サクッと論文レビューをします。
論文の内容
研究プロトコル
イングランド・プレミアリーグのプロサッカーチームに所属するユース選手が被験者。
サッカーの試合直後に2通りのリカバリー方法を実施してもらった:
- パッシブリカバリー(PR):10分間座っているだけ
- スタティックストレッチ(SS):腓腹筋、ハムストリング、大腿四頭筋、臀筋、股関節屈筋・内転筋・外転筋のスタティックストレッチを2×15秒
試合前、試合直後(リカバリー方法実施直後)、試合後48時間の3つのタイミングで、浮腫(むくみ?)、血中クレアチンキナーゼ、カウンタームーブメントジャンプ高、主観的筋肉痛etcを計測し、疲労回復の時系列変化をPRとSSで比較した。
結果
PRとSSの間で疲労回復の度合いに差が見られなかった。
考察
試合後のリカバリーあるいはクールダウンの一環としてスタティックストレッチを実施するのは、よく見られる光景です。
しかし、今回ご紹介した研究結果を見ると、そのような手法が本当に疲労回復につながっているのか、考え直したほうが良さそうです。
もちろん、今回の研究結果が他の競技・レベルのアスリートや他の条件下においても当てはまるとは限りません。
たとえば、15秒間じゃなくて1分間ストレッチを保持していたら結果が変わったかもしれないし。
また、疲労の指標として、今回の研究で測定したもの以外の指標を採用していたら、それもまた結果が変わっていたかもしれません。たとえば可動域とか。
特に、疲労回復には生理的な面だけでなく心理的な面も大きく関わっているので、心理的なリカバリー度のような指標を調査していない点は、少し物足りない感じもします。
だから、今回の1つの研究だけで、試合後のスタティックストレッチはまったく意味がないと結論づけることはできません。
しかしながら、他の関連する研究も合わせて読んでみると、スタティックストレッチが試合後のリカバリーを促進することを支持する科学的根拠は極めて薄いと言わざるをえません。
まとめ
われわれが何気なくやっている習慣のようなものが本当に効果があるのか?そもそも、なぜそれをやっているのか?どういうメカニズムでそれが効果があると考えているのか?といった点について、一度立ち止まって再考する機会を与えてくれるのも、学術論文を読んでみるメリットです。
繰り返しになりますが、べつに「試合後のクールダウンでスタティックストレッチをやるな」と言っているわけではありません。
ただし、科学的には効果がどうもなさそうだと考えられるものを試合後の疲れている状況でわざわざアスリートにやらせるだけの確固たる理屈を持っていますか?それとも「昔から試合後にストレッチやるのが当たり前だったから」程度のフワッとした理由だけで、深く考えずにやらせているのですか?ということは考え直してもらいたいです。
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【編集後記】
トレーニング指導や自身のトレーニングに行くときは、リュック型のバッグを担いで移動しています。
しかし、これから暑くなってくると、リュック型は背中に汗をかきます。
そこで、手持ち型のバッグを物色中です。
いいものが見つかるといいのですが。