#639 書籍「Starting Strength」日本語版の序文を書かせていただきました【全文掲載】

 

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「Starting Strength」日本語版の出版

私のブログでも以前からオススメしていた書籍「Starting Strength」の日本語版が先日出版されました。

翻訳はAthleteBody.jpの八百さんが担当されています。

かなり大変な翻訳作業だったろうと推測されますが、初回印刷分が1日で売り切れてしまうほどの売れ行きだったそうで、報われて良かったな〜と勝手に思っています。

 

Amazon等からも購入できるようですが、特別販売ページから注文すると限定公開の特典動画がついてくるらしいので、そっちのほうがお得かもしれません。

詳しくは以下のサイトを参照してみてください。

参考 日本語版Starting Strength発売AthleteBody.jp

 

 

「Starting Strength」日本語版の序文

ご縁がありまして、「Starting Strength」の日本語版の序文を執筆させていただきました。

英語の原著を読んできた経験をもとに、「Starting Strength」はどのような本なのか、そして、どのように活用するとよいのか、について書きました。

先日、「Starting Strength」の日本語版の出版にあわせて献本をしていただき、自分の書いた序文を読み返したのですが、われながらよく書けていました(笑)

今日は、そんなよく書けている序文を全文、掲載します。

購入を検討中の方は、ぜひ読んでみてください。参考になるはずです。

 

 

=======ここから序文=======

本書はMark Rippetoe氏の著書Starting Strengthの日本語訳です。原著は第3版まで出版されていますが、私が初版を手にしたのは2005年のことです。アメリカに留学していた時の指導教授から薦められたのがキッカケで購入したのですが、読み始めてすぐにStarting Strengthの素晴らしさに気づきました。筋力トレーニングの実施方法について、ここまで詳しく、論理的に、そして(いい意味で)マニアックに解説されている本は他にありません。私自身、Starting Strengthを読んだことで、筋力トレーニングについての知識や考え方を大幅に深めることができたと感じています。

また、友人や同業者から筋力トレーニングに関するオススメ本を尋ねられた時には、Starting Strengthを薦めてきました。しかし、英語で書かれていることがネックとなり、せっかく薦めても「英語じゃ読めないよ」「日本語訳でも出たら買うんだけど」といった反応をされることが多く、Starting Strengthに書かれている情報が日本国内でなかなか広まらないのはもったいないと感じていました。

初版の発行から10年以上が経過し、ついにStarting Strengthの日本語訳が発売されることになると聞き、「ようやく出版されるのか・・・」と安堵に近い感覚を覚えました。その日本語訳の序文執筆のご依頼をいただいたのは大変光栄なことです。原著を愛読してきた私なりの視点で、Starting Strengthの特徴について解説したいと思います。

 

これまで、筋力トレーニングに関する数多くの書籍が出版されてきました。筋力トレーニングエクササイズの具体的なやり方を説明している本もありますが、1つのエクササイズにつき見開き1ページ程度の説明しかなされていないことがほとんどです。レッグエクステンションやサイドレイズ等の比較的単純な単関節エクササイズであれば、短い説明を読むだけでもそのやり方を十分に理解することができるのかもしれません。しかし、スクワットやデッドリフトのように複雑な多関節エクササイズ、しかもフリーウエイトエクササイズについては、見開き1ページ程度の短い説明を読んだだけで、適切なやり方を理解して身につけることは困難です。むしろ、見開き1ページ程度の短い説明を読んだだけの浅い知識や理解でスクワットやデッドリフトに取り組んでも、期待するようなトレーニング効果が得られないどころか、場合によってはケガや痛みに繋がるリスクさえあります。

1つのエクササイズにつき見開き1ページ程度の短い説明を、何十ものエクササイズについて提供している一般的な筋力トレーニング関連本と比較して、Starting Strengthの最大の特徴は、スクワット・プレス・デッドリフト・ベンチプレス・パワークリーンの5種目のバーベルエクササイズに主な対象を絞り、それぞれについて何十ページにもわたる詳細な説明を提供している点です。1つ1つのエクササイズについて、これほどのページ数を割いて詳しい説明をしている本は他に見当たりません。

何十ものエクササイズが紹介されている一般的な筋力トレーニング関連本を読み慣れている読者からすると、Starting Strengthでは5種目のエクササイズしか紹介されていないという点は物足りなく感じるかもしれません(実際はメインの5種目に加えて、補助エクササイズもいくつか紹介されています)。しかし、これらの5種目は、多くの筋群を動員して、大きな可動域を使い、高重量を持ち上げることができるので、筋力を向上させるポテンシャルが非常に高いエクササイズです。一般的な筋力トレーニング関連本に紹介されている何十ものエクササイズを一通り実施するよりも、Starting Strengthで紹介されている5種目にフォーカスしてやり込むほうが、筋力向上という結果に結びつく可能性ははるかに高いでしょう。

 

また、Starting Strengthでは、各エクササイズの具体的なやり方、つまりHowの部分が詳細に説明されているだけではなく、なぜそのやり方でやるのか、つまりWhyの部分についても、バイオメカニクスや解剖学の知識を使って解説されています。筋力トレーニングを指導する立場の読者であれば、Howだけでなく、その背景にあるWhyもしっかりと理解しておくことで、より効果的に、そしてより自信を持ってHowを指導できるようになります。また、ご自身で筋力トレーニングをされている読者であれば、Whyを知っておくことで、適切な動き(=How)に対する意識が高まり、より効果的なトレーニングに繋がるはずです。さらには、なぜそのやり方でやるのかについても納得感があるので、筋力トレーニングに対するモチベーションも高まるでしょう。

そうしたWhyの詳細な解説というのも、他の一般的な筋力トレーニング関連本にはないStarting Strengthの大きな特徴の1つです。おそらく多くの読者は、そこまで深く筋力トレーニングエクササイズのやり方やその背景について考えたことはないと思うので、本書を読むことで驚かれると同時に、これまでの認識が大きく変わる経験をされることでしょう。

 

Starting Strengthでは、上述した5種目のエクササイズの実施方法についての解説だけではなく、それらのエクササイズを使って、実際にどのようにトレーニングを進めていけばよいのかについても書かれています。特に、筋力トレーニングを始めたばかりの初心者向けの具体的なプログラムが提供されています。

この「初心者向けプログラム」は非常にシンプルです。Starting Strengthで取り上げられている5種目を中心に構成され、それ以外にプログラムに含まれるエクササイズは懸垂とバックエクステンションのみです。また、セット数やレップ数は基本的に「3セット×5レップ」に固定されています(デッドリフトは例外で「1セット×5レップ」です)。さらには、挙上重量はトレーニングセッションごとに2.5kg〜5kg程度ずつ増やしていき、それができなくなるまで続けることになっています。ペリオダイゼーションまたは期分けと呼ばれるように、定期的にエクササイズや量(≒レップ数)や強度(≒挙上重量)を変えたりすることは一切ありません。

あまりにもシンプルなので「こんなにシンプルなプログラムでトレーニング効果が出るのだろうか?」と疑問に思われる読者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、初心者レベルのうちは、たくさんの数のエクササイズをこなすよりも、本当に重要なエクササイズ数種目に絞り、それらをひたすらやり込むほうが間違いなく筋力は向上します。また、初心者のうちは筋力向上スピードが比較的速いので、プログラム内容はあまりいじらず「3セット×5レップ」に固定しておき、挙上重量も毎回2.5kg〜5kg程度ずつシンプルに増やしていくほうが筋力向上への近道です。これは、さまざまなレベルのアスリートのトレーニング指導をしてきた私の経験からも言えますし、その理由については本書でも説明がされています。

したがって、Starting Strengthで紹介されている「初心者向けプログラム」は確かにシンプルではありますが、シンプルだからこそ効果が高いと言えます。シンプルであることに対して不安になる必要はありません。また、この「初心者向けプログラム」の効果を最大限に高めたいのであれば、シンプルすぎて不安だからといって勝手にエクササイズを追加したりセット数やレップ数を変えたりせず、書かれている通りに実施されることをお勧めします。

 

初心者向けのプログラムを提供するのに加えて、ウォームアップセットやワークセット等をどのように組めばよいのか、重量をどのように増やしていけばよいのか、プラトー(筋力向上の停滞)に陥った時にどう対処すればよいのか等についても本書では説明がされています。

これらのトピックは、紙に書かれた筋力トレーニングプログラムを実行に移そうとする時には必ず必要になる実践的な情報です。しかし、一般的な筋力トレーニング関連本では、「スクワットを3セット×5レップ実施しましょう」程度の記述しかされていないことが多く、3セットの重量はすべて同じでよいのか、それとも少しずつ重くしていくのか、今挙げている重量がラクになってきたらどのタイミングでどの程度重量を増やせばよいのか等の実践的な情報は提供されていないことがほとんどです。

一方、Starting Strengthでは、読者が本で読んだ内容を実践することまでを想定して、実用的な知識が網羅されています。これは、著者のMark Rippetoe氏が、所有するジムの会員に対して日常的にトレーニング指導をされていることが大きいのでしょう。Starting Strengthの内容は、机上の空論ではなく、現実に使える情報になっており、そこも本書の大きな強みの一つであると言えます。

 

ここまで解説してきたような特徴を持ったStarting Strengthは、他にはない唯一無二の筋力トレーニング本です。今回、日本語訳が発売されて、Startinz Strengthに書かれている内容がより多くの方々に届くようになることに興奮しています。私がStarting Strengthを読んで筋力トレーニングについての知識や考え方を深めたのと同じように、Starting Strength日本語訳の出版が日本のトレーニング業界全体の知識や考え方のレベルアップに繋がることを期待しています。

=======序文おわり=======

 

 

まとめ

個人的には「Starting Strength」に書かれているやり方が、唯一絶対のものとは考えていません。実際に、私が現在、指導しているやり方とは異なる点もあります。

しかし、「なぜこのフォームでやるのか(=Why)」についてトコトン考えられたうえで、しっかりと説明されているのは間違いないです。

このくらいWhyをトコトン考えないといけないんだ、と知るだけでも読む価値はあります。

「Starting Strength」に書かれているのと同じくらいのレベルで自らのやり方の背景にあるWhyを説明できないのであれば、「Starting Strength」のやり方をそのまま取り入れたほうがメリットは大きいでしょう。

逆に、自分なりのやり方についてWhyをしっかりと説明できるのであれば、「Starting Strength」とは異なるやり方でトレーニングするのも全然OKです。

どちらにしろ、読んで損することは絶対にありません。

心の底からオススメできる良著です。

 

 

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【編集後記】

陸上の大迫傑選手がツイッターで陸連の私物化について問題提起されていましたね。客観的にみると、おかしいことをおかしいと指摘しているだけに見えます。当たり前のことです。時として、日本では当たり前のことをすると「面倒くさいやつだ」と反感を持たれて排除されそうになることがありますが、変ですよね。私もおかしいことはおかしいと言う派です。なので、私は大迫選手を応援します!