〜と思うのが「他のS&Cコーチがアスリートを指導しているのを見学する」という方法です。私の職場は複数のS&Cコーチが勤務しており、また外部からS&Cコーチの方が来て施設を利用してアスリートの指導をされるという環境なので、色々なS&Cコーチの指導の様子を観察(盗み見?)する機会があります。
そんな中、最近はスクワットのフォームに関するコーチングキューについて、他のS&Cコーチが使っているものをたまたま耳にして「これは使えそうだな」と思い、自分が担当するアスリートを指導する時に使ってみたら効果てきめんだった、というエピソードがありました。私の職場は非常に恵まれた環境で珍しいケースなので、普通はなかなか他のS&Cコーチの指導の様子を見学する機会はないかもしれませんが、とても勉強になるので、そのような機会を積極的に見つけることをオススメします。
最近は、S&C業界に限らず「無給インターン」という問題についてネット等で目にすることもありますが、個人的にはお金を払ってでもインターン(あるいは見学)をさせてもらうべきだと思います。それほど他のS&Cコーチの指導の様子を見学することには価値があります。自分が勉強させてもらっているのに、さらに給料を要求するというのは自分には理解できません・・・。
他のS&Cコーチの指導を見学する時の注意点
ちなみに、1つ注意してほしいのは、見学したからといってその全てを取り入れないといけないわけではないという点です。見学する時は以下の手順を意識してみてください:
- まずは客観的な目で観察をして「これは良いな〜」と思うものを探す
- 「これは良いな〜」と思うものが見つかったら、それが自分のS&Cコーチングのやり方(システム)に取り入れることができるかどうか想像してみる
- 自分のやり方に合うものであれば、取り入れて自分のものにしてしまう
- 良いけども自分のやり方に取り入れるのが難しければ、取り入れることはせずに、知識として自分のツールボックスに保存しておく
実際に、「あ、これは良いな〜」と思っても、自分のやり方とは相性が悪く、それを取り入れようと思ったら自分のやり方を一回すべてぶっ壊して、一から作り直す必要があるなと思う場合があります。そういう時は無理をせずに、とりあえず知識として持っておくようにしています。
場合によっては、自分のやり方をかなりぶっ壊してでも取り入れたほうが良いと思えるほど衝撃的な気付きをもらう事もありますし、それを実行するくらいの柔軟性は持ち続けていたいところです。ただし、しょっちゅう自分のやり方をコロコロと変えまくるのもどうかと思うので、私の中では「これだけは譲れない」という基本原則的なもの(木に例えるなら幹の部分)がある程度出来上がっていて、それ意外の枝葉の部分に限定して柔軟に変えていこうと考えています。
まだS&Cの勉強を始めて間もない学生等の場合は、自分のやり方がまだ確立されていないと思うので、特に強烈なキャラ・意見をお持ちのS&Cコーチの指導する様子を見学したら「スゴイ、このやり方を学んで自分のものにしたい」という感じで大きく影響を受けやすいと思います。ま、それはそれでアリだと思いますが、やり方の違うS&Cコーチの指導を見学するたびに自分のやり方がコロコロと変わるのもよろしくないと思うので、十分気を付けて頂きたいと思います。
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【編集後記】
そろそろソチ五輪が近づいてきて、代表選手も決定されつつあります。そうすると、メディアによる代表選手のトレーニングの取材も増えてきて、その様子をテレビ等で目にする機会も出てくるでしょう。そこで、是非気を付けて頂きたい点が2つあります。1つは「トップクラスの選手のやっているトレーニングが必ずしもトップクラスのトレーニングとは限らない」という点です(トップクラスのトレーニングをしている場合もあります)。2つ目は、トップクラスの選手がトップクラスのトレーニングをやっていたとしても、それが全てのアスリートにとってもベストなトレーニングというわけではないという点です。メディアで目にする代表選手のトレーニングをそのまま真似するのは色々な意味で危険なのでやめましょう。