#205 「Nutrient Timing」コンセプト再考:科学的知見やらエビデンスやらの活用方法についても少し考えてみた

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アメリカ留学時(2002~2004年)の恩師 Dr. Greg Haffの研究テーマの1つが「レジスタンストレーニング中の糖質補給」でした。

その影響もあり、レジスタンストレーニング効果に対する糖質やたんぱく質摂取の影響についての研究に興味を持ち、関連論文を読むようになりました。

 

 

Nutrient Timingとは?

ちょうどその頃 Nutrient Timing というコンセプトが流行りだして、レジスタンストレーニング直後に糖質とたんぱく質を同時に摂取するのが筋たんぱく質合成(や筋グリコーゲン量の回復)には1番効果がある、といった研究結果が報告され始めました。

トレーニング後、栄養補給が数時間遅れただけでも筋たんぱく質合成効果が低下してしまうため、「トレーニング直後」という摂取タイミングが大切なんだということでした。

また、この分野の第一人者である研究者のDr. Ivyが、その名もズバリ「Nutrient Timing」という本を出版し、関連論文をまとめたうえで、糖質やたんぱく質(あるいはアミノ酸)の摂取タイミングの重要性を世の中に広めました。

そのコンセプトを簡単にまとめると「トレーニング後45分以内に糖質とたんぱく質(あるいはアミノ酸)を摂取しなさいよ」ということです。

自分もその頃「Nutrient Timing」を読んで、科学的データを背景にした論理的な議論展開に感銘を受けて、それからは自分でトレーニングをした直後には必ずプロテインサプリメントを飲むようになりました。

 

 

Nutrient Timingは絶対的に正しいコンセプト?

しかし、最近になって(昨年だから最近って言うほど最近じゃないかも)Brad Schoenfeld氏のブログで Nutrient Timing のコンセプト、特に「トレーニング後45分以内が糖質とたんぱく質摂取のゴールデンタイムだ!」という考え方について反論している記事を読みました。

また、そちらのブログ記事の情報ネタとなっているレビュー論文「Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window?」も読んでみました(リンク先から無料でPDFファイルをダウンロードできます)。

論調としては、栄養補給のタイミングの重要性そのものを否定しているわけではなく、「トレーニング直後45分以内という狭い時間帯にこだわる必要はないんじゃないか?」といった議論を、過去の研究論文をレビューしながら論理的に展開している感じです。

言われてみると確かにそうだよな〜と思う内容でした。

レビューされた論文の1つ1つはしっかりと研究されているものであり、そこに対しての批判はありませんが、それらのデータをもとに「トレーニング後45分以内に糖質とたんぱく質を摂取しなさいよ」というメッセージに繋げる段階で、論理の飛躍があるのかもしれないなと感じました。

改めて思い出してみると、トレーニング直後よりもトレーニング直前に栄養を摂取したほうが筋たんぱく質合成効果が高かったという論文を読んだことがあり(コチラ)、「Nutrient Timing」の本を読んだ時に、「あれ?トレーニング直前の栄養摂取のほうが筋たんぱく質合成に効果的だと指摘する研究もあったはずだけど、そのデータは無視されてるのかな〜」と違和感を感じた記憶がありました。

私が「違和感がある」で済ましてしまっていたところを、Brad Schoenfeldともう1人の論文著者のAlan Aragonは過去の研究を綿密に検証したうえでレビュー論文という形にして、Nutrient Timing のコンセプトに対して一石を投じてくれたのかなと思います。まだまだ自分も甘いな〜と痛感しました。

 

 

じゃあトレーニング直後に糖質&たんぱく質を補給するのは無駄なのか?

しかし、Brad Schoenfeld氏のブログと「Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window?」を読んで、トレーニング直後45分以内に栄養補給をする必要性は低いと認識した今となっても、自分でトレーニングした直後にプロテインサプリメントを飲む習慣は変えていません。

理由は2つあります:

  • Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window?」は、トレーニング直後45分以内という狭い時間帯にこだわる必要がないと結論づけているだけで、トレーニング直後にプロテインを飲んではいけないと言っているわけではない
  • 「トレーニング直後に美味しいプロテインを飲む」というご褒美を自分に与えることによって、キツいトレーニングでもがんばれるという心理的効果がある

 

 

まとめ

これは見方を変えて考えてみると、科学的知見やらエビデンスと呼ばれる客観的なデータに基づいたうえで、最終的にどのような行動を取るのが適切なのかの選択には幅があるので、自分の置かれた状況や個人的な嗜好に応じて決定すれば良いということなんだと思います。

ちなみに私のお気に入りのプロテインサプリメントは、バルクスポーツのビッグホエイのティラミス味ストロベリーショートケーキ味です。ウマいです!オススメです! ちなみに、次はアーモンドチョコレート味を狙っています。

 

 

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【編集後記】

Dr. Greg Haffが先日ラスベガスで開催されたNSCAカンファレンスにおいて、NSCAのpresident(理事長?)に選出されました!教え子の一人として非常に誇らしく思います。自分が指導を受けていた頃はまだ駆け出しの若手研究者といった感じでしたが、非常に情熱があり、学生想いで、現場と研究の両方を知る尊敬できる人物でした。そんな人がNSCAの理事長になるまで出世(?)するなんて想像もできませんでしたが、今となって振り返ってみると、なるべくしてなったのかな〜とも思います。

日本を離れてアメリカやオーストラリアに留学したメリットの1つは、このように世界的にもトップクラスの研究者と交流し、彼らがどのような人物でどのような行動をしているかを身近で観察できたことです。もし海外留学を考えている読者の方がいたら、オススメしますよ!もちろん、日本を離れることで、国内でのコネがなくなるというデメリットもあるかもしれませんが、私の場合はコネがないからこそ誰に対しても変な気遣いをせずに自由な発言をすることができる、とポジティブに捉えています(笑)