#194 測定の信頼性(再現性)について

公開日: : 最終更新日:2017/02/18 測定・スクリーン・テクノロジー


 

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月間トレーニング・ジャーナルで甲谷さんと連載をしています。毎回いろいろなトピックについて書いていて、今は体力測定について原稿を書いているところです。

体力測定の項目を選んだり、測定データを解釈したりするうえで、「測定の信頼性(再現性)」という概念について知っておくことは重要です。研究者としての立場から考えると、一言で信頼性と言っても色々な指標があるのですが、S&Cコーチとしての立場から考えると、「測定の標準誤差(typical error of measurement)」が最も大切な指標になるかと思います。

今日のブログでは、とあるプロジェクト向けに書いた文章から、測定の信頼性について書いた部分を抜粋・編集して紹介します。

 

 

=====ここから抜粋=====

「信頼性」とは?

体力測定における重要な概念の一つに「信頼性」がある。信頼性とは、同一の測定を繰り返した時に同じような結果が得られるかどうかを示す概念または指標である。

一般的に、同一の測定を複数回繰り返すと全く同じ値が得られることは少なく、誤差がつきまとうのが普通である。一定のトレーニング期間の前後に体力測定を実施してその結果を解釈する際には、この誤差を考慮に入れる必要がある。

例えば、垂直跳びパワーの値が一定のトレーニング期間の前後で20W増加したとしても、その垂直跳びパワー測定に伴う標準的な誤差の範囲が±50Wだとしたら、この20Wの変化量が真の変化(トレーニング効果による変化)なのか、単なる誤差なのか判断できない。

そこで、体力測定の結果(トレーニング前後の差)を解釈するシンプルな方法の1つとして「実際の変化量≧誤差の範囲」の場合のみに、真の変化があったと解釈する方法がある。逆に「実際の変化量<誤差の範囲」の場合は、トレーニング効果について「不確か(unclear)」という解釈をする事になる。

他にもより厳密あるいは複雑な方法が存在するが、どの解釈方法を採用するにしても、各体力測定に伴う誤差の範囲を調べて把握しておく事が重要である。

 

 

測定誤差を推定する方法

体力測定に伴う誤差の範囲を推定する方法としては、同一の測定を同一の被験者に対して2回以上実施する再テスト法(test-retest method)がある。

この再テスト法により得られたデータから導き出す事が可能な信頼性に関する統計学的指標としては、平均値の変化量(change in mean)、級内相関係数(ICC; intra-class correlation)、測定の標準誤差(TE; typical error of measurement)、変動係数(CV; coefficient of variation)等がある。

この中でも特に、体力測定によりトレーニング結果を解釈する際に重要となる信頼性の指標は「測定の標準誤差」であり、再テスト法における測定値の差の標準偏差を√2で割って計算する事ができる。

 

 

誤差を考慮に入れて測定結果を解釈する

測定結果を解釈する上で、測定の標準誤差をどのように使うかをわかりやすくするため例を挙げると、例えば、ジャンプ&リーチテストにおける測定の標準誤差が1.8 cmであったと仮定する。ジャンプ&リーチテストに使用する測定器具(ヤードスティック)の目盛りが1 cm間隔である事から、トレーニング前後の測定結果において2 cm以上の差があった場合に、実際に変化があったと解釈する事が可能である(※)。

  • ジャンプ高の測定値が2 cm以上向上した → 「ジャンプ高が実際に向上した」
  • ジャンプ高の測定値の変化が2 cm未満  → 「変化なし(または不確か)」
  • ジャンプ高の測定値が2 cm以上減少した → 「ジャンプ高が実際に減少した」

※実際には、測定の標準誤差を2倍した値を使う場合(1.8×2 = 3.6 cmつまり4 cm以上の変化があった場合に実際に変化があったと解釈する)や測定の標準誤差を1.96×√2倍した値を使う場合(1.8×1.96×√2 ≒ 4.99つまり5 cm以上の変化があった場合に実際に変化があったと解釈する)もあるが、これらはトップアスリートの体力変化をモニターするという目的にとっては厳しすぎて実用的とは言いがたい。

 

=====抜粋終わり=====

 

 

まとめ

今回は測定の信頼性という概念を紹介しました。これまでそのような概念を知らずに体力測定の結果を解釈していた方は、少し意識してみてください。

さらに詳しく知りたい方は、以下で紹介する情報を読んで勉強してみてください。

月間トレーニング・ジャーナル向けに現在書いている原稿でも測定の信頼性について軽く触れる予定ですが、紙面の都合上、それほど詳しく書くことができないので、ブログで少しだけ詳しく紹介してみました。

 

 

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【編集後記】

最近は腰の具合も良く、フロントスクワットができるまで回復してきました。無理せず、少しずつ重量を上げていこうと思います。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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