#641 S&Cコーチは英語の情報を読んでインプットできる能力を身につけておいたほうがいい

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以前に「S&Cコーチに英語は必要か?」というタイトルでブログ記事を書きました。

#486 S&Cコーチに英語は必要か?

そのなかで、このトピックについての私の考えはひととおり書いたつもりです。

しかし、つい先日、私も序文を書かせていただいた「Starting Strength」の日本語版が発売されたのをキッカケに、改めて英語の必要性について考えてみました。

» 参考:書籍「Starting Strength」日本語版の序文を書かせていただきました【全文掲載】

 

 

S&Cコーチに必要な英語の能力

ひとことで「英語」といっても、いろいろな能力がありますが、大雑把に2つのカテゴリーに分けることができます:

  • ①英語でアウトプットする能力(話す、書く)
  • ②英語でインプットする能力(聞く、読む)

 

①英語でアウトプットする能力(話す、書く)

英語でアウトプットする能力が必要とされる場面は、日本でS&Cコーチとして活動をしている限りは少ないでしょう。

とくに、英語で「書く」ことが必要になることは、ほとんどありません。

世界中に自分の考えを発信したいという願望があったり、日本に滞在している外国人の方を対象にビジネスをしたりしない限りは。

 

ただし、英語で「話す」ことが必要になる機会は、日本で活動をしていてもゼロではありません。

たとえば、プロチームで働いて、外国人選手への指導をしないといけないケースが考えられます。

私自身、2018-2019シーズンにBリーグ2部のアースフレンズ東京ZでS&Cコーチを務める機会をいただきましたが、外国籍選手への指導は英語で行う必要がありました。

バスケ以外にも、ラグビーのトップリーグでは、オーストラリアやニュージーランド等の英語圏出身のコーチや選手が多いので、英語を話す能力は必要でしょう。

 

したがって、そうしたプロスポーツの世界でS&Cコーチとして活動していきたいのであれば、英語で話す能力を身につけておくと大きな武器になります。

英語を話せない他のS&Cコーチとの違いを作ることに繋がります。

 

とはいえ、そういったレアなケースを除くと、一般的には、S&Cコーチが英語でアウトプットする能力を身につける必要性は大きくはないでしょう。

 

 

②英語でインプットする能力(聞く、読む)

英語でインプットする能力は、S&Cコーチとして持っておくと便利です。

とくに、「継続学習」という形で、自分の知識やスキルを向上するために、セミナーに参加したり、本を読んだり、ネット検索したり、オンラインコースを受講したり、etcといったときには、非常に役に立ちます。

というのも、S&Cに関連して得られる情報量が、日本語よりも英語のほうが圧倒的に多いからです。

 

たとえば、「ルーマニアンデッドリフト」と日本語でGoogle検索をすると約23,200 件ヒットしますが、「Romanian deadlift」と英語で検索をすると約875,000 件ヒットします。

英語で検索される情報量は日本語のそれより37倍以上も存在するのです。

Google検索だけではなく、S&C関連の本だったり、情報教材(オンラインコース、DVD)だったりについても、やはり日本語で提供されている数は非常に少ないです。

また、科学的知見を得るための情報源である学術論文も、英語で書かれているものがほとんどです。

 

したがって、英語の情報源に自らあたってインプットできる能力は、時間・お金・労力をかけてでも身につけるに値するものだと断言できます。

ただし、「聞く」というインプット能力を身につけるには、結構時間がかかるので、まずは英語で「読む」能力の向上に手を付けるのがオススメです。

読むのは自分のペースでできますし、何度も読み返すこともできますし、辞書という大きな武器を使うことも可能ですから。

 

 

日本語訳も出版されるけど、やはり英語で読めたほうがいい

英語で書かれた本であっても、人気があったり影響力が大きかったりすると、日本語訳が出版される機会が多いのも事実です。

その日本語訳を読めばインプットは可能なのだから、わざわざ英語でインプットする能力を身につけるために時間・お金・労力をかけるのは無駄だ、とお考えの方もいるかもしれません。

