#166 S&Cプログラムの目的あるいは効果について、考え直してみる

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S&Cプログラムの目的あるいは効果について、よく耳にするのは

  • 傷害予防
  • パフォーマンス向上

の2つです。

私が大学に入学してS&Cについて勉強を始めた時にはそう教わりましたし、今でもNSCA等はそのように啓蒙しているはずです。

 

私も若い頃は、「傷害予防なんて消極的なこと言ってないで、パフォーマンス向上をもっと前面に押し出していこ〜ぜ!」「ガシガシとトレーニングやって筋力やパワーを向上すれば競技パフォーマンスも向上させられるぜ〜!」みたいに考えていて、S&C全能感とでも言うような気持ちがどこかにありました。

しかし、色々と勉強をして経験も積んだ今となっては、S&Cが必ずしも「傷害予防」と「パフォーマンス向上」を達成できるとは限らないと考えるようになりました。

むしろ、「達成できるって言いきっちゃうのは誇大広告じゃないか」とさえ思うようになりました。

今日はその理由を説明します。

 

 

S&Cプログラムは傷害を予防できない!

少し刺激的な言い方かもしれませんが、実際に「S&Cプログラムは傷害を(完全には)予防できない」と思います。

どれだけS&Cプログラムをガシガシやって体力を向上させても、ケガをする時はするものです。

完全に防ぐことなんて不可能です。

これはしょうがないです。

諦めるしかないです。

だからS&Cプログラムの効果は「傷害予防」だと言い切っている人を見ると、ちょっと言い過ぎなんじゃないの〜と思ってしまいます。

 

とはいえ、傷害を完全に予防することは不可能ですが、S&Cプログラムを実施して傷害リスクを低減させることは可能です。

だから、今後はS&Cプログラムの効果は「傷害リスク低減」であると宣伝するほうが良いと考えています。

2017/12/12追記:その後、「傷害リスク低減」という言い方よりも「ケガをしづらい身体をつくる」という表現を使うようになりました

» 参考:S&Cコーチの役割のひとつを「傷害リスクの低減」ではなく「ケガをしづらい身体をつくる」って言ったほうが納得させられるかも

 

 

S&Cプログラムはパフォーマンスを向上できない(直接は)!

これも刺激的な物の言い方です。

しかし、色々なアスリートを指導してきて感じることは、S&Cプログラムを実施して体力が向上したからといって、それが必ずしも競技成績の向上に結びつくとは限らないということです。

まー、単純に私のS&C指導がダメダメで効果がないからという可能性もありますが、自分ではそんな事はないと信じています。

 

トレーニングで向上した体力を実際の競技の中でうまく使いこなせるような技術や戦術を身につけて初めて、パフォーマンス向上につながります。

だから、S&Cプログラムはパフォーマンスを直接向上するのではなく、パフォーマンスのポテンシャルを向上するんだと考えるのが妥当ですし、そっちのほうがよっぽど健全な考え方です。

 

世の中の責任感の強いS&Cコーチの中には、S&Cプログラムが直接パフォーマンス向上に結びつくべきだという強迫観念をお持ちの方もいます。

そういう方が、スクワットやデッドリフト等のベーシックなエクササイズをアスリートにやってもらって体力を向上させてもパフォーマンス向上に結びつかないという経験をすると、じゃあもっと競技特異的なエクササイズやらファンクショナルなエクササイズをして、直接的にパフォーマンス向上につながるトレーニングをしようと路線変更をする場合もあるようです。

 

でもそんな路線変更がパフォーマンス向上に結びつくとはとても思えません。

だって、問題なのは「向上した体力を実際の競技の中でうまく使いこなせていない」ことなのであって、体力向上の方法そのものではないんですから。

逆に、変に競技特異的とかファンクショナルといった路線に走ってしまうと、体力向上の方法そのもの自体が問題となってしまい、パフォーマンス向上という目標からさらに離れてしまう恐れがあります。

 

もちろん、指導対象のアスリートの成績がなかなか上がらない場合は、自分のS&C指導に何か問題はないか、あるいはもっとS&C指導の質を向上させられるのではないか、と自問自答を続けることは大切です。

なんでもかんでも「向上した体力を実際の競技の中でうまく使いこなせていない」せいにしていては、アスリートからの信頼も得られないし、S&Cコーチとして無責任ですし、S&Cコーチとしての成長も望めません。

でも、S&Cプログラム(あるいはS&Cコーチ)は全能なんだという強迫観念は捨てて、S&Cプログラムはパフォーマンスを直接向上するのではなく、パフォーマンスのポテンシャルを向上するんだという、ある意味割り切った感覚を持つことで、ダークサイドに落ちてしまうのを防ぐことはできるはずです。

 

 

まとめ

S&Cプログラムの効果をアスリートやコーチに説明したり宣伝したりする場合は、「傷害予防」と「パフォーマンス向上」を売りにするほうがわかりやすいし、彼らのハートをキャッチしやすいのかもしれません。

しかし、私は「たとえ自分にとって不利益になったとしても、正確な情報を正直に相手に伝えたい」という性格の持ち主なので、今後そのような宣伝をすることはないでしょう。

たとえ、それが短期的に自分の不利益に繋がったとしても、長期的には正直者が得をすると信じています。

 

私自身、例えば洋服を買いにお店に行った時に、何でもかんでも「お似合いです〜!」と褒めてくれる店員さんよりも、似合っていない時は正直にそう言ってくれる店員さんのほうが信頼できると感じます。

前者のような店員さんとはその場限りの付き合いになることが多く、逆に後者のような店員さんのいるお店には長年通うようになって、長期的に見ると後者のお店で使うお金のほうがはるかに多くなるものです(似合っていない時に正直に言うのも1つの戦略なのかもしれませんが・・・)。

 

だから私もS&Cコーチとして、正確な情報を正直に淡々とアスリートやコーチに伝え続けようと思います。

それを信頼してくれる人達を相手にしていればハッピーになれますし、「腰をクネクネしてればパフォーマンスが上がる」的なキャッチーなコピーに飛びつくような人達は、どうぞそっちに行って下さいという感じです。

 

 

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【編集後記】

このブログを始めて2年ほどになります。特に下心もなく細々と続けてきましたが、読んでくれる人は読んでくれているもので、これまでの積み重ねを評価して頂くこともたまにあります。やはり人に認めてもらいたいというのは人間の根本的な欲求のようで、お褒めいただくと非常にうれしく、モチベーションも上がります。実際にその中の何人かの方から声をかけて頂き、いくつかのプロジェクトが進行中です。具体的に動き出したらこちらのブログでもお知らせする予定なので、お楽しみに!!