先日、Xにおいて以下のような投稿をしました。
アスリートから「競技中の〇〇動作が課題なんです」と言われた時に、〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせても、課題解決には繋がりません(むしろ逆効果になりかねません)。そんなんで課題が解決したら、どんなにラクなことか…
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
アスリートの立場からすると、自分が伝えた課題に対して、オーダーメードの解決策を考えてくれたように見えるので、感謝はされるのかもしれません。でも、実際には課題解決には繋がらないし、逆効果の恐れもあるので、専門家としてのプライドと責任で、そんなことやらせちゃダメです。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
アスリートから「競技中の〇〇動作が課題なんです」と言われた時に、〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせるほうがラクだし、感謝もされるから、心が弱いとそっちを選択したくなるのかもしれませんが。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
あるいは、心の弱さではなく、勉強不足のせいで、本当にそれが課題解決に繋がると信じているS&Cコーチもいるのかもしれませんが、論外です。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
このテーマについて深堀りします。
「競技中の〇〇動作が課題なんです」というアスリートの悩み
S&Cコーチとしてトレーニング指導をしていると、アスリートから「競技中の〇〇動作が課題なんです」と言われるのはよくあることです。
アスリートがそのような悩みを抱えているのは珍しいことではないですし、体力的なトレーニングによって解決できないかと考えてS&Cコーチに相談することはまったく問題ありません。
むしろ、主体性があって、とても意識の高いアスリートだと言えるでしょう。
私は個人的にはそういうタイプのアスリートは好きです。
冒頭で紹介した一連のX投稿において私が指摘しているのは、アスリートからそのような相談を受けた時の「S&Cコーチ側の対応」に問題があるケースについてです。
具体的には、「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせる」という誤った解決策を提示しているS&Cコーチが一部いる、ということです。
そのような手法のことを私は「誤った競技特異的トレーニング」と呼び、ブログ・SNS・書籍・セミナー等で批判をしてきました。
そのような手法を使っても「〇〇動作を改善する」という課題解決には繋がらないし、むしろ逆効果になるリスクのほうが高いからです。
X投稿でも述べたように、「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせる」だけで課題が解決したら、どんなにラクなことか…と思います。
極端な話、S&Cコーチという専門家なんて必要なくなってしまいます。
アスリート自身で工夫をして、〇〇動作に外的な負荷をかける方法を考え出せばいいだけですから。
そこにS&Cコーチとしての専門性は必要ありません。
むしろ、競技動作に詳しいアスリートや競技コーチのほうが、「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」を上手に考案できるかもしれません。
まあ、どれだけ上手に「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」を考案したところで、課題解決に繋がる可能性は低く、むしろ逆効果になるリスクのほうが高いのは間違いないので、オススメしているわけではありませんが。
なぜ〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせてしまうのか?
私が「誤った競技特異的トレーニング」を批判しているのは、そういうのをやらせてしまっているS&Cコーチが実際にいるからです。
いなければ、べつに批判する必要もないわけですから。
じゃあ、なぜ彼ら・彼女らは、そのような過ちを犯してしまうのでしょうか?
私が考える仮説は2つです。
- 仮説①:実際には逆効果だけど、アスリートからは感謝されやすいから
- 仮説②:専門家としての能力が低いから
仮説①:実際には逆効果だけど、アスリートからは感謝されやすいから
アスリートから「競技中の〇〇動作が課題なんです」と言われた時に、〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせるなんて短絡的だし、効果もない、むしろ逆効果だ。
とアタマではわかっていても、そっちのほうがラクチンだし、アスリートからの要望に答えている感は出せるし、感謝もされるので、ついついそっちに流されてしまう。
そんな心の弱いS&Cコーチもいるのかもしれません。
正直言って、気持ちはわからないでもないです。
でも、「せっかく相談したのに、全然〇〇動作に特化したトレーニングを教えてくれない」とアスリートから不満を持たれたり嫌われたりしたくない(自分が傷つきたくない)という理由で、効果がないOR逆効果のリスクのある「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」をやらせてしまうのは、やっぱりダメです。
たとえ嫌われる恐れがあったとしても、専門家としての責任感とプライドをもって、「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」は選択せずに、競技力向上に繋がる可能性がより高いトレーニングを提供するのが、あるべき姿ではないでしょうか?
それと同時に、アスリートにも納得してもらえるように、なぜ「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」をやらせないのか、なぜ逆効果になりかねないのか、なぜ他のトレーニングを提供するのか等について、粘り強く説明をすることも必要になるでしょう。
そのようなコミュニケーションは大変だし、面倒くさいかもしれないし、それでもアスリートが納得してくれないこともあるでしょう。
だったら、「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」をやらせてしまったほうががラクです。感謝もされやすいし。
「効果はない・むしろ逆効果になる恐れがあるけど、ラクチンだしアスリートからは感謝されやすいやり方」と「アスリートを納得させるのがなかなか難しいけど、実際には〇〇動作の改善に繋がる可能性が高いやり方」。
心が弱いと前者を選択したくなるのかもしれませんが、そこを踏みとどまるのが専門家としての責任感とプライドです。
そこを踏みとどまることができないのであれば、専門家として不向きなので、ぜひ他の業界に転職していただければと思います。
「効果があるかどうかは別として、お客様が欲しがるものを提供すること」に高い価値があるような業界はどこかにあるはずで、そっちのほうが向いているかもしれません。
仮説②:専門家としての能力が低いから
責任感やプライドの欠如、あるいは心の弱さから、ダメだとアタマではわかっていても「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」に流れてしまうのではなくて、「〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせる」のが、課題解決に繋がると心の底から信じてしまっている人もいるかもしれません。
そういう人は専門家としての能力が低いので、論外です。
もっと勉強してください。
まとめ
思ったよりも長文になってきたので、ここでまとめます。
とりあえず、以下の2点を持ち帰っていただければと思います。
- ①アスリートから「競技中の〇〇動作が課題なんです」と言われた時に、〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせても、課題解決には繋がりません(むしろ逆効果になりかねません)
- ②そういうトレーニングを提供するS&Cコーチは、アスリートの立場からすると、自分が伝えた課題に対して、オーダーメードの解決策を考えてくれたように見えるかもしれませんが、実際は専門家としての能力・責任感・プライドが欠如したダメS&Cコーチです
アスリートや競技コーチの皆さんは、この辺りを理解したうえで、S&Cコーチを正当に評価してください。
S&Cコーチの皆さんは、専門家として、より高いスタンダードを保つために、責任感やプライドを持って、勉強し続けましょう!
アスリートから「競技中の〇〇動作が課題なんです」と言われた時に、じゃあどう対応するのが正解なのかについては、次回のブログで私の考え方を解説しようと思います。
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【編集後記】
先日の節分では鬼をやりました。
まだ、自分がやっているとはバレていません。