気持ちはわからないではないですが、日本語訳の出版に自らの継続学習の運命を預けてしまうのは危険だとも思います。

その理由は3つあります:

  • ①日本語訳が出版されるとはかぎらない
  • ②日本語訳が出版されるまで時間がかかるかもしれない
  • ③日本語訳の質が悪いかもしれない

 

①日本語訳が出版されるとはかぎらない

これは、まさに書いてあるとおりです。

日本語訳を出版するかどうかは、出版社のビジネス判断になります。

個人的に、この英語本を翻訳して出版してほしいな〜と思っても、それが実現するとは限りません。

そこは情報の受け手側である個人がコントロールできないものです。

 

 

②日本語訳が出版されるまで時間がかかるかもしれない

たとえ日本語訳が出版されるとしても、翻訳に時間がかかるため、どうしても原著の出版からは数年以上遅れてしまいます。

Starting Strengthの場合は、初版が英語で出版されてから、日本語訳が出版されるまで10年もかかっています。

これは翻訳そのものに時間がかかったというだけでなく、翻訳の権利関係の契約をするのに時間がかかったという事情があったようですが。

 

 

③日本語訳の質が悪いかもしれない

日本語に翻訳された本を手にしてみたこともありますが、翻訳がヘタクソで何を言っているのか理解できないことが多いです。

私の個人的な感覚では、S&C関連の日本語訳のうち、8割以上は翻訳がヘタクソです。

そういう場合、せっかく日本語訳が出版されたとしても、そこから意味のある情報をインプットすることは難しいでしょう。

 

翻訳がヘタクソな理由は、翻訳が専門ではない方が翻訳を担当しているからです。

多くの場合、その本のテーマに詳しそうな大学教授に出版社が翻訳の依頼をして、教授は忙しいから実際の翻訳作業は教え子の大学院生にバイト代を払ってやらせて、教授は「監訳」という形で監修をつとめるものの、実際にはチェックもろくにせずに教え子が翻訳したものを出版社に渡しているから翻訳の質が悪くなる、と私は勝手に想像しています。

また、異なる大学院生が異なるチャプターを担当するため、1冊の本の中でも翻訳の質にバラツキが出てしまったりします。

これは、あくまでも私の想像です。ファンタジーです。事実ではないかもしれません。でも、私はそう信じています。

 

翻訳というのは、それ自体がひとつの独立したスキルです。

私自身、日本語の文章は書けますし、英語の文章を読んで理解することはできますが、翻訳をする自信はありません。

やはり、それはまた別のスキルなのです。

 

「Starting Strength」の日本語版については、AthleteBody.jpの八百さんが翻訳を担当されました。

やはり翻訳を専門としている方だけあって、とてもわかりやすく、原著の内容を忠実に日本語で再現されていると感じました。

このくらい質の高い翻訳であれば、なんの問題もありません。

しかし、残念ながら、このレベルの翻訳に出会うことのほうがレアであるのが現状です。

私の感覚では2割という低い確率です。

 

 

まとめ

S&C関連の情報は英語のものが圧倒的に量が多いので、英語でインプットする能力を身につけましょう、というのが今回のブログ記事の趣旨でした。

とくに英語で「読む」能力は向上しやすいので、まずはそこから手を付けるのがオススメです。

そのような能力を身につけておけば、「自分が読みたい本が(質の高い翻訳によって)日本語に翻訳されて出版される」という低い確率の可能性に賭ける必要はなく、自分で積極的に欲しい情報を取りに行くことができるようになります。

また、そもそも日本語訳されることがないような英語の情報(ブログ、論文、ネット記事)もインプットできるようになります。

 

英語で読む能力は海外留学なんてしなくても、コツコツと継続して英語を読み続けていれば身につきます。

逆に言うと、海外留学したからといって、自然に身につく能力ではありません。

やるかやらないか、です。

覚悟を決めて取り組むS&Cコーチが一人でも増えるキッカケになれば幸いです。

 

 

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【編集後記】

令和になりましたね。

だからといって、特に何かが変わるわけではありませんが、平成に変わるときと比べると、自粛ムードよりもお祝いムードなので、なんとなくいいな〜と感じています。