#126 持久力を向上するには試合での動きをトレーニングでシミュレートすれば良いのか?

 

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スポーツの持久力トレーニングを計画する上で試合分析が役に立ちます。

例えば、試合のビデオ記録を分析して、平均10秒間の高強度運動と30秒間の低強度運動を交互に繰り返している事が判明したとします。そこで、トレーニングにおいても10秒間のダッシュと30秒間の軽いジョギングを交互に繰り返すインターバル走を実施すれば、競技に特異的な持久力を向上する事ができるはずです。

 

・・・って本当にそうなんでしょうか?

ニーズ分析をして、競技(試合)における運動パターンを把握して、それをトレーニングにおいてもシミュレートする。これは一見すると論理的な思考のような感じがしますが、個人的にはイマイチ納得できません。その理由を説明します。

 

 

試合での動きをシミュレートすれば良いってわけではないと思う理由

①平均値データを利用している

上記の例では、高強度運動が平均して10秒間続くという事になっています。しかし、実際にはこれよりも長く高強度運動を続ける事(例:20秒間)もあるでしょう。

同様に、高強度運動の間の低強度運動のインターバルは平均で30秒間という事になっていますが、場合によっては5秒程度の事もあるかもしれません。

平均値というのは、これらの極端なデータを隠してしまう傾向があります。平均値を利用する問題は以下の例を読めばわかるでしょう。

頭をアツアツのオーブンに突っ込んで、足を冷え冷えの冷凍庫に突っ込んだら、平均的には問題なし!!

でも実際には平均データからは見えない部分(高強度運動が長く続くプレーとか、高強度運動を短いインターバルで繰り返すプレーとかの局面)が重要だったりする事もあるわけで、そうした極端なケースに対してトレーニングで準備しておく事は大切です。

そう考えると、単純にトレーニングでも10秒ダッシュ30秒ジョギングを繰り返せば良いってわけではないでしょう。

 

②Simulate vs. Stimulate

上記の議論を受けて、それなら平均値を使うんじゃなくて、試合のデータをそのままトレーニングで使えばいいんじゃない?と思う人もいるでしょう。いわゆる試合での動きをトレーニングで完全にコピーするという感じで。

でも、それなら練習試合を繰り返していれば良いって事になるわけで、わざわざトレーニングをする必要がありません。

トレーニングでやらないといけないのは、試合をSimulate(コピー)する事ではなくて、試合で必要な体力要素(この場合はエネルギー供給機構)をStimulate(刺激)する事なんです。似ているようでも全く異なるこれらのコンセプトを理解することがとても重要です。

※ちなみにこの「Simulate vs. Stimulate」という表現は私のオリジナルではありません。Mladen Jovanovicという人のパクリです。

 

③試合だけを想定している

試合分析をするのは重要ですが、実際には試合以外の部分も考慮に入れる必要があります。

例えば、試合時間そのものは短いけどテクニックを磨くのが重要な競技では、練習時間が長時間に及ぶ可能性があります。それなのに試合時間が短いからといって持久力トレーニングでも短時間の運動に対する準備だけをやっていると、長時間の練習に耐えられずにテクニックを磨く事ができません。

また、一日に何試合もこなす必要がある競技(特に試合間のインターバルが短い事のある場合)では、1試合の分析をしてそれだけに備えてトレーニングをするのでは不十分です。場合によっては2試合連続でやる事もあると想定をして、トレーニングをする必要があるでしょう。

 

 

まとめ

試合を分析してそれをトレーニングでシミュレートすれば良いってわけではないという私の個人的な意見を紹介しました。私はレジスタンストレーニングにおいても、競技の動きをシミュレートする(つまり競技動作そのものに外的負荷をかける)事に対して否定的ですが、持久力トレーニングに対しても同様の考え方を持っています。

シミュレートすると必ず失敗すると言っているわけではなく、場合によってはシミュレートがうまくいく事もあるでしょう。でもトレーニングに対する基本的な考え方として、シミュレートすれば特異的なトレーニングができて競技力向上に直結するという考え方は危険だと思います。

 

 

